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千葉大、SAR衛星画像を用いて地盤沈下を正確に観測する新手法を開発

2023年02月22日13時08分 / 提供:マイナビニュース


千葉大学は2月21日、神奈川県横浜市・横須賀市・三浦市の地盤沈下を「連続差分干渉SAR(合成開口レーダー)解析」(Consecutive DInSAR)という手法を用いて観測し、ほかのモニタリング手法との比較検討を実施した結果、地盤沈下のメカニズムを特定することに成功したと発表した。

同成果は、千葉大大学院 融合理工学府の西勝之進大学院生、千葉大 環境リモートセンシング研究センターのヨサファット・テトォコ スリ スマンティヨ教授らを中心とした、日本・韓国・インドネシアの研究者が参加する国際共同研究チームによるもの。詳細は、地球科学と環境科学におけるリモートセンシングと地理情報システムの学際的な研究と応用を扱うオープンアクセスジャーナル「Geocarto International」に掲載された。

地盤沈下に対しては、特にそれが沿岸部などで発生した場合は洪水や浸水の危険性が高まることから、定期的なモニタリングを行うことが重要だ。これまで日本における地盤沈下のモニタリングは、観測井戸を用いて地表や地下水位の変化を数か月ごとに計測することで行われてきた。近年は全球測位衛星システム(GNSS)も使われているが、信頼性において観測井戸に及ばないとされている。

日本ではインフラの老朽化が大きな社会問題となっているが、観測井戸も同様の状況にあり、設備の老朽化が進んでいるため定期的なメンテナンスが必要で、そのコストが懸念されている。さらに、少子高齢化が深刻化する日本では、今後は実地測量を担う技術者の不足も危惧されている。そのため、観測井戸に代替できる新しい地盤沈下モニタリング技術が求められていた。

そうした中で、近年注目されているのが「干渉SAR(InSAR)」だ。InSARは、SAR衛星により観測された異なる時期の2つの画像を用いて、地表の標高を測定するリモートセンシング技術である。さらに、Consecutive DInSARは、地盤沈下率や地表速度などの数値化を行うことで、時系列で標高のmm単位の変化を測定し、高精度に地盤沈下を検出することが可能だ。そこで研究チームは今回、SAR衛星の取得したデータを用いて、DInSARを実装したソフトウェアで解析を試みたという。


今回の研究では、欧州宇宙機関(ESA)が運用中の地球観測衛星「Sentinel-1」が、CバンドSARを用いて2017年8月~2022年3月に取得した画像データが用いられた。そしてDInSARを実装したソフトウェアで解析が行われ、GNSSおよび観測井戸のデータを用いた検証が行われた。

解析の結果、Consecutive DInSARで得られたデータは、観測井戸やGNSSのデータと整合していることが判明。また同解析技術とGNSSデータ間の速度誤差は1cm未満~数cmであり、また平均二乗平均誤差(RMSE)も1cm未満~数cmであることが明らかにされた。さらに、同解析技術による平均沈下速度は1.58cm/年であり、観測井戸とGNSSデータの速度誤差はそれぞれ0.02cm/年、0.90cm/年の範囲内だったという。また、RMSEはそれぞれ0.39cm/年、0.46cm/年の範囲内であり、誤差が非常に少ないことが示されたとした。

さらに、地表面における気圧の値を用いて、地下水位や地盤沈下の量と原因を計算する新しい計算モデルの定式化も行われた。その結果、対象地域の地盤沈下が地質構造に応じて変化することを明らかにした。

それに加え、Consecutive DInSARと観測井戸の相関性は観測地点の地質構造に影響される可能性があり、かつ浅い井戸の地層収縮は同解析技術の地表面変化と一致していることも確認され、地盤沈下のメカニズムも把握できたとする。

研究チームによると、Consecutive DInSARは今後、観測井戸の代替技術となる可能性があるという。同解析技術と衛星データを活用することで、政府や自治体は地盤沈下に対し、効果的かつタイムリーな対策を講じることができるようになるだけでなく、コストの削減につながる可能性もあるとした。また、地盤沈下の度合いや原因がわかれば、その基準値を設定したり、地下水の使用量を制限することなども可能となるというメリットもあるとしている。

研究チームは、同解析技術を活用することで、今後沿岸地域や過去に地盤沈下した地域など、洪水や浸水の危険性がある地域でも、人々が安全かつ安心に生活ができるようになることが期待されるとした。

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