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害虫「ハダニ」はイモムシの足跡を嫌う、京大が発見

2023年02月22日13時16分 / 提供:マイナビニュース


京都大学(京大)は、農場(圃場)における害虫であるナミハダニならびにその近縁種であるカンザワハダニが、チョウやガの幼虫(カイコ、セスジスズメ、ナミアゲハ、ハスモンヨトウ)の足跡を避けることを発見したと発表した。

同成果は、同大大学院農学研究科 地域環境科学専攻 生態情報開発学分野・修士1回生の金藤栞氏、同大学院農学研究科の矢野修一 助教、京都工芸繊維大学の秋野順治 教授らの研究グループによるもの。詳細は、2023年2月1日付の英国際学術誌「Scientific Reports」に掲載された。

ハダニは0.5mmよりも小さな虫で、約10日で世代が交代するため、爆発的に増殖しやすく、かつ進化が起こりやすく薬剤耐性を得やすい性質なため、農薬が効果を発揮できず、ほかの虫だけが死んでいったり、残留農薬が農作物に残る可能性などといった課題があり、農薬に頼らないハダニ対策が求められているという。

実際、自然界を見ると、ハダニが植物を食いつぶすといったことはほとんどなく、研究グループでも、捕食者であるアリやカブリダニがハダニを食べたり、その活動を抑止するなどで、生態系のバランスを保っていると考えきたという(実際、研究グループはハダニがアリの足跡に残る化学物質に反応し、それを避けていることを2022年に報告している)。

また、生物界においては同じ系統の食性のグループ(ギルド)が存在するが、肉食同士が互いを捕食する(ギルド内捕食)ほか、草食動物であっても、ギルド内捕食が行われることが知られているという。主に、大型の生物が、葉っぱをそこについている小さな生物ごと食べる「偶発的ギルド内捕食」がそれにあたるとされ、研究グループでは、10cmほどの大きさのイモムシ(チョウやガの幼虫)は、ハダニの卵がついた葉っぱであってもお構いなしに10分ほどで食べてしまう大食漢であり、ハダニからしてもイモムシと出会うことは災害レベルの話であるため、イモムシと出会うことを避ける術を有しているはずと予測。ハダニが定着場所を決めるときに、イモムシの存在を避けるかどうかの調査を行うことにしたという。


具体的には、インゲン豆の葉の半分に分類上の科が違う4種のイモムシ(カイコ、セスジスズメ、ナミアゲハ、ハスモンヨトウ)を歩かせ、歩いていない残り半分と、どちらにナミハダニまたはカンザワハダニのメスが定着するかの調査を行ったという。メスの成虫を選んだのは、ハダニの居場所を決定するのがメスの成虫であるためで、メスは脚にある匂いセンサで植物を吟味して、栄養状態の良い葉っぱを見つけることが知られているためだという。

実験の結果、多くのハダニが4種類のどの足跡であっても避けることを確認。中には、みかんの仲間の葉っぱを食べるナミアゲハと、その葉っぱを食べないナミハダニという自然界では起こらない組み合わせであっても、避けていることも判明。また、その忌避効果についてカイコを使って調べたところ、2日以上持続することも確認したという。

これを踏まえ、研究グループではイモムシに共通するモノを避けていることが考えられたとし、その正体を探る調査も実施。カイコの足跡を調べたところ、化学物質の採取に成功。ハダニは、この物質を感知して避けているという判断に至ったという。

ただし、この化学物質は現時点では分析中であり、具体的にはどういったものであるかはまだ分かっていない。今後、詳細な分析により特定されれば、イモムシ由来の同成分を使って農作物からハダニを追い出すことができる可能性がでてきたことから、研究グループでも、特定できた後は、成分を合成して作成し、その効果測定を試したいとしているほか、将来的にはその成果を踏まえ、農薬メーカーなど、商用展開をしてくれるパートナーと協力して実用化を進めていきたいとしている。

また、今回の研究成果について研究グループでは、草食性動物が肉食性動物から身を守る行動を取ること自体は常識だが、それは不十分な理解で、より小さな草食性の生き物は偶発的ギルド内捕食を防ぐ術を備えていることが示された例と説明するほか、薬剤耐性が強いハダニであっても、自然界由来の成分を活用することができれば、農作物から追い出すことができる可能性が示されたとしており、これまでのこうした2つの常識をアップデートできる可能性が示されたとする。特に、忌避剤としてのイモムシの足跡物質の活用は、もしハダニがそれに対する耐性を獲得した場合、イモムシと出会う確率が高まり、ギルド内捕食が生じる可能性が出てくるため、耐性が進化しにくいと考えられるとしている。なお、研究グループでは、「自然界で生き物のバランスを保つ目に見えない力は、まだ分かっていないだけで沢山ある可能性がある。それを見つけて、上手く活用することができれば、持続可能な農業の実現につながることが期待される」とコメントしている。

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