2025年08月18日10時00分 / 提供:ウーマンエキサイト
■いじめをきっかけに、塾に通いたくなくなった娘
玄関を出てからの道のり、私は無言だった。
優花も何も話さない。二人の間に沈黙だけが残り、ただ足だけが家に向かって歩いていた。
その日の夜。夕飯を終えたあと、優花がぽつりと呟いた。
唐突な一言に、私は箸を持ったまま動けなかった。
「塾、嫌になっちゃった?」
「……うん。芽依ちゃん、私にすごく意地悪なんだけど、でも辛そうなの。優花ががんばってるの、いけないのかなって思っちゃう…」
目を伏せて、唇をかむ娘の姿が痛かった。
その瞳には、幼いながらも、我慢と諦めの色が滲んでいた。
「でも…麻里ちゃんとは同じ学校行きたいし…」
声がかすれて、最後は聞き取れなかった。
■受験は塾に通わないとできないもの?
リビングのソファでテレビを見ていた夫も、そのやり取りを聞いていたようで、静かにこちらを振り返った。
「……千尋。お受験って、塾に通わなきゃできないのか?」
その言葉に、私ははっとした。
塾は手段であって、目的じゃない。
私が見ていたのは“方法”ばかりで、優花の気持ちをきちんと見ていなかったんじゃないか。
私はゆっくりと優花の隣に座って、優しく背中を撫でた。
「優花、ママね、もうちょっとだけ聞いてもいい?」
「優花は、どうしたいの? お受験そのものをやめたい? それとも…あの塾がイヤ?」
優花は少し考えてから、ぽつんと答えた。
「麻里ちゃんと、同じ学校行きたい。でも…あの塾は、もう行きたくない」
私は、その言葉にすべての答えを見た気がした。
胸の奥が、すうっと軽くなる。
「そっか。じゃあ、塾はやめよう。優花が辛いのに、無理して通わせる理由なんてないもん」
驚いた顔をした優花に、私はにっこりと笑って見せた。
「おうちで、ママと一緒に勉強しよう?」
優花の目に、涙が溜まり――やがて安心したように、ふわっと笑った。
※この漫画は読者の実話を元に編集しています。また、イラスト・テキスト制作に一部生成系AIを利用しています。
(ウーマンエキサイト編集部)