2023年03月06日17時14分 / 提供:マイナビニュース
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名古屋大学(名大)と科学技術振興機構(JST)は3月3日、従来は溶解させてから鋳型利用する界面活性剤をあえて溶かさずに層状固体のまま利用し、その隙間で合成したアモルファスシリカを剥離することで、厚さ0.9nmのアモルファスシリカナノシートの合成に成功したと発表した。
同成果は、名大 大学未来材料・システム研究所の山本瑛祐助教、長田実教授らの研究チームによるもの。詳細は、ナノ/マイクロスケールのサイエンスに関する学際的な分野を扱う学術誌「Small」に掲載された。
一般的に、ナノシートは元々の三次元物質とは異なる特性や機能を示し、原子レベルの薄さと二次元ナノ構造に起因した、特異なイオン・電子伝導特性を示すことが知られている。中でも、アモルファスシリカのナノシートは、優れた機械的特性や広いバンドギャップを示すことが期待されており、次世代の電子デバイス、エネルギー分野での応用が期待されている。
しかし、アモルファスシリカは非層状物質であるため、一般的な合成手法である層状化合物の剥離によるナノシート合成は困難だったという。これまで、界面活性剤の液晶を鋳型として合成されたアモルファスシリカ-界面活性剤層状物質の剥離に関する報告もあったが、いずれも剥離が十分に進行しないことから厚さのあるものしか得られておらず、新たな合成法の開発が望まれていた。
そこで研究チームは今回、アモルファスシリカナノシートの合成を実現する方法として、固体の界面活性剤をあえて溶かさずに層状固体のまま利用し、その隙間でアモルファスシリカを析出させてから剥離する方法を検討することにしたという。
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一般的に、界面活性剤を鋳型としたナノ材料の合成には、界面活性剤を一度溶かしてミセルにしてから、無機種と協奏的に自己集合させることで鋳型となる液晶が作り出される。
それに対して今回の研究では、剛直な鋳型としてクラフト点(界面活性剤の溶解度曲線の溶解度が急激に立ち上がる温度)以下で形成される固体相の界面活性剤が利用され、その層間でアモルファスシリカの析出が行われた。このようにして合成されたアモルファスシリカは単層で剥離できることが見出され、原子間力顕微鏡(AFM)を用いた測定により、厚さ0.9nmのアモルファスシリカナノシートの合成が実現されたとする。
さらに、同ナノシートが安定に分散したコロイド溶液も得られており、数か月後であっても凝集しないほどの高い分散安定性を示すことが確認されたという。また、ラングミュアー膜(両親媒性物質を水面上に展開した時にできる、物質一層の厚さの膜)を利用した精密集積により、1nmレベルで厚さを制御した極薄膜の構築にも成功したともしており、構築された極薄膜は、+1Vの電圧を印加した際の電流密度が10-9Acm-2と、優れたリーク電流特性を示すことも確認されたとする。
なお、アモルファスシリカは絶縁膜やフィラー、プロトン伝導体などとして、さまざまな分野で利用される汎用的な素材であることから、研究チームでは今回の成果について、アモルファスシリカ超薄膜の活用法に新たな指針を与えるものとして期待されるとしている。