2023年10月09日20時00分 / 提供:新刊JPニュース
昔は慣れ親しんでいた野草たちが絶滅したり、増えすぎたりしてしまい、日本らしい自然が失われつつある。どうしたら日本を代表する野草たちを守ることができるのか。
『在来植物の多様性がカギになる 日本らしい自然を守りたい』(根本正之著、岩波書店刊)では、生態学者の根本正之氏が、日本らしい自然を守るにはどうしたらいいのか、外来種や品種改良をどう考えるべきなのか、動物たちと向き合うためには何が必要かなどを各地の保全活動をふまえ、今後の課題と将来を解説する。
■日本の植生を守るための3つの問題点
日本で身近な自然の中から多くの生き物たちの姿が消えていっていることに関心が向くようになったのは、なりふりかまわない戦後の復興が頂点に達した1980年代だという。アメリカの生物学者レイチェル・カーソンが農薬に含まれる化学物質の危険性に気づき『沈黙の春』を出版したのは1962年。カーソンは、生物濃縮の怖さや人間が自然をコントロールすることの愚かさを指摘したのだ。日本でも1964年に「生と死の妙薬」のタイトルで翻訳され、多くの人々の注目を集めた。近年、これまで軽視されてきた種の絶滅に結びつきかねない食物連鎖による有害物質の濃縮など、地球環境問題に対するカーソンの視点が再び取り上げられている。