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NTT、10空間モード多重信号の光増幅中継で1300kmの長距離伝送に成功

2023年03月07日19時51分 / 提供:マイナビニュース


NTTは3月6日、これまでの光ファイバと同じ直径を保ちながら、伝送容量を10倍に拡大可能な「空間モード多重光ファイバ」によって、1300kmの10空間モード多重信号の光増幅中継伝送に成功したことを発表した。なお同社は、これが世界最長の伝送になるとしている。

詳細は、米国カリフォルニア州サンディエゴで現地時間3月9日まで開催中の光通信技術に関する国際会議「OFC2023」において発表された。

通信需要の増加に対応する光通信技術として、光ファイバ中の光の「通り道」の数(多重数)を増やすことで、1本あたりの伝送容量の飛躍的な向上を期待できる「空間分割多重技術」が注目されている。

その1形態である「空間モード多重伝送技術」では、「マルチモードファイバ」(MMF)が利用される。MMFは、複数の空間モードを用いてそれぞれ異なる情報を送ることで、伝送容量を多重数(空間モード数)に応じて増やすことが可能だ。特に、これまでのシングルモード光ファイバ(SMF)と同じ直径(標準クラッド径)を維持したままでも、単一の光ファイバで10以上の多重数へ容易に拡張することができる。

一方で、受信側で情報を取り出す際には、伝送途中に発生する異なる空間モードの光信号の混じり合い(空間モード結合)や、各空間モード光信号の受信器への到着時間のずれ(モード分散)によって生じる信号波形の歪みを、受信器におけるMIMO型デジタル信号処理によって取り除く必要がある。

特に、より多数の空間モードを使うほど、また距離が長くなるほどモード分散の影響は大きくなり、それに応じて要求されるMIMO信号処理量がボトルネックとなるため、空間多重数の拡張と光信号の長距離伝送の両立が困難だったという。

そこで今回の研究では、これまでの6空間モード多重伝送の研究で培われてきた技術を拡張し、より多くの空間モードを持つ光伝送路向けに対応可能な「拡張巡回モード群置換技術」を提案することにしたという。同技術では、10以上の空間モード多重伝送を行う際に顕在化する各空間モードの光伝送特性差(光損失、伝搬遅延時間など)を平準化するため、光増幅中継器において空間モード間での強制的な光信号の入れ替え(置換)を効率的に行う。その結果、モード置換に伴う信号損失劣化を低減しつつ、伝送中に累積するモード分散を抑圧できるため、受信器内でのMIMO信号処理量を低負荷化でき、結果として長距離伝送が可能になるとする。


6空間モード多重伝送では、空間モードの置換候補総数は720通り(6の階乗)であったのに対し、10空間モード多重伝送では約363万通り(10の階乗)へと爆発的に増大する。そのため、拡張巡回モード群置換技術による空間モード多重信号特性の高い平準化効果を得るためには、空間モードの伝送特性を熟慮した上で置換方式を選択することが重要だという。そこで今回は、光学的特性の似た空間モードをグループとして取り扱う「モード群」の特性に着目し、2通りの置換方式を選択することにしたとする。

方式1は置換を「対称的」に行うもので、たとえば、空間モード1と空間モード10を入れ替え、空間モード2と空間モード9を入れ替えるような形でそれぞれの空間モードに対して対称的な入れ替えを行う。同方式では、光学特性が最も異なるモード群の入れ替え(モード群1とモード群4)により高い平準化効果を期待できる一方で、入れ替えの前後で同じモード群へ置換される空間モード(空間モード5や空間モード6)の組み合わせが出てしまうという課題もある。

このような組み合わせが発生することを回避するため、方式2では置換の前後で必ずモード群の変換が起こる組み合わせの選択を行うようにしたとする。提案された置換方式は中継スパンごとに順次行われるため、複数回の中継伝送後にモード分散を含む空間モードごとの伝送特性の平準化効果が得られ、長距離伝送の実現を期待できるとしている。

今回、拡張巡回モード群置換技術を導入した10並列の周回信号伝送評価系を構築し、標準クラッド径グレーデッドインデックス型屈折率分布を有する10空間モード多重光ファイバを光伝送媒体として用いた長距離伝送実験が行われた。

その結果、中継増幅間隔おきに各空間モードを入れ替えることにより光学特性がやがて平準化され、モード分散累積に起因する信号パルスの拡がりが、100kmを超える伝送距離で大きく低減されることを確認できたという。また、信号パルス拡がりの低減効果は方式2の方が顕著であったことから、置換の前後で必ずモード群の変換を起こす組み合わせが、よりモード分散の高い平準化効果を示すことが判明したとする。特に方式2を用いた場合、1300kmの距離を伝送した後に、従来伝送と比較して82%の信号パルス拡がりの低減効果が得られたとした。この結果は同時に、受信側のMIMO信号処理の規模を従来と比較して約5分の1へ低減できる可能性を示唆するとしている。

また1300km伝送後には、すべての伝送チャネルにおいて誤り訂正復号閾値を上回る良好な信号特性が確認された。この結果により、既存のSMFと同じ標準クラッド径のMMFを用いた空間モード多重伝送において、10空間多重信号の世界最長伝送記録が達成されたとする。

NTTは今後、線路技術や光増幅技術などの関連技術分野と連携のもと、10空間モード多重級の光信号を効率良く処理可能なMIMO信号処理を用いたシステム実現技術の確立を目指すとしている。

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