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39歳現役ママ・新潟県津南町の桑原町長にインタビュー! 魅力ある子育て環境づくりとその課題【細川珠生のここなら分かる政治のコト Vol.33】

2025年08月14日11時00分 / 提供:ウーマンエキサイト

新潟県津南町。米どころで、水田に稲の緑が美しい地域ながら、人口約8,300人、高齢化率45%という、高齢・過疎化という地方共通の課題を抱える町でもあります。ここで生まれ育ち、現在39歳で町長8年目を迎える桑原悠町長は、「教育や産業など、しっかりとしたまちづくりを行い、人が集まってこそ、子育てもしやすい環境ができる」と、町の未来を担う次世代育成を、町全体の将来構想の中で描いています。その中で、町に点在する5つの保育園を一つに統合する構想は、単なる再編ではありません。桑原町長が見据えるのは「保育の質の向上」と「子ども一人ひとりに目の届く支援」。3回にわたってお届けする桑原町長のインタビュー。まずは、子育て支援についてお聞きしました。

お話を聞いたのは…
新潟県津南町 桑原悠町長
1986年8月4日生まれ。新潟県津南町出身。2009年 早稲田大学社会科学部卒業 (2007年から1年間、米国オレゴン大学に単位交換留学)。2009年 東京大学公共政策大学院入学、2012年 東京大学公共政策大学院修了(公共政策学修士)。2011年、長野県北部地震を機に、津南町議会議員選挙に出馬し、25歳にして初当選。2018年に津南町長選挙に出馬 し、31歳で第6代津南町長に就任。
>>新潟県津南町 桑原悠町長 公式ページ

―「教育や産業、まちづくりの施策」の先にある「子育て支援」とのことですが、保育園の統合は、どのようなお考えからでしょうか。
桑原町長:保育の質の向上と、子育て支援のセンター機能をもたせるために、統合して一定の規模を持った保育園を置く必要があると考えてきました。

―保育園は、職住の中で身近にあることが、保護者からすると大事な点になりますが、それでも統合しようと思ったのは、なぜですか。
桑原町長:一園あたり、同年齢の子どもが2人とか3人というところもあり、保育士の数も限られる中、混合保育を行っているところもあります。異年齢保育の意義はありますが、やはり発達段階に合わせた、きめ細かい保育が重要だと思っています。

―保育園は全て町営ですか。
桑原町長:はい、保育園については町直営です。この良さは発達段階において、早期に個々の子どもの特性を把握して、気になるお子さんもいらっしゃいますので、個別に支援が必要な子どもについては、町教育委員会にいる専門家である臨床心理士や、訪問相談員と保育現場、その先の小学校現場も連携して、その子どもに合わせたサポート体制をとりながら、小学校入学まで持っていけるということです。現場同士の心理的な距離が近くて連携が密なところが、津南町の自慢でもあります。

―1つの園は小規模ではあるけれども、目が行き届く保育はできているということですね。
桑原町長:はい。小規模自治体ならではの、きめ細やかな体制をとることができていると思っています。

―都会では、朝も含めた延長保育のニーズが高まっていて、親の働き方の課題は引き続き課題ですが、津南町ではいかがですか。
桑原町長:ニーズとしては、うちの町でもありますが、今、そのマンパワーが分散しているので、体制が思うように取れていない状況です。保育現場からはできれば4時にご家庭が迎えに来てもらって、家庭での時間を大切にしてもらえたら、という声も出ていますが…。

―それはやはり終業が遅いということですか。
桑原町長:女性でもフルタイムで働かれている方がほとんどですので、やはり6時、6時半ごろになってしまいますね。

―その意味でも、子育て支援のセンター機能としての保育園の統合は重要になってくるのですね。一方で、保育士さんの確保は、全国どこでも課題になっていますが、津南町では保育士さんの待遇や、働きやすい環境整備は、どのようにされていますか。
桑原町長:改善をし続けてきました。県の人事委員会勧告に沿うような形になりますが、年々改善してきています。保育や教育は、マンパワーはとても大事ですので、そこは重視しています。

―子育て支援といえば、今は「無償化」がトレンドですが、その辺りはどのようにお考えですか。
桑原町長:3歳から高校生まで、第1子、第2子は1万円で、第3子以降は3万円の手当を支給しています。

―それは結構大きいと思いますよ。
桑原町長:これは、標準レベルなので。もっと頑張らなきゃいけないぐらい。

―そうなんですか。
桑原町長:そのほか、その保育料の軽減策とか、医療費の助成(入院費の無償化)に早い段階で取り組んできましたし、コロナショックや物価高対策では、子育て世帯に加算するなどの手厚い給付策を取らせていただいてきました。最近では、令和5年度から高校生の遠距離通学費補助を始めまして、学ぶための物理的な制約を少しでも緩和して、生徒にとって学びの選択肢を広げたいという思いでしたが、子育て世帯の負担軽減にもつながっていると、考えています。ありがたいというお声も実際にいただいているところです。

―地方での子育ての魅力は?
桑原町長:自然や文化を感じながら子育てできるというところです。冬にはたくさんの雪が降るので雪壁の静寂、一気に春が来て、夏はセミとかスズムシの鳴き声を聞いて、川からカニが出てきたりですね。秋は稲刈りのにおいがしたり、紅葉が見られたり、日常生活の中で五感が刺激される環境がある。自然の中で「生きている!」と感じながら、子どもたちが育つことができるというのが、魅力ですね。地域の共助といいますか、隣近所の声の掛け合いがあるので、安心できる暮らしができるというのも魅力です。

―都会のように、隣に誰が住んでいるかわからないみたいな話ではなくてね。
桑原町長:町で広報無線を鳴らすんです。児童の下校時間に「これから下校します」って。それによって地域の皆さんに、子どもたちの見守りをしてもらっています。

―それは素晴らしいです。
桑原町長:一方、課題としては、子どもの数が少ないので、友人関係が固定化してしまうことによる問題も起きたりします。その意味でも、令和9年4月から、3つある小学校を1校に統合しますので、クラス替えもできるようになります。保育園同様、適正な規模の中で、また教育の質向上や個々の児童への対応のためにも、マンパワーを集約することで応えられる体制にしたいと考えています。

取材・文/政治ジャーナリスト 細川珠生

政治ジャーナリスト 細川珠生
聖心女子大学大学院文学研究科修了、人間科学修士(教育研究領域)。20代よりフリーランスのジャーナリストとして政治、教育、地方自治、エネルギーなどを取材。一男を育てながら、品川区教育委員会委員、千葉工業大学理事、三井住友建設(株)社外取締役などを歴任。現在は、内閣府男女共同参画会議議員、新しい地方経済・生活環境創生有識者会議委員、原子力発電環境整備機構評議員などを務める。Podcast「細川珠生の気になる珠手箱」に出演中。

(細川珠生)

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