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広島大など、材料の高結晶化で有機薄膜太陽電池のエネルギー変換効率を向上

2023年02月27日15時20分 / 提供:マイナビニュース


広島大学、京都大学(京大)、高輝度光科学研究センター(JASRI)の3者は2月24日、「有機薄膜太陽電池」(OPV)の発電材料である有機半導体の高結晶化によりエネルギー変換効率を向上させることに成功したと共同で発表した。

同成果は、広島大大学院 先進理工系科学研究科の尾坂格教授、同・斎藤慎彦助教、同・山中滉大大学院生、京大大学院 工学研究科の大北英生教授、同・KIM Hyung Do助教、同・齊藤隼人大学院生、JASRI 放射光利用研究基盤センターの小金澤智之主幹研究員らの共同研究チームによるもの。詳細は、環境発電やエネルギーの変換・貯蔵などに使用される材料に関する全般を扱う学術誌「Advanced Energy Materials」に掲載された。

OPVは、溶液プロセスによってプラスチック上に製造でき、軽量、フレキシブル、シースルーなどの特徴を持つ。そのため、建物の壁や窓などの垂直面や、テントやビニールハウスなどへの応用も可能だ。しかし、OPVの変換効率が従来のシリコン太陽電池よりも低いことが課題となっていた。

OPVの発電層には、正電荷を輸送するp型有機半導体と、負電荷を輸送するn型有機半導体の混合膜が用いられる。高効率化を実現するには、これら有機半導体の結晶性を高め、光吸収により生成された電荷が効率的に電極まで輸送されるようにする必要がある。しかし、異なる有機半導体を混ぜた状態で、それらを結晶化させるのは非常に困難だった。

そこで研究チームは今回、p型有機半導体としては2種類の結晶性半導体ポリマーを、n型有機半導体としては4種類のフラーレン系および非フラーレン系材料を用いて、どのように組み合わせれば半導体ポリマーが結晶化し、OPVが高効率化できるかを確かめることにしたという。

今回の研究では、p型有機半導体としては、広島大が開発した「PTzBT」と「PTzBTE」の2種類の半導体ポリマーが用いられた。一方n型有機半導体は、フラーレン系材料の「PCBM」と、非フラーレン系材料の「IT-4F」、「Y6」、「Y12」が用いられた。そしてそれぞれを組み合わせ、合計8種類のOPV素子が作製された。

n型にPCBMまたはY12を用いた素子では、p型にPTzBTまたはPTzBTEのどちらを用いても、OPVの外部量子効率は同様だったという。しかし、n型にIT-4FまたはY6を用いた素子では、p型でPTzBTEを用いた方がPTzBTよりも外部量子効率が顕著に高いことが判明した。そのエネルギー変換効率は、n型がIT-4Fの時にp型がPTzBTEで12.0%、そしてPTzBTで8.7%。また、n型がY6の時にPTzBTEで13.4%、PTzBTで7.0%だった。なお、Y12とPTzBTEを組み合わせた素子では、約15%の変換効率が得られたとする。


次に、大型放射光施設SPring-8にて、8種類の混合膜に対してX線回折測定が実施された。すると、PCBMとY12を用いた混合膜では、PTzBTもPTzBTEも高い結晶性が示された。その一方で、IT-4FとY6を用いた混合膜では、PTzBTEは高い結晶性が示されたものの、PTzBTは非晶性であることが確認された。つまり、ポリマーの結晶状態とOPV特性は非常によく相関することが明らかにされたのである。

PTzBTは、PCBMやY12など凝集性の高いn型有機半導体と組み合わせると、溶液から薄膜を形成する過程において、両者が相分離することにより結晶状態を形成するという。それに対し、IT-4FやY6などの凝集性の弱いn型有機半導体を組み合わせると、溶液において互いによく混合して、その状態を保ったまま薄膜化するため、非晶状態を形成すると考えられるとした。

一方、PTzBTEは側鎖のエステル基上の酸素原子が、ポリマー主鎖の硫黄原子と非結合性相互作用を持つため、同主鎖が非常に剛直な構造となるとする。そのため、凝集性が非常に高く、どのようなn型材料を組み合わせてもうまく相分離し、結晶状態を形成すると考えられるとした。

今回の実験では、半導体ポリマーを結晶化できた混合膜を用いたOPVほど、高い変換効率が示された。またそれだけでなく、n型有機半導体も結晶化させることで、より高い変換効率が得られることも解明された。

研究チームは今回の研究成果について、将来的なOPVのさらなる高効率化に向けて新たな設計指針を示す、非常に重要な成果だとしている。

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