2025年07月02日11時20分 / 提供:ニュースラウンジ
建築家・隈研吾⽒
不動産売買・賃貸管理・土地開発・ホテル事業など、多角的な事業を展開する総合不動産会社の『東通グループ(TOTSU GROUP)』が6⽉2⽇東京・虎ノ門ヒルズ内TOKYO NODE HALLで東通グループ事業戦略発表会「TOTSU NEXT VISION」を開催した。
(取材・撮影:伊藤直樹©ニュースラウンジ)
今回、東通グループは、2019年に東通不動産投資株式会社、2020年に東通建物株式会社、東通コミュニティ株式会社、LOF Hotel Management株式会社を相次いで設立。「信じる未来、託す東通グループ 街の魅力を高める革新的なパートナー」のコーポレートスローガンに街づくりの最前線を⾛り続けている。
第一部では、東通グループでは、2030年に運⽤資産規模3,000億円の達成を⽬標に掲げ、2025年より始動するプロジェクト「不動産をもっと⾃由に⼤作戦」の発表をおこなった。第二部では、モデレーター(司会進行役)として、様々な分野でクリエティブディレクターとして活躍する辻愛沙⼦⽒(「社会課題をクリエイティブで解決する」を掲げ、広告などのさまざまなクリエイティブやプロジェクトを通し、ジェンダーや⼥性のエンパワメントをテーマに活動を展開している。報道番組のコメンテーターとしての出演歴もあり。)に依頼、
建築家・隈研吾⽒、東通グループ 代表取締役 共同代表者 桜⽊翔、東通グループ 執⾏役員 桜井吉男を交えて「不動産をもっと⾃由に⼤作戦〜不動産業界の未来について〜」をテーマにトークセッションを行った。
辻愛沙⼦氏(以下、辻氏):「不動産をもっと⾃由に⼤作戦〜不動産業界の未来について〜」というようなお話を皆さんと一緒にさせていただければと思います。先ほど白金台2丁目プロジェクトのお話もありましたので、早速、隈先生にお伺いしていきたいと思います。こちらを手掛けるにあたって、陸と海を繋ぐというキーワードがありましたけれども、このエリアに対しての思いでしたり、あるいは居住空間とかライフスタイル、このエリアの中でどういうふうに皆さんに過ごしていただきたいですとか、そういった思いがあれば、ぜひ具体的にお伺いできればと思います。
※第一部で、東通グループは、東京の一等地で上質な暮らし、賃貸でも上質な暮らしを求めるユーザー向けに「TOTSU PREMIUMシリーズ」を設定。第1弾として、白金台2丁目を考えており、その物件に関して、デザイン監修をお願いしているのが建築家の隈研吾氏。隈氏は「高輪ゲートウェイからずっと(地図上で南西方向に線を)持ってくると白金台になります。高輪ゲートウェイは駅(のデザイン)をやってるだけじゃなくて、実は街全体をJRさんと一緒に、どんな感じにしようかと、10年以上やってるんですよ。海と陸をどう繋ぐかっていうのがあの場所のテーマで、この白金の辺りから海に降りてって、陸と海を繋ぐ非常に東京の重要な陸線」であるという話があった。
(詳しくは東通グループ、NEXT VISION「不動産をもっと⾃由に⼤作戦」を発表!建築家・隈研吾⽒も加わる白金台プロジェクトとは…を参照)
隈研吾氏(以下、隈氏):さっき、陸と海を繋ぐって話しをしたんですけど、あそこの白金台2丁目からずっと(高輪ゲートウェイ駅を下り、)海に降りていくとね、実は海じゃなくて、もっとすごいものが手前にある。鉄道です、日本の鉄道網に繋がるわけですよ。ゲートウェイ駅っていうのは、実は品川駅と600メーターしか離れていない。そこは全部遊歩道で繋がるんですね。品川駅に繋がるってことは、新幹線につながって、リニアに繋がって、名古屋に繋がって、大阪に繋がって、要するに日本の1番の幹線に歩いて繋がるぐらいのとこにあるっていう、すごい特別な場所なんです。それはもちろん航空網にも繋がって、世界に繋がってるわけで。あの場所はですね、僕らが昔、高輪という上品な高級住宅地ってイメージを超えた場所に今なりつつあるなんですよ。それがね、自分で駅のデザインの線を引きながら、これ全然違う場所になるなと思ってて。
辻氏:白金髪台2丁目プロジェクトの中で。具体的に、こういうデザインにこだわっていきたいなとか、今デザインのイメージもあるところだと思うんですけど、何かこだわりなどあったりされますでしょうか。
建築家・隈研吾⽒
隈氏:あの場所は、利便性があると同時に高級住宅地。どうしてあそこの丘の上が高級住宅地になってるかっていうと、大名の屋敷があった。目の前にある明治学院大学の建物は、信州松本藩松平家の下屋敷があったところ。そのあたりの隣にも地面に石垣がずっと並んでいて、すごく印象的なんですね。石垣の住宅地って東京にそんなたくさんはなくてね、その石垣のイメージ、今回の建物(白金髪台2丁目プロジェクトで建築される建物)もその石垣を踏襲して、僕ら基壇部っていうんだけど、建物の基壇部に石垣があって、その石垣の裂目から入っていくと、上に緑の庭があって、それを見ながら上に登ってくっていう。石垣、緑、それから空っていうのが、全部感じられるようなデザインになってるので、その辺をぜひ楽しみにしてほしい。
辻氏:都心でその3つ(石垣、緑、空)を感じられるってなかなかないですし、ちょっと夢が広がるなと思います。そして、先ほどご説明いただいたプロジェクトのお話に少し戻っていけたらと思いますけれども、今回、「不動産をもっと自由に大作戦」。まだまだ、先ほど発表されたものも含め、あるいはそれ以外も含め、色々ありそうというお話を伺ったんですけれども、言えるところまででいいので、少しだけ教えていただけますでしょうか。桜井さん、お願いします。
桜井吉男氏(以下、桜井氏):もちろん、色々と温めているものはありますが、お話できる内容と開示できない内容というのはあります。その中で1つお伝えできるところとしましては、弊社東通グループとしましては、キーワードに「革新性」というのを軸に置いておりますので、そういった意味で言うと、近い将来、東通テクノロジーというような会社の設立も視野に入れております。また、趣味や職業に特化したような、防音付きの配信者専用の住宅も、もしかしたら展開があるかもしれません。
辻氏:将来、皆さんがYouTubeとかでご覧になられる方の家になるかもしれないと、考えるとワクワクしますね。ここから皆さんに不動産業界の未来について少しお話をお伺いしていきたいと思います。未来と言っても、数年後から半世紀後、100年後、200年後まで、いろんな時間軸がありますけれども、たった数年でも、私たちの生活を振り返りますと、コロナがあったり、リモートワークがあったりで、数年間で私たちのライフスタイルってガラッと変わるんだなというのを皆さんお感じになられているかと思います。まずは近未来というところで、例えば10年後ぐらいの世界でどんな不動産業界、どんな建築物が社会に増えていくのかというようなお話をお伺いしていきたいんです。まずは隈先生、世界中で様々なプロジェクトやられておりますけれども、日本の不動産についての未来、10年後ぐらいのイメージでまずはどんなこと考えてらっしゃるか伺えますでしょうか。
隈氏:まずですね、このコロナ明けの今、すごく大きな時代の変わり目だと思うんですよ。建築のデザインでも環境、サステナビリティって皆さん聞いたことあると思いますけど、持続可能性みたいなもので、地球温暖化に建築はどういう風に貢献できるか。そういう環境がテーマになったのは、やっぱりコロナ明けのすごくはっきりした現象なんでしょうね。みんなコロナの時に、もうこのままの住まいじゃ、このままの都市では、人間っていうのが、精神的にも肉体的にもかなり限界だっていうことを感じ始めて、その後に、どっちの方向行くかっていう時に「環境」に世界が向いてる。それは日本だけじゃなくて、むしろ日本はね、ちょっとスロースターターなんですよね、環境に対して言うと。ヨーロッパ、アメリカ(特に西海岸)のみならず中国でもすごく環境に対して厳しい。僕らが中国でかなりたくさん設計してるけど、日本の法律より環境に対して厳しい。例えば窓をあまり大きなガラス張りにするとそこから省エネにならないから、ガラスの大きさとかガラスの種類の制限とかものすごく厳しい。それから、その雨水の透水性、地面は必ず透水して雨水を下に流していかなきゃいけないのも日本よりずっと厳しい。日本人は意外に、日本は元々緑が多いみたいに思ってるけど、もはやスロースターター。遅れてるぐらいで、これからそっちの方向にどうやって日本が舵を切っていくかっていう。この10年はですね、まず環境、緑、これが非常に大きなテーマになる。
木に対してもいろんな技術的な蓄積が出てきて、木を使うことが地球温暖化対策になる。これは木の中に二酸化炭素を閉じ込めることができるから、それが世界の新しい1つのスタンダードになって、そっちの方向に、建築の法律とか全部今変わりつつあるんですね。そういうすごく大きな転換期で、それが、この10年後っていうのは、形にはっきりなってくる。その10年後をまず目指してデザインをしていかなきゃいけない。それは同時に、この10年はコロナで、要するにリモートワークって新しい働き方が出てきたじゃないですか。今までは働くのはオフィスで、住むところはマンションで、そういう、2分法があったんだけど、そうじゃない空間、第3の空間っていうのがコロナで本当に突然に実現化したわけですよね。それに対して対応できるような集合マンション、アパートあるかっていうと、今までのものはね、そういうものに対する意識はほとんどなかったんですね。オフィスで働く人がそこから通うっていう認識だったんだけど、このコロナで新しくできたリモートワークに対応するようなデザインとか、それは単に間取りがそうだっていうんじゃなくて、雰囲気がね、やっぱり働くっていうことと住むってことは混じってくるから、その混じった感じにあったようなデザインっていうのが求められるので、そういうものにもう急激に変わってくると思いますね。
辻氏:環境というキーワードとリモートワークというお話がありましたけれども、特にリモートワークから言いますと、働きやすい居住空間、仕事しやすい居住空間ってどうなんだろうってことに加えて、皆さん、家でパソコン使ってオンラインでどこからでも仕事ができるような時代になっておりますけれども、そういったテクノロジーが引き起こす変化って、ここから先、暮らしにもかなり影響があるのかなと思いますけれども、桜井さん、この辺りどのようにお考えでしょうか。不動産テクノロジーが引き起こす未来の変革について。
東通グループ執⾏役員桜井吉男
桜井氏:まず1つ確実に言えることとしましては、不動産取引において、物件の売買や賃貸、その中でも賃貸ですね、例えばSNSとかプロップテック(=不動産(Property)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた造語で、不動産業界におけるデジタル変革のこと)によりかなりこれも身近なものになってくるんではないかと思いますし、先ほど私がプレゼンした中でも、これがあながち10年後じゃないかもしれないし、5年後あるいは3年後に起きるようなこともね、可能性としてはいっぱいあるかと思います。ちょっと言葉が悪いですけども、不動産業界ってデジタル化に乗り遅れてる、乗り切れていない気がするんですよね。そういう意味で言うと、10年後はもう間違いなく全自動の世界になっていることでしょうね。
辻氏:なるほど。今、隈さん頷いてらっしゃいましたけど。先生の中でも、テクノロジーの領域、先ほど10年後という話がありましたけれども、大きく未来をこう見据えて、半世紀後、50年後、テクノロジーと暮らし、あるいはお仕事の中でもこう感じる、こんな働き方、こんな仕事の仕方になってるんじゃないかみたいなイメージっていかがですか。
隈氏:50年後だとね、実は日本の人口がほぼ半分になるって言われてる。中国は13億人今いるんだけど、それが8億人、半分近くになるってね。これはとんでもない。この次の50年ですごいことになるわけですよ。前の50年、1975年っていうと、日本の人口は今とほとんど変わんないのね、だから、50年間ほとんどこう来たのが突然半分になる。この50年の変化はね、ほんとに僕らが想像を超える新しい変化が出てくると思う。その時に生き残れるその住まいは何かっていう。それを目指したデザインをしていかないと、今作ってるマンションは普通に50年ぐらい持つわけですよ。それを、やっぱり50年後を目指してターゲットにしてデザインしていかなきゃいけないなっていうのが僕らの新しい使命だと思います。
辻氏:なるほど。生活する人側も、社会全体もそうですし、今AIが出てきただけでも働き方、暮らし方も変わってますけれども、例えば家事を人がやらなくなる世界、こう一見テクノロジーって暮らしみたいなものとか人間らしさの対極にあると思われがちですけれども、テクノロジーが発達していくことで、私たちはどんなふうに過ごしていきたいんだろうかとか、暮らしていきたいんだろうかとか、人間らしさみたいなところに実は踏み切っていったりすることもあるのかなとお話伺っていて思いましたけれども。例えば、ちょっとSFみたいな話なんですけど、平均寿命なんかも、もしかしたら、人口は減りますけど、のびたりすることがあるかもしれないと思いますけれども、そんな未来の私たちの暮らしの中で、どんな居住空間、先生はイメージされてらっしゃいますか。
隈氏:まずね、これだけ人口が減ってきた時に、何が贅沢かっていう“贅沢の定義”も変わってくると思うんですよ。その時にどういうふうに自然が感じられるかみたいなね、自然との付き合い方が変わってくる。日本の陸地の広さは変わらないが、その時に僕ら人間が半分になるわけだから、自然をうまくこう自分の近くに持ってこれる人も出てくる。その自分の近くに持っていき方をどうするか。それは、その住まいの中に持ってくることもあるし、あるいは、自然と都市を回遊しながら生活するみたいな時代も出てくる。そういうものに、基本的には人間が自然に回帰する。それはね、人工造の時代ってのは、どんどん、どんどん自然から遠ざかるっていう時代だったんだけど、この自然に回帰するっていう時代にどういうデザインが必要かっていうのを真剣に考えなきゃいけない時代なる。
辻氏:なるほど。テクノロジーとセットになるのがすごく面白いなと思いましたけれども。では桜木代表、50年後、不動産や建築の分野でどのように変化をイメージされてらっしゃいますか。
東通グループ代表取締役共同代表者桜⽊翔
桜木氏:50年後。まず、今より50年前とこれからの50年では時間を進め方が違うと思うんですよ。同じ期間ですけれども、これからの50年って、おそらく科学の技術の進歩のスピード感ってものすごく早い。何倍も何十倍も進んでいくと思うんです。容易に想像はできないんですけれども、こういった世界であってほしいなっていうのは個人的に思うところがあります。例えばね、今、空飛ぶ車をいろんなところがチャレンジしているんですけれども、空飛ぶ車があるように、空飛ぶ不動産があってもおかしくないですよね。固定の住所はなく、自由に移動できる、レゴみたいに組み立てをできる、そんな面白い未来っていうのは、僕は非常に楽しみだと思います。僕ら自身がそういった可能性を持ってチャレンジし続けることが大事だと思います。ちょっと脱線するんですけれどもね、僕が小学校のアルバムで書いた夢が2つあってですね、1つはありきたりのプロ野球選手になることと、もう1つは火星に住むこと。僕がちょうど小学校の頃は、20数年前にすでに人類は火星に移住することも可能であるお話があってですね、これってすごいロマンですよね。こう、地球じゃなくて宇宙に飛び越えて違う惑星に住むってことなんですよ。僕はね、生きてるうちに引っ越せることを信じてますわ。
辻氏:わくわくしますね。最後に、それぞれから、このプロジェクトの思い、あるいは不動産業界の未来について一言ずつコメントいただけますでしょうか。では、まず隈先生からお願いいたします。
隈氏:日本の不動産ってね、ある意味で保守的だったんですね。それは変化しないでも売れたから。日本の国っていうのは、国土が限られてるから、値段は自動的に上がってくる。バブル後の時に一時期下がったけれども、その後は基本的に不動産は売れる。こういう風に、こういうところに贅沢してお金かけていけば売れるっていうことで進んできたんだけど、もうこれからは絶対変わらないといけない。それは今の人口を見ても、50年間ほとんど同じだったのが、50年後に半分になる。テクノロジーのスピードも半端なく変わる時に、日本の不動産は、すごく大変換期が来ると僕は思っている。それに対応したものを、ちゃんと僕らデザイナーも考えなきゃいけないし、やっぱりビジネスのサイドでも皆さんどんどん企画して、そういうの考えていただきたいなと思ってるので、今回がそういう変換の1つのきっかけになればと思います。
桜木氏:テーマが「不動産業界の未来について」っていう大変厚かましいんですけれども、これはきっと僕らの1つの使命なんじゃないかと思うんですよ。こういった業界で働いてる、ビジネスだけれども、この自分のいるこの業界の何かを変えていくっていう意識。ずっと僕らの世代が意識を持ってチャレンジすることできっと変わっていく。描くそのビジョンっていうのは、きっとそこで現実になる。そんな思いで見てます。
桜井氏:私から皆さんにお伝えできることとしましては、1つ、先ほど桜木の方からもお話があった空飛ぶ家とかですよね。これ、一見聞いた感じですと、ちょっとなんか胡散臭いなと皆さん感じられるかもしれませんが、人間っていうのは、見えないものに対して恐怖を感じたり、触れないものに対して胡散臭いという思いを抱く。ただ、誰かがそこに対して着手してやっていかなければ、新しいものっていうのは生まれないかなと感じておりますので、繰り返しにはなりますけども、そういう意味で、我々東通グループとしましては、今後引き続き革新の部分を進めてまいりたいと思います。
東通グループ事業戦略発表会「TOTSU NEXT VISION」に出席した(左から)株式会社arca CEO / Creative Director 辻愛沙⼦⽒、東通グループ執⾏役員桜井吉男氏、東通グループ代表取締役共同代表者鄭建東(チャンキントン)氏、建築家隈研吾⽒、東通グループ代表取締役共同代表者桜⽊翔、株式会社ケン・コーポレーション常務執⾏役員⾼⼭⼀頼⽒
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株式会社arca CEO / Creative Director 辻愛沙⼦⽒
東通グループ代表取締役共同代表者桜⽊翔
東通グループ執⾏役員桜井吉男