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東大など、エナンチオ選択的な触媒的プロパルギル位アルキル化反応を実現

2023年02月27日13時12分 / 提供:マイナビニュース


東京大学(東大)と東邦大学の両者は2月24日、イリジウム触媒の存在下、可視光照射による光反応で「アルキルラジカル」を生成する「4-アルキル-1,4-ジヒドロピリジン(4-アルキル置換ハンチュエステル)」に着目し、これを求核的なラジカル反応剤として用いることで、プロパルギルアルコールのエナンチオ選択的な触媒的プロパルギル位アルキル化反応に世界で初めて成功したことを共同で発表した。

同成果は、東大大学院 工学系研究科 システム創成学専攻の張煜林大学院生(研究当時)、同・大学院 工学系研究科 応用化学専攻の田邉資明特任講師、同・栗山翔吾助教、同・西林仁昭教授、東邦大 薬学部 薬品物理化学教室の坂田健教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、英オンライン科学誌「Nature Communications」に掲載された。

「プロパルギル位」とは三重結合に隣接する飽和炭素のことで、そこに置換基を導入する反応を「プロパルギル位置換反応」という。プロパルギル位に不斉炭素を有するプロパルギル位置換化合物は、不斉炭素に隣接する三重結合の高い反応性がもたらす薬理活性が知られており、医薬品としても極めて重要な化合物群だ。

一方でプロパルギル位に直接的に置換基を導入する「触媒的プロパルギル位置換反応」は、位置選択性や反応中間体などの制御が困難であり、置換アレン生成物や置換アレン重合生成物などが混合物として得られてしまうことが問題だった。そのため、触媒的プロパルギル位置換反応は開発が遅れてきたという。

それに対し東大の西林教授らの研究チームは、2000年にルテニウム触媒などを用いた触媒的プロパルギル位置換反応の開発に成功し、それ以降、研究をリードしてきた。特にエナンチオ選択的な触媒的プロパルギル位置換反応には世界で初めて成功しており、これまでさまざまな炭素原子求核剤、ヘテロ原子求核剤、ヒドリド求核剤などによる不斉プロパルギル位置換反応を実現している。

しかし、官能基で活性化されていない単純なアルキル基の導入に関しては、アルキル化求核剤の反応性が高すぎるなどの理由により、これまで触媒的な不斉プロパルギル位アルキル化反応は、官能基を含むアルキル化求核剤を除き、報告例がなかったという。

そこで今回は、イリジウム触媒存在下、可視光照射による光反応でアルキルラジカルを生成する4-アルキル-1,4-ジヒドロピリジン(4-アルキル置換ハンチュエステル)に着目。そして、それを求核的なラジカル反応剤として用いることで、プロパルギルアルコールのエナンチオ選択的な触媒的プロパルギル位アルキル化反応に世界で初めて成功したとする。なお、今回の触媒反応は、イリジウム触媒による光レドックス反応と、ルテニウム触媒による不斉プロパルギル位置換反応という、2種類の触媒反応系を組み合わせることで実現したという。


光レドックス反応の触媒サイクルでは、光励起されたイリジウム触媒と4-アルキル-1,4-ジヒドロピリジンとの間の単一電子移動により、フリーラジカルであるアルキルラジカルが系内に生成される。

一方、不斉プロパルギル位置換反応の触媒サイクルでは、ルテニウム触媒が、プロパルギルアルコールの配位と脱水により、触媒的プロパルギル位置換反応における重要な反応中間体であるアレニリデン錯体へと変換される。ここでアレニリデン錯体がフリーラジカルであるアルキルラジカルを補足してアルキニルラジカル錯体となり、さらにイリジウム触媒との単一電子移動によりアルキニル錯体へと変換され、プロトンの授受後に、高いエナンチオ選択性でプロパルギル位アルキル化生成物が得られると考えられるとしている。

すなわち、ルテニウム触媒の中心骨格が、ラジカル反応や単一電子移動で生成する反応中間体を安定化する鍵として働くことで、同触媒反応が進行することが推定され、このことは密度汎関数理論に基づく電子状態計算法であるDFT計算の結果とも一致するとした。

研究チームによると今回の反応系は、可視光照射下、常温で反応が進行しており、従来のプロパルギル位置換反応やアルキル化反応と比べ、反応条件はよりマイルドだという。さらに、従来の反応系で必要だった有機金属アルキル化剤やハロゲン試薬を必要としないため、カップリング反応などを利用したアルキル基を導入する従来法と比べてより環境に優しいクリーンな反応系であることも優れた点としている。

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