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自治体における相談機能の重要性…ケアをする側のケアも重要視する杉並区の取り組み【細川珠生のここなら分かる政治のコト Vol.30】

2025年07月25日15時00分 / 提供:ウーマンエキサイト

交通の利便性、緑の多さ、商業施設の充実などを備え、「住みやすい」「住みたい」まちランキングでは上位に常連となっている杉並区。3年前、区長選に出馬するために、家族のいる欧州から単身帰国した岸本聡子区長は、公共政策の研究者としての経験を活かし、どのような杉並区を目指しているのでしょうか。3回にわたるインタビューの第一回は、杉並区の子育てについてお聞きしました。

お話を聞いたのは…
杉並区 岸本聡子区長
1974年7月15日生まれ、東京都大田区出身。神奈川県立川和高校、日本大学文理学部卒業。大学入学後、国際青年環境NGO A SEED JAPAN(ア シード ジャパン)に参加。大学卒業後、同法人有給専従スタッフに。その後、2001年にオランダに移住。国際政策シンクタンクNGOトランスナショナル研究所研究員。ベルギーに移住し、2022年4月に帰国し、杉並区に居。同年7月から杉並区長に。
>>杉並区 岸本聡子区長 公式ページ

―「住みやすい」「住みたい」まちランキングで上位につく“常連”になるには、子育て支援策も功を奏しているのではないかと思います。子育て支援についての基本的な考えはどのようなものですか。
岸本区長:安心して子育てできる環境の整備・充実」に取り組んでいます。特に力を入れているのは、妊娠期から出産、子育て期まで、切れ目なく地続きで寄り添う支援です。

―「産後ケア」にも力を入れられているのですね。
岸本区長:私は長男を日本で、次男をオランダで出産しましたが、オランダでは、自宅出産を選択される方が多いです。もちろん、医療的な措置が必要な人を含め、望めば病院での出産という選択肢もあります。

―そうなんですか!? それはびっくりです。
岸本区長:出産のときから一番安心できる場所で生活が続くことが大事、という考え方ですね。

―では家に助産師さんが来て?
岸本区長:妊婦検診のときから診てもらっていた助産師さんが自宅に来て、出産をサポートしてくれます。病院での出産ですと、退院するまでの間に、授乳や沐浴などを教えてもらって自宅に帰りますよね。私がオランダで自宅出産したときは、毎日保健師さんが来てケアしてくれました。

―毎日、どのようなことをしてくださるのですか。
岸本区長:人によって違って、何をいつまでというのは、相談しながら決めるのですが、状況によっては買い物などの家事をしてくれる場合もあります。ただ基本は、だいたい1週間、授乳や沐浴などの育児指導や、お母さんの回復のための支援ですね。

―「産後ケア」に注目されているのは、ご自身のご経験も影響していますか。
岸本区長:妊婦さんの「ゆりかご面接」や出産後の「すこやか赤ちゃん訪問」は、杉並でも歴史のある取り組みですが、私自身は、自分の経験も踏まえ、基礎自治体としても、産後のお母さんの不安に寄り添うことはとても重要な役割だと思っています。出産直後は、親子関係の出発点として一番大切だと考えています。

―さまざまな支援も、「ゆりかご面接」や「赤ちゃん訪問」など、対面での支援を重視されていますが、これにはこだわりがあるのですか。
岸本区長:保健師が主体となって、さまざまな支援策をブラッシュアップしてくれています。最前線にいる職員が、妊婦さんや産後のお母さんたちに向き合うことの大切さを一番実感しているからこそ、これらの事業が続いてきているのだと思っています。核家族化が当たり前になり、地域のつながりが薄れている中で、身近に相談できる人がいないという不安を解消するためにも、必要なことだと思っています。

―今後、注力する支援はどのようなものですか。
岸本区長:女性の健康に関するケアですね。「まるっとヘルスケア」というものですが、女性の心と体の健康相談をLINEでできるようにしました。妊娠・出産のみならず、思春期、更年期の心身の悩み、人間関係、仕事など、女性のライフステージに応じた健康課題を包括的にサポートするため、看護師、心理士、栄養士さんなどの専門家にいつでもオンライン(LINE)で、無料で、そして匿名で相談できる体制を整えました。さらに、これまで無料相談回数の上限を3回としていましたが、今年度からは無制限でできるようにしました。

―そもそも「相談」というハードルも結構高いので、気軽にできるという体制はとてもありがたい取り組みだと思います。一方で、看護師さんなどの相談員の確保は結構大変ではないですか。
岸本区長:そうなんです。確保も大変ですが、ケアをする相談員のケアも課題になっています。相談に乗る人たちの心のケアというのが社会として課題だと思っています。

―なるほど。
岸本区長:自治体にとって相談機能というのは、とても重要です。ところが、日本の社会全体で大切にされてこなかったことの1つだと思うんですけれども、ケアをすることによって救われる人がいて、そのケアする方たちに対するコストや資源、専門性などの社会的な評価が低すぎると私は思います。評価を高めてケアをする方たちにお金をかける社会にしていかないと、女性が子どもを産み育てられる社会的な風土を作っていくのは大変難しいと思っています。

―その着眼点は、目が覚める思いです。子育て支援といって、そこに目を向けるお話はあまり聞く機会がなかったので。もちろん、首長さん方は問題意識として持っている方が多いと思いますが。
岸本区長:子育て支援は、表層に現れたところですけれども、その表層の下にある根っこの部分を、社会全体で、急いで真剣に考えて整備していかなければならないという危機感を持っています。子どもたちを直接虐待から守りたいという思いから長年の準備を経て、いよいよ来年11月に、杉並区立の児童相談所を開設しますが、ここで働く職員のメンタルにもきちんと目を向けていきたいと思っています。

取材・文/政治ジャーナリスト 細川珠生

政治ジャーナリスト 細川珠生
聖心女子大学大学院文学研究科修了、人間科学修士(教育研究領域)。20代よりフリーランスのジャーナリストとして政治、教育、地方自治、エネルギーなどを取材。一男を育てながら、品川区教育委員会委員、千葉工業大学理事、三井住友建設(株)社外取締役などを歴任。現在は、内閣府男女共同参画会議議員、新しい地方経済・生活環境創生有識者会議委員、原子力発電環境整備機構評議員などを務める。Podcast「細川珠生の気になる珠手箱」に出演中。

(細川珠生)

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