2024年07月09日18時00分 / 提供:新刊JPニュース
この20年ほどで「発達障害」という言葉は急速に広がり、一般にも認知されるようになった。それによって適切な診断と対処の機会が得られようになったのは、もちろん社会としての前進ではある。ただ、その弊害についても考える時期に来ているのかもしれない。
というのも、「発達障害」と診断されるケースは、今猛烈に増えているのである。そもそも発達障害は、生物学的基盤によって起こる、中枢神経の機能的発達の障害とされ、遺伝的要因が強いことが知られている。『「愛着障害」なのに「発達障害」と診断される人たち』(岡田尊司著、幻冬舎刊)によると、ADHD(注意欠陥/多動性障害)やASD(自閉スペクトラム症)といった代表的な発達障害の遺伝率は約8割。代表的な精神病である統合失調症の遺伝率と近い。ところが、統合失調症の有病率は横ばいか減少傾向なのに、発達障害だけが急増しているのだという。
◾️発達障害激増の背後にある「誤診」の存在
本書では、この現象の背後にある「誤診」、あるいは「過剰診断」の存在を指摘している。発達障害という考え方があまりにも広がりすぎたことで、あくまで「平均的」ということでしかない発達の仕方が、「本来期待される健常な発達」として認知され、それ以外の発達の仕方を「障害」だとする見方になりかねない。