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浜ホトが世界最大級のフォトダイオードアレイを開発、HL-LHC実験に向け量産体制も確立

2023年02月15日18時48分 / 提供:マイナビニュース

浜松ホトニクス(浜ホト)は2月14日、欧州原子核研究機構(CERN)の大型ハドロン衝突型加速器(LHC)を改良して行われる「高輝度LHC(HL-LHC)実験」における「CMS実験装置」の開発に向け、高放射線耐性であると同時に、高エネルギー物理学用途では世界最大サイズとなるフォトダイオード(PD)アレイ「8インチピクセルアレイディテクタ」を開発し、量産体制も確立したことを発表した。

また併せて、2月27日から同実験装置のために本格供給を開始し、2025年夏頃までに合計2万7000個を納入する予定であることも発表された。

2012年にヒッグス粒子を検出したことなどで知られるCERNのLHCの建設と運営には、日本のおよそ30ほどの研究機関や企業が参加しており、浜ホトも参加している。同社は、LHCの装置として、粒子の飛跡検出器のシリコンストリップディテクタ、放射線のエネルギーを測定するカロリーメーターとして光電子増倍管とアバランシェフォトダイオードを開発し、納入している。

そしてCERNでは現在、ヒッグス粒子のさらなる精密測定や、未知の物質であるダークマターの検出などに向け、陽子(陽子はハドロンの一種)同士の衝突頻度を従来のLHC実験より高めたHL-LHC実験を実施するための準備が進められている。同実験では、衝突頻度を高めることで、より多くのデータを得ることが可能となるという。しかし、発生する放射線のエネルギーも同時に高くなってしまうため、エネルギーを測定するためのPDアレイには高い放射線耐性が要求されるほか、大面積化も求められていたことから、同社は高放射線耐性かつ大面積のPDアレイの開発に取り組んできたとする。

そして今回、ガンマ線や電子などの放射線のエネルギーを測定する、高エネルギー物理学用途では世界最大クラスとなる高放射線耐性のPDアレイとして8インチピクセルアレイディテクタの開発に成功したという。

PDアレイは、放射線が入射すると感度が低下してしまう。この感度の低下は高電圧をかけることで抑制できるが、今度は破損する危険性を高めることになる。初期宇宙の状態を再現するためのHL-LHC実験において、同製品を透過する放射線の量は1cm2あたり中性子換算で1.5京個分にも上るが、このような過酷な放射線環境下においても特性を維持することが求められていたという。

これまで同社では、800Vの電圧をかけても動作する、高放射線耐性な6インチウェハベースの大面積のPDアレイの試作には成功していたが、デッドスペースやコスト削減のため、CERNからはさらなる大面積化が求められていたとする。

そこで今回、より面積の大きいウェハを材料として使用することを目指し、8インチウェハに対応した製造装置を新たに導入するのと同時に、これまで培ってきた光半導体素子の製造技術を応用し、製造条件を一から見直し、ウェハ上に形成する膜の厚さや不純物の濃度などの均一性を高めることに成功。その結果、従来と同等の高放射線耐性ながら、PDアレイの面積の大型化(従来比約2倍)が実現されたとしている。

また、PDアレイのすべてのチャネルを検査することが可能な専用の検査装置を新たに立ち上げることで、HL-LHC実験で求められる高放射線耐性、大面積化に対応した同製品の量産体制も確立できたとする。

なお、同製品は、HL-LHC実験におけるCMS実験装置に向け、2月27日より本格供給がスタートする予定で、2025年の夏頃までに2万7000個を納品することで、ヒッグス粒子の精密測定やダークマターの探索などの新たな研究に貢献できることが期待されると同社では説明している。

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