2023年02月18日08時00分 / 提供:マイナビニュース
●『M-1』『キングオブコント』王者がずらり
TBS系で金曜夜に放送されていたネタ番組『ザ・ベストワン』が復活し、『ザ・ベストワン~今、一番見たいネタ国民投票SP~』と題して、きょう18日(19:00~ ※関東は18:51~)に放送される。『M-1グランプリ』や『キングオブコント』のチャンピオンらがずらりと並ぶ豪華なラインナップが実現した。
そんな今回の放送を、原点に立ち返ると位置づけるのは、総合演出の藪木健太郎氏(Sunny Pictures)。収録の手応えや、特番・レギュラー両方の実績を積んできたことのメリット、さらに、お笑いネタ番組が増えていく中での番組の強みなどを聞いた――。
○■視聴者の声が「わりとプラスに働いた」
同番組は、2020年3月に特番としてスタートし、21年10月から1年間レギュラー番組で放送。特番で復活する今回は、視聴者にアンケート調査した「今一番披露してほしいネタ」がテーマだが、その狙いについて、「芸人さんたちが持っているネタは有限の資産なので、やはりレギュラーで放送回数が増えると、ネタの内容も普通のネタ番組に近い感じになってきたような気がしていたんです。ちゃんとリブランドして、当初の“すごいメンバーが集まってベストワンと言われるネタを披露する”というところに立ち返ろうと思いました」(藪木氏、以下同)と明かす。
その結果、ナイツには「最新の“ヤホー漫才”が見たい」に投票が集まったが、「ヤホー漫才は本人たちはやり尽くした感があって、最近は全然やっていなかったのですが、投票でそういう声があると、『そうか、ちょっとやってみます』となって、題材を新しくして作ってくれたんです」と、新ネタをおろすことに。
また、フットボールアワーに関しては、「例えツッコミがいっぱい入ってる漫才」というリクエストがあったが、「世間の方にはバラエティでの司会やトークで後藤(輝基)さんにそういうイメージがあるみたいなんですけど、実はフットさんは普段、漫才中に“例えツッコミ”をあんまり入れてないんです。でも今回受けてくれて、以前この番組でやっていたお題に応えなきゃいけない『ザ・ベストワンテイク』のような形にハマっていった漫才になって、他とは違う形に仕上がっています」とのことだ。
このように、視聴者の声を柔軟に取り入れることで、「自分たちの手札から『これが一番合うんじゃないか』というのが出てくるので、わりとプラスに働いたかなと思いますね」と、芸人たちにとって新たな気付きの機会にもなったようだ。
○■特番のメリットとレギュラーの経験値
特番に戻ったことで、これまでは他のディレクター陣と手分けしていた芸人との打ち合わせも、「去年の11月の末くらいから、ほぼ全員と顔を合わせて、『こんなコンセプトなんです』という話をしっかりできました」とメリットが。また、「放送回数が少なくなった分、豪華な分厚いメンバーが集まってくれました。放送が3時間あると、『この時間はちょっと苦しいかも…』みたいなことがあったりするんですけど、今回は切れ目なく楽しんでいただけると思います」と胸を張る。
このため、若手に関しては別枠で、2022年の『M-1グランプリ』『キングオブコント』で準決勝以上に勝ち進んだ芸人を対象とした視聴者アンケートを実施し、関東・関西でそれぞれ得票数1位となった計4組が登場する。
一方、レギュラー放送を経験したことで、「若い人たちと触れ合う機会が多くなって、やっぱり幅が広がりました。特にコントで10年目前後の人たちの層の分厚さが知れたのは、すごく良かったですね。僕が若かったらユニットを組んで新しい番組を作りたくなるくらい(笑)、若い芽が出てきているのをすごく実感できました」と、情報収集が向上。
さらに、「ネタ番組は、芸人さんが自信のあるネタを良い舞台でどう発表するかというのがテーマにある中で、先ほど挙げた『ザ・ベストワンテイク』だったり、『生放送でこういうことができるな』とか『コントだったらこういう切り口で見せることができるな』と、コーナーをいろいろ考えることができたので、それもレギュラーでやった意味が非常にあったなと思いますし、今後、特番の中で生きていくと思います」と、大きな経験値になった。
○■『レッドシアター』以来のジャルジャル&ロッチ
今回は、ジャルジャルとロッチがコラボレーションしてコントを披露する。藪木氏がこの2組とコントを作るのは、演出を担当していた『爆笑レッドシアター』(フジテレビ)以来、12年ぶりだといい、「取り巻く環境やキャリアも変わったし、放送するテレビ局も変わったけど、リハーサルを重ねて仕上げていく感じは全く変わりませんでした。ジャルジャルとロッチ、それぞれの色とも違うコントに仕上がっているので楽しみにしてください」と呼びかけた。
そして、笑福亭鶴瓶、今田耕司に加わるゲストMCとして、中条あやみが参戦。今田とは『アナザースカイ』(日本テレビ)でタッグを組んでいるだけに安定のコンビネーションだが、鶴瓶も含めて3人の大阪の実家が近所だということが判明し、「すごく相性が良かったです」とハマった。2人につられた中条は、番組の趣旨説明で「漫才」という言葉に思わず関西弁のイントネーションが出てしまうなど、意外な一面を見せている。
最近は、TVerのリアルタイム・見逃し配信も視聴ツールとして定着してきたが、「ネタ番組はスマホでも見やすいですし、一方で大きなテレビで見ても楽しめる画面づくりもしているので、1人でどこでも見てもいいし、家族そろってでもいいし、ぜひ見ていただければと思います」とアピールした。
●「この番組だったら、面白くできるな」という気持ちに
3年前に番組が立ち上がって以降、各局で新たなネタ番組やお笑い賞レースが誕生しているが、そうした中での『ザ・ベストワン』の強みについて、どのように考えているのか。
「ネタ番組って、4~5分を芸人さんに渡すという構造は同じなので、見た目にそんなに違いは出ないと思うんです。でも、僕らが一番気にしているのは、“芸人さんはこれをやると乗らないよね”といったことに敏感に反応しながら番組を作るということ。そうすることで、芸人さんが『この番組だったら、面白くできるな』という気持ちをうまく出してもらえるような作り方は、できているのではないかと思います」
今回、ひと目で豪華だと分かる第一線の芸人たちをこれだけラインナップできたのは、その精神を裏付けていると言えるだろう。
また、「大御所やベテラン、中堅の上の人から、若い人たちも分け隔てなく出る番組という状況にしておきたいと思っています。いろんな人がネタを披露して、ウケて帰っていくという真っ当なことなんですけど、それがちゃんとできる場所は実は数が少ないと思っているので、そういう“ど真ん中”を目指してやっていきたいですね」と意気込んだ。
○■テレビ局から相次ぐ制作者の退社「新しい風が吹けば」
そんな藪木氏は、昨年3月末でフジテレビを早期退職し、フリーになって1年が経過しようしているが、ここまでを振り返って、「継続でやらせてもらう仕事があるので、普通に会社を辞めて独立するより順調に来ていると思います。それに加えて新しいところともできていて、これまで接点のなかった地方局の人たちともいろいろやってみて、幅が広がってきていますね」と実感。
この週末は、『ザ・ベストワン』に加え、『陣内バカリの最強ピンネタ20連発SP』(19日16:05~、カンテレ・フジテレビ系)、『いいね! 偉人のサムネイル』(18日・25日23:30~)、中京テレビ)と単発番組が集中しており、「やっぱりフリーになると波がありますね(笑)」と語る。
この1年で、テレビ東京から上出遼平氏(『ハイパーハードボイルドグルメリポート』など)、日本テレビから橋本和明氏(『有吉の壁』など)、テレビ朝日から芦田太郎氏(『あざとくて何が悪いの?』など)が退社し、新たな道に進んでいるが、「同じバラエティでも武器が違うので、ライバルが増えたという感じではないですが、何をやるのかは気になります(笑)。僕は年長のほうなので、若いうちにいろいろできていいなと思いながら、負けんぞという気持ちもあります」と意識しているそう。
その上で、「フジテレビから共同テレビに出向して、各局の企画を選ぶ基準が、思っていた以上に違ったんです。この局ではウケなかったのに、あの局ではウケるということがあって、何を求めているかが全然違う。だから、自分の局でできなかったものを諦めなくて良くなるので、それは非常に大きなメリットだと思うし、新しい風が吹けばいいなと思います」と前向きに捉えた。
●『ザ・ベストワン~今、一番見たいネタ国民投票SP~』(TBS系、18日19:00~ ※関東は18:51~)出演芸人は、EXIT、ウエストランド、空気階段、ジャルジャル、陣内智則、テンダラー、東京03、ナイツ、南海キャンディーズ、錦鯉、NON STYLE、爆笑問題、ハナコ、ハライチ、ビスケットブラザーズ、フットボールアワー、ミキ、吉本新喜劇ユニット、ロッチほか(※五十音順)
●藪木健太郎1971年生まれ、三重県出身。早稲田大学卒業後、95年にフジテレビジョン入社。照明部から02年にバラエティ制作に異動して『アヤパン』『力の限りゴーゴゴー!!』『笑う犬』『新堂本兄弟』『爆笑ヒットパレード』などを担当。『爆笑レッドカーペット』『爆笑レッドシアター』『うつけもんシリーズ』『THE MANZAI(第2期)』『ENGEIグランドスラム』などのネタ・演芸番組を立ち上げ、18年から共同テレビジョンに出向。『ザ・ベストワン』『賞金奪い合いネタバトル ソウドリ~SOUDORI~』(TBS)、『NHKだめ自慢~みんながでるテレビ~』(NHK)、『#っぽいウタ』(中京テレビ)、『両親ラブストーリー~オヤコイ』(読売テレビ)、『ザ・マスクド・シンガー』(Amazonプライム・ビデオ)などを制作し、22年3月末で出向元のフジテレビを退社。メイクスマイルカンパニー「Sunny Pictures(サニー・ピクチャーズ)」を設立し、番組・映像・イベント制作などを手がける。