2023年06月01日11時00分 / 提供:ウーマンエキサイト
ウーマンエキサイトをご覧のみなさん、こんにちは。tomekkoです。
前回初めてを書いてみましたがいかがでしたか?
ちょっと刺激的な内容ではありますが、作家の人生や創作に大いに影響を及ぼした恋愛事情を紐解くと案外身近に感じられたり、興味をそそられたり…ということもあるのではないでしょうか?
前回の記事には
「こんな作品があったんですね!興味が湧いてきました」
「角度を変えて見ると面白いですね」
などのコメントもいただいて、描いて良かった〜と思っています。
それでは今回も 谷崎潤一郎の人生を追っていきます…!
恋多き男の本領発揮!
あんなに揉めたのなんだったの離婚
良妻賢母の妻・千代を友人である佐藤春夫に譲る譲らないで大揉めに揉めたのに、結局離婚することになった谷崎…。
その後、当時雑誌の記者をしていた丁未子と再婚するのですが、
裏ではまたまさかの別の女性の影が…。
それは、豪商の人妻松子。
美しく理想通りの女性・松子を崇拝する谷崎でしたが、人妻で自分のものにならないので丁未子と結婚。ところが、松子の夫の店が倒産し松子から頼られるとすぐに交際スタート。松子の離婚も成立しないうちから同居を始めてしまうのです。
ここまでくるとため息しか出ないんですが、私が複雑な気持ちになったのは、この松子とその姉妹が谷崎作品の中で一番好きな『細雪』のモデルだったことです!
『細雪』は昭和初期の裕福な大阪町人の日常を見事な美しい文体で表していて、それぞれ種類の違う花のような四姉妹の何気ない会話や仕草が目に浮かぶような表現が素敵な名作です。
当時は戦争も始まり社会はそれどころではなかったのでしょうが、それでもやはりこの作品が愛されたのは、庶民にとって身近なようで手の届かない美しい人々への憧憬があったからなのかなと思います。
谷崎は理想の女性に家事や所帯じみたことはしてほしくない人だったそう。
『細雪』を読んでいても舞台が裕福な家ということもあり、四姉妹が家事をするような場面はほとんど出てきません。
時間をかけてお出かけの着物や帯を選んだり、どこそこで食事をしたり帰りに半襟をあつらえに行ったりコンサートを観に行ったり花見に行ったり。
悩みといえばなかなか結婚相手の決まらない三女や自由奔放なモダンガールの四女の生活のこと。
日常の美しいところだけを切り抜いた近代の絵巻物的な印象があるんです。
日常生活にも徹底的に理想を求め続ける男!
でも実際の生活ってそういうものではないですよね?
だから結婚後の松子も谷崎の理想の女性(人目を忍んで逢っていた頃のまま)を演じ続けることにとても苦労していたそうです。
いやーこうして見ていくと、谷崎潤一郎の人生ってリアルに光源氏みたいって言われているのもわかりますよね…。
※こちらはあくまで谷崎潤一郎の世界観のイメージです
平安時代だし、物語だし!で許されてたけど実際にこんなことするんだ…と思うと引きますね。
当時の日本の現実からはかけ離れた西洋的、ファム・ファタール(男を堕落させる悪女)への崇拝が強く、その姿を妻になる女性に求め続けるというTHE自分勝手&癖が強すぎる谷崎ですが、そんな谷崎だからあの耽美でちょっと猟奇的な世界観に満ちた名作が生まれたんだ…と思うとなかなか複雑な感情になってしまいます。
ですが…
ただの胸くそクズ男なだけなら後世に名を残すことはないでしょう。
女性たちが谷崎の世界に巻き込まれて不幸になっていっただけなのか…と言い切ってしまうのもちょっと違いそうです。
なぜなら谷崎との関係に悩む女性たちの相談に乗っていたのは元妻や身の回りの人々だそう。女性へのちょっと変わった性癖や数々の問題点はあれど、面倒見の良い側面があったり、千代に対しても感謝の思いは示していたようです。
平凡がいいよね…と気づいてしまったけれど
才能に恵まれたアーティストの数奇な人生…であることには間違いないですが、それを陰で支える人々の人生や苦労にも注目してみるとまた違った楽しみ方(と言っていいのかな…?)ができるのかもしれませんね。
最後に。
谷崎先生、クズクズ言ってごめんなさい! 人間性としてはマジかよ? 大丈夫? と思いますが、それでもやっぱり変わらず作品は大好きです!!