旬のトピック、最新ニュースのマピオンニュース。地図の確認も。

千葉大、命の危機を感じた瞬間などに時間がゆっくりと流れる謎の一端を解明

2023年02月14日16時25分 / 提供:マイナビニュース


千葉大学は2月13日、さまざまな表情画像の観察で生じる感情反応が視覚の時間精度(短時間に処理できる能力)に及ぼす影響を調べた結果、画像を観察することで感情反応が生じた際に物事がスローモーションに見えるという現象が生じることが、改めて確認されたことを発表した。

同成果は、千葉大大学院 融合理工学府の小林美沙大学院生、同・大学院 人文科学研究院の一川誠教授らの研究チームによるもの。詳細は、バーチャルリアリティや視覚芸術なども含めた知覚研究に関する幅広い分野を扱うオープンアクセスジャーナル「i-Perception」に掲載された。

交通事故の瞬間や高所から落下する瞬間などの突発的に生命の危機に関わるような窮地に陥った時に、物事がスローモーションのように見えたという体験をしたという話は枚挙にいとまがない。また、アスリートの集中力が極限まで高まり、いわゆる「ゾーン」と呼ばれるパフォーマンスが最大限に発揮できる状態に入った場合にも、同様の体験がよく報告されている。

このような体験を実験において再現することは容易ではないが、研究チームは、かつてさまざまな強度の感情反応や印象を引き起こす画像のデータベースを使うという実験を考案。そして、危険を感じた際にヒトの視覚の時間精度が上昇するという結果を、2016年に報告している。

しかし、この時の実験で用いられたデータベースの画像は風景や動物、事件などに関するもので、危険を感じさせる画像と安全な状態を示す画像との間で画像の色彩の特性が大きく異なっていたという。そのため、画像観察によって喚起された感情ではなく、提示された画像の色彩の特性の違いにより、視覚の時間精度が変動した可能性が指摘されており、色彩の特性が大きく変わらない画像を用いて感情を喚起することで、前回の研究成果を確認することが求められていたという。

そこで今回の研究では、感情喚起のために、さまざまな表情の顔画像を用いることにしたという。顔画像は、表情条件間での色彩や輝度の違いは小さいのに、表情によって観察者に多様な感情を喚起することが可能なためで、中でも怒りの表情画像については、危険な画像として感情を喚起できることが知られていたためであるほか、顔画像には、上下反転すると表情がわかりにくくなる「倒立効果」と呼ばれる特性があり、それを活用することによって、画像の特性をまったく変えずに喚起される感情を弱くすることが可能であるため、条件間の視覚の時間精度の違いが実験参加者の感情反応による効果であるとしたら、倒立した表情画像を用いた場合、表情画像間での時間精度の違いがほとんどなくなることが予想されるたためだとしている。


今回の実験で用いられた顔画像は、男女それぞれ2名の怒り、恐怖、喜びとなっており、フルカラーの表情条件の顔画像を1秒間提示した後、10~50ミリ秒の範囲で画像の彩度を70%低下させ、彩度変化が見えるのに必要な最短時間が計測されたという。

その結果、怒り、恐怖だけでなく喜びの条件でも、無表情条件より短い時間で彩度低下が認識されることが示されたとするほか、こうした表情条件間の違いは顔画像を倒立させた場合には見られなかったともしている。

感情反応には、興奮の度合い(ドキッと感じる程度)に対応する覚醒度と、好き・嫌いの度合いに対応する感情価の2つの次元があることから、さらに覚醒度の次元における感情反応の程度が、視覚の時間解像度に及ぼす影響も調べられた。具体的には、引き起こされる覚醒度の反応が大きいと予測される怒り、中程度と予想される悲しみ、小さいと予想される無表情の提示が行われ、視覚の時間精度が計測されたところ、視覚の時間精度は、覚醒度の水準に対応して高くなることが認められたとする。

これらの結果について研究チームでは、画像観察によって喚起される覚醒度に対応して、ドキッとするほど視覚の時間精度が高くなり、短い時間間隔の中で生じた出来事を認識しやすくなることを示していると説明している。

また研究チームによると、これらの結果は、画像の色彩特性ではなく、喚起された感情により、視覚の時間精度が上昇するという前回の研究結果を確認するものであるとしているほか、時間精度の上昇を引き起こすのはネガティブな強い感情に限定されないこと、特に覚醒度次元の感情が視覚の時間精度を上げる効果が大きいことを示すものであるとしている。

なお、今回の研究から、覚醒度が高まるほど視覚の時間精度が高まることが示されたことから、今後、交通事故のような危険な場面や、アスリートがゾーンに入った時などにおける物事がスローモーションに見える現象の解明に向けて一歩前進できたものと考えられるとしている。

続きを読む ]

このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

ネタ・コラムカテゴリのその他の記事

地図を探す

今すぐ地図を見る

地図サービス

コンテンツ

電話帳

マピオンニュース ページ上部へ戻る