旬のトピック、最新ニュースのマピオンニュース。地図の確認も。

理科大、全固体LIBにおける高い界面抵抗の要因の1つを制御する方法を発表

2023年03月07日12時00分 / 提供:マイナビニュース


東京理科大学(理科大)は3月6日、全固体リチウム電池(LIB)の充電速度に加速・減速効果を与える中間層を発見し、界面から厚さわずか数オングストローム(Å)以下の電解質組成で「電気二重容量」(CEDL)を制御できることを示したと発表した。

同成果は、理科大 理学部第一部応用物理学科の樋口透准教授、理科大大学院 理学研究科の高栁真大学院生(研究当時)、物質・材料研究機構(NIMS) 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点の土屋敬志主幹研究員、同・寺部一弥MANA主任研究者らの共同研究チームによるもの。詳細は、材料の物理学を扱う学術誌「Materials Today Physics」に掲載された。

電極と固体電解質などの異なる層が接する界面は、全固体LIBやキャパシタなど、さまざまなデバイスの電気特性を決定づけることから、その構造設計が重要だ。電極/固体電解質のような異なる層の界面の近傍には、正または負の電荷や電解質イオンが並ぶことで自発的に薄い2層構造が形成される。同層を「電気二重層」といい、その形成が電子物性に与える効果のことを「電気二重層(EDL)効果」と呼ぶ。

EDL効果は、リチウムイオン輸送における高い界面抵抗の要因の1つであり、全固体LIBの充放電特性に大きな影響を与えることがわかっている。しかし、固体/固体界面における詳細なEDL構造についてはまだ不明な点も少なくなかった。

そうした背景の下、EDLトランジスタ(EDLT)とホール測定を用いることで、電極近傍で静電的に発生するEDL電荷の有無を検出する新しい実験手法を2021年に開発したのが、研究チームだ。同手法により、電極界面から5nm以下の領域では、EDL効果が電解質組成に強く依存することが解明された。つまり、電極/固体電解質界面に特定の電解質を挿入することによって、EDL効果を抑制できることがわかったのである。なお全固体LIBでも、電極/固体電解質界面への中間層を挿入することによってユニークな現象が生じることが確認されているという。このような界面物性の解明は、全固体LIBをはじめとする固体電解質を用いたデバイスの開発において重要だとする。

そこで今回の研究では、そのような界面物性の解明を目指し、水素化ダイヤモンド(H-diamond)ベースのEDLTとリチウム固体電解質(Li-Si-Zr-O)を用いて、固体/固体界面におけるEDLの厚さとCEDLについての検討を行うことにしたという。


H-diamondは、化学的安定性に優れ、イオンを遮断する性質を持つ。電荷キャリア変調に対する酸化還元効果を排除するため、今回の研究では同物質が半導体のチャネルに採用された。そして、LiNbO3またはLi3PO4中間層を持つH-diamondベースのEDLTが作製された。

まず作製されたEDLTについて、リチウムイオン伝導性固体電解質/電子材料界面におけるEDLによって引き起こされる電子キャリア変調の振る舞いが調べられた。その結果、LiNbO3およびLi3PO4デバイスのいずれにおいても、EDL形成による著しい正孔密度の変調が観測されたという。

Li+欠乏領域でのCEDLを評価できるホール測定と、Li+リッチ領域でのCEDLを定性的に評価できるパルス応答測定を組み合わせ、Li+リッチ領域からLi+欠乏領域までの広い範囲のCEDLの評価を行ったところ、LiNbO3/H-diamond界面およびLi3PO4/H-diamond界面のCEDLは電圧依存性が大きく、リチウム固体電解質で観測されるスイッチング応答速度よりも1桁以上速い加速、もしくは1桁以上遅い減速を引き起こすことが判明した。

また、LiNbO3デバイスのパルス応答測定結果から、LiNbO3/H-diamond界面のEDL厚さは5Åと見積もられ、負電荷Li+空孔の計算密度は1.21mmol/cm3であることが示されたとする。この結果は、高濃度のイオンが与えられた層によって、液体電解質系に匹敵するEDL効果がもたらされ、CEDLと電極表面の電荷を決定する界面からわずか数Åのところにある固体/固体電解質界面領域が原因であることを示唆しているという。

研究チームによると今回の研究は、比較的簡単な方法を組み合わせて、固体/固体電解質界面のCEDLをより広範囲に調べることが可能だと示された点で非常に意義深いという。同チームは、全固体LIBの性能に関連する界面特性を明らかにする上で、有用性が高い成果であるといえるとした。また今回の成果は、全固体LIBの出力向上の障壁となっている界面抵抗を改善させる上で重要な知見であり、将来的には劣化・充放電特性に優れた全固体LIBの実現につながる可能性があるとしている。

続きを読む ]

このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

ネタ・コラムカテゴリのその他の記事

地図を探す

今すぐ地図を見る

地図サービス

コンテンツ

電話帳

マピオンニュース ページ上部へ戻る