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2nm以降の高性能ロジック半導体向けトランジスタ材料、産総研などが開発

2023年02月14日16時45分 / 提供:マイナビニュース


産業技術総合研究所(産総研)と東京都立大学(都立大)は2月10日、「三テルル化二アンチモン(Sb2Te3)」/「二硫化モリブデン(MoS2)」のファンデルワールス界面の作製に成功し、「n型MoS2トランジスタ」の性能向上に貢献する接触界面抵抗の低減(低コンタクト抵抗)技術を開発したことを発表した。

同成果は、産総研 デバイス技術研究部門の張文馨主任研究員、同・畑山祥吾 特別研究員、同・齊藤雄太研究グループ付、同・岡田直也主任研究員、同・入沢寿史研究グループ付、都立大の宮田耕充准教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、材料科学や電子および磁性材料の工学などを扱う学術誌「Advanced Electronic Materials」に掲載された。

日本の国策半導体会社Rapidusが量産を目指す2nmプロセスの先となるBeyond 2nmを実現する技術として、「遷移金属ダイカルコゲナイド」(TMDC)のトランジスタへの導入が期待されている。

TMDCは、適度なバンドギャップを保ちつつ化学的に安定な層状構造を有し、原子層厚においてシリコンよりも優れた半導体特性を示す2次元結晶構造を持つ物質として知られているためだが、そうした2次元材料トランジスタの実用化には、技術的に克服すべき課題がまだ多く残されているのが現状である。そこで研究チームは今回、代表的なTMDCの1つであるMoS2を用いたトランジスタを作製し、そのコンタクト材料としてSb2Te3に着目することにしたという。

Sb2Te3は、多数の原子が層状になっており、層同士はファンデルワールス力で弱く結合している物質で、ビスマス(Bi)やアンチモン(Sb)のように0.2~0.3eVという狭いバンドギャップを有し、半金属に似た特性を示すほか、融点は約620℃と、Biなどと比べて高いことも知られている。これらの特徴は、同物質がMoS2との間にファンデルワールス界面を形成し、フェルミ準位のピンニング現象を抑制する可能性があることを示唆するものだという。このことから研究チームは、同物質を利用することで、高い耐熱性を維持したまま低コンタクト抵抗を実現できることを考察したとする。


今回の手法としては、量産化を見据え、スパッタリング法を用いて単層MoS2上にSb2Te3を成膜。透過電子顕微鏡(TEM)を用いて、Sb2Te3/MoS2の接触界面にファンデルワールス界面が形成されること、どちらの物質も良好な結晶性を持つ層状構造になっていることが確認されたことから、2つの物質の原子配列が一致していることが示されたとする。

一般的に、集積回路の配線工程では400℃以上の耐熱性が実用化の重要な要件となることから、このSb2Te3/MoS2積層膜構造の耐熱性を調べたところ、ラマン分光法により、熱処理前後にMoS2単層構造が維持されていることが確認されたとするほか、断面TEM画像より、Sb2Te3/MoS2積層膜構造は、450℃の熱処理を経ても良好な結晶性とファンデルワールス界面を維持していることも確認されたとする。

さらに、Sb2Te3/MoS2ファンデルワールス界面形成が、トランジスタ特性にどのような影響を与えるかを調べたところ、n型トランジスタ動作を示しつつ、SbやNi、Wなどをコンタクト材料として使用した場合と比べて、Sb2Te3電極を有するトランジスタの駆動電流は4~30倍ほど向上することがわかったという。

このような駆動電流の増大はコンタクト抵抗の低減が主要因であると考えた研究チームが、実際にSb2Te3電極を有するMoS2トランジスタのコンタクト抵抗値を調べたところ、Sb電極を使用した場合のそれと比べて1桁程度低く、またこれまでの世界最小と報告されていたBi電極を使用した場合のコンタクト抵抗値とも遜色のない値であることが判明。SbやBi電極は半導体製造の後工程における高温に耐えられないため、半導体デバイスへの使用には適さないという課題があったが、今回のSb2Te3電極は400℃以上の耐熱性を示しつつ、Bi電極に匹敵する低いコンタクト抵抗値を実現できることが示されたことから、研究チームではBeyond 2nm世代のロジック半導体の実現に寄与するものとなると説明している。

なお、今後については、n型とp型のTMDCトランジスタを直列につないだCMOSを作製することを目指すとしており、その実現のためにも、n型MoS2トランジスタだけでなく、p型TMDCトランジスタにおける低コンタクト抵抗技術の開発が求められるとしている。今回のSb2Te3コンタクト技術は、n型MoS2に対して最適な特性が示されたが、p型TMDCには別のコンタクト材料が必要となるためで、次世代ロジック半導体の実現に向けて、低コンタクト抵抗を有するTMDCによるCMOSの開発を加速させていく計画としている。

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