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『オモウマい店』北山流川D、「人見知り」だからこそ起こる奇跡の出会い “人と人”が向き合う現場

2023年02月14日06時00分 / 提供:マイナビニュース

●本気で怒られたと思った鈴子ママの「騒ぐじゃねえ」
注目を集めるテレビ番組のディレクター、プロデューサー、放送作家、脚本家たちを、プロフェッショナルとしての尊敬の念を込めて“テレビ屋”と呼び、作り手の素顔を通して、番組の面白さを探っていく連載インタビュー「テレビ屋の声」。今回の“テレビ屋”は、中京テレビ『ヒューマングルメンタリー オモウマい店』(日本テレビ系、毎週火曜19:00~)の北山流川ディレクターだ。

破格の値段や量の料理もさることながら、何より個性爆発の店主たちのキャラクターが魅力の同番組。時には、スタッフが家族同然に溶け込む姿も名物だが、意外にも北山Dを含めて「ほとんど全員人見知り」なのだという。そんな彼らが、なぜ店主と打ち解け、奇跡の出会いを起こすことができるのか。

そして、このインタビュー中にまさかのあの人が――。

○■おばあちゃんと同じ名前で取材OK

――当連載に前回登場した元テレビ東京の上出遼平さんが、「『オモウマい店』で“これは最高だ”と思ったシーンを撮った男なんです。それは、取材した店のOAをその店で一緒に見るということ。これって、誠実に番組を作ってる人間じゃないと絶対にできないことなんですよね。それを流川くんは何の気なしにやったらしいんです。この抜けた感じもすごいし、かなりリスペクトしています」とおっしゃっていました。

初回に放送させていただいた「珉珉」(茨城・日立市)さんというお店なんですけど、本当に狙ってたわけではないんです。どういうふうに見てくれるかなということで、総合演出の加藤(優一)と竹内(翔)と話して、「じゃあ、一応カメラ持ってちょっと行ってみるか」という感じでした。元々取材NGからご縁でOKを頂いたお店だったので、ご迷惑をかけてないかなと…心配しながら行ったんですけど、自分の店のOAを見るのはこんなふうに映るんだと思いました。

――お客さんがサービスを断ろうとするとママの鈴子さんが「騒ぐじゃねえ」と怒りだす姿は、初回放送の一発目としてインパクトとともに、番組の方向性が出ましたよね。『オモウマい店』の元になった『PS純金』のシリーズでも、OAを一緒に見る様子を放送するというのはやっていなかったのですか?

放送が終わった後にちょっと手伝いに行くというのはありましたけど、一緒に見るのはなかったので、初めてでした。

――「珉珉」さんは、どのように出会ったのですか?

番組が始まる3カ月前ですね。僕は茨城・千葉が担当エリアで、日立という街が栄えていそうだと思って行ってみて、路地裏を歩いていたんですよ。そしたら「珉珉」という看板がいい味を出していて、扉を開けてみたらそこに鈴子さんがいたんです。で、ご飯を食べさせてもらおうと思って、「五目焼きそばください」って頼んだら、「ダメだよ。鶏(焼きそば)にしろ」と言われて、すぐ「はい」って答えたら、それが好印象だったみたいで。

食べさせてもらったらおいしくて、夫の店主さんも人柄が良さそうだったので取材交渉したんですけど、当時創業53年で1回も受けてないって言われて。1回映画の舞台になったことがあるんですけど、それにも鈴子さんたちは出てなくて、ダメかと思って「お名前だけ聞きたいです」と言ったら「鈴子」とおっしゃって、「僕のおばあちゃんも鈴子なんですよ」と言ったら意気投合しまして(笑)

――何が決め手になるか分からないもんですね(笑)

ただ、その後の取材中に、「やっぱり嫌だ」「うちじゃなくていいから」と言われてしまったんです。それでも、「おふたりのことが好きだから、これを伝えたいんです」とお願いしたら、改めてOKをもらったという感じですね。

○■「取材しに行くという気持ちはやめなさい」

――まず取材の流れについて伺いたいのですが、担当エリアを割り当てられてリサーチが始まるのですか?

初期はそれがあったんですけど、今はどこでもよくなってます。結構自由で、ディレクターが面白そうだなと思ったお店があれば、どこに行って何を撮ってもいいんですけど、決まっている収録日までには面白いものやいい店主さんと出会ってきてね、という感じです。

――面白そうな店というのは、まずネットで調べるのですか?

最初はネットで調べることが多いですけど、1軒気になるお店があったら、その町に3日くらいいるんですよ。そこでとにかく聞き込みをしたり、ちょっと外観が良さそうだったら入って食べてみたりして、1日4~5軒食べ歩いてお話を聞いて、出会いを待つという感じですね。

――担当エリアを決めないと、ディレクター同士のかぶりはどうやって回避しているのですか?

いや、誰がどこに行ってるのか、全然知らないんですよ(笑)。OAで見て「川添さん、ハワイ行ってるんだ」とか、「同じホテルに昨日泊まってたよ」みたいなことも本当に結構あって。

――そうすると同じお店に行ってることもありますよね。

僕が行ってNGだったお店に他の子が行ってOKだったことも、その逆もあります。それは店主さんとの相性とか、「駐車場の白線が薄い」「店の前にお花がある」といった切り口とかで、本当にパズルがハマるような感じなんです。

――ディレクターさんと店主さんが“人と人”で向き合ってることを象徴する話ですね。でも、店前にお花が飾られていると、みなさん「店前にお花が飾られているお店はオモウマい?」の川添Dに一報入れますよね。

そうですね。一応許可取らないといけないなと思って(笑)

――いいお店と巡り合うために相当回られていると思いますが、最長で見つからなかったのはどれくらいですか?

30軒でようやく1軒見つけたというのがありました。

――「このお店は行ける」という手応えはどんなところで感じるのですか?

『オモウマい店』ってドキュメンタリーなので、第三者目線の番組なんですけど、そこに巻き込まれていくスタッフがいて、主観と客観が混同する瞬間があるんですよ。そこで、「今、振り回されてるな」と思ったときですね。“撮りに行ってる”じゃなくて、“映ってるな”と感じたときに「行ける」と思います。やっぱり、自分が計算できてないと思ったときのほうが撮れ高があります。

――よくテーブルに置いていたハンディカメラをガサッと持って撮り始めるシーンがあるじゃないですか。あれはまさに、計算できないことが起きた瞬間なんですね。

そうですね。あとは、店主さんそれぞれに哲学みたいなものがあって、それが話を聞いているときにうまく言葉になって出てくると、VTRの最初に出る「オモウマい! ◯◯なお店」ってキャッチになるので、そこが決まる瞬間があると、いいVTRになるなと思います。

ちょっとすいません。緊張で汗が止まらなくて…。

――どうぞどうぞ拭いてください。お店を取材するときも、かなり緊張されるほうですか?

そうですね。

――鈴子ママは圧がすごそうなので、より緊張するのでは。

最初に「騒ぐじゃねえ」って言われたとき、本気で怒られたと思って、後で改めて謝りに行きましたから(笑)。でも、それがみんなに言ってるんだと気づいたときに、この人の哲学だと思って、いいVTRになりそうだなっていう感覚です。自分が巻き込まれたことが他のところでも起きていたら、その方の本質だと思うので。

――『オモウマい店』の取材で特に苦労されるのは、どんな点ですか?

名古屋が起点なので、移動がやっぱり大変ですね。インサート(物撮り映像)を撮ってくれるカメラマンさんに、「移動距離はもう地球何周もしてる」って言われました。

それは身体的な苦労ですが、店主さんたちとどう向き合えば良いのかというところは、一番気をつかいます。最終的には家族のようになるんですけど、仲良くなりすぎてもいけないと思っていて、ディレクターと取材対象者という関係は崩さないという線引きは意識してますね。そこが崩れちゃうと、どんどん内に入ったVTRになっちゃうので、あくまでも客観を守るというところが、難しいです。鈴子さんで言うと、お年玉とかお小遣いとか渡そうとしてくるので、それは絶対に受け取らないようにしています。

――ただ、普通の番組より入り込みすぎるところが醍醐味でもあるので、そこのさじ加減も難しいところですよね。それにしても、本当にディレクターの皆さんが家族のように溶け込むのがいつもすごいなと思っていて。何か共有されているノウハウはあったりするのですか?

それが全くないんですよ…。ただ、演出の加藤、竹内からは「取材しに行くという気持ちはやめなさい。会いに行くという感覚でいなさい」というのを徹底されています。だから、お店に着いたらカメラを置いちゃうし、話を聞くときもカメラを通して相手を見るんじゃなくて、腰くらいまでカメラを下げて目を見ています。変な画角になってるかもしれないけど、だんだんそこからでも撮れる感覚が分かってきました。

――新人の子が入ってきたら、いつも教えることはあるのですか?

「身を任せなさい」ということですかね(笑)。それと、取材させていただいている方の何が素敵なのかをまず考えるということ。何が尊敬できて、すごいと思ったのかを一番大事にしていれば、面白いというのは後でついてきますから。そうやって店主さんを好きになると、興味がわいてくるんです。どんな過去があって、何で大盛りになったのか。そうやって取材を重ねていくと、尊敬できる先生のような人たちが全国にいるという感じになりました。

――取材最終日の別れ際に、店主さんに「結婚式呼べよ」と言われることがよくあるじゃないですか。北山さんは、やはり呼びたいですか?

そうですね。スピーチとかしてもらいたいですよね。1個のテーブルが全員店主さんだったり、お色直しで再入場するときに店主さんたちと手つないで出てくるとか、そんなことができたらうれしいです。

――その様子をカメラに撮って、またOAになるところを見てみたいです(笑)

●勝手に仲良くなったと思うと一番失敗する
――やはりこの仕事をするようになって、普段の人との接し方も変わってきた部分はありますか?

僕、めちゃくちゃ人見知りなんですよ…。だから緊張してすごい汗かくんです。でも、毎週毎週、トゲがあっても優しい人たちと過ごすようになって、嫌なやつだなと思ってた人も、見る目をちょっと変えるといいところがあるな、とか思うようになりました。

――あんなに人と接する『オモウマい店』のディレクターさんが人見知りとは、意外すぎます。

いや、ほとんど全員人見知りだと思います。片桐さん(※)とか、全然しゃべらないですし。

(※)…中華料理屋「味のイサム」(埼玉・羽生市)のあまりの忙しさに、店の手伝いをしながら取材し、店主家族を岐阜の実家に招待し、一緒に箱根旅行もしたディレクター。

――たしかに、日テレの特番でサンシャイン池崎さんと対談したとき、ものすごい人見知りっぷりを発揮されていました。

でも、人見知りだからこそ、店主さんと打ち解けて仲良くなると、視聴者の方が微笑ましく見てくださっているのかもしれないですね。気にしいというか、心配性なところもあると思います。だから、仲良くなるためにカメラを持たずに通うこともあるし。自分が勝手に仲良くなったと思って距離を詰めるのが、一番失敗するじゃないですか。

――いきなり詰めてこられたら引きますもんね。そういうスタッフさんを集めてる感じもありますか?

自分で言うのもアレですが、いいやつだなと思う人が入ってくる感じですね。総合演出も人見知りなので、新しいADさんの面接でもほとんど会話がなくて、「唐揚げ好き?」とか聞いて、「あの子は優しいね」って入ってくる気がします。
○■足を使うからこそ実感する番組の影響力

――取材が終わると編集に入りますが、そこで意識されるのはどんなことですか?

これはもう引き算をしていくということですね。ナレーションを入れて、何の料理かを説明して知ってもらった上で実物を見せるのがオーソドックスな編集だと思うんですけど、『オモウマ』だといきなり料理がバン!って出てくるところから見せて、「何これ? 何これ?」というのを面白がる。その突発感や引き算をしたことによって生まれる臨場感を、すごく大事にしています。

あと、ハサミを入れないほうがいいという感覚なので、どれだけ長いカットでも見られるんだったらそのまま見せちゃおうってなります。徳島の「たかはし」さんというお店を紹介したんですけど、チャーハンが普通盛りで19杯分くらい入ってたんですよ。普通ならご飯を盛る画を十何回も見られないと思うんですが、「見れる見れる」ってなって、そのまま入れたんです。素材をあんまり料理するより、そのままが一番面白いという考えがありますね。

――「味のイサム」の回でも、花火大会にみんなで繰り出して、屋台で何買ってくるか決まらない様子を延々と流し続けたじゃないですか。あれは本当に衝撃でした。

あれはすごかったですよね。たしか、片桐さんもオフライン(仮編集)では入れてなかったんじゃないかな…。

――総合演出の判断で入れることもあるんですね。

この前放送した、ハワイの夕日が落ちるときのグリーンフラッシュの撮影に失敗したら、ディレクターとしては隠したいんですよ。本来はミスなのでなかったことにしたいんですけど、総合演出の2人がADのちっちゃな映像も撮影してきた素材から全部見てるんで、担当ディレクターが気づかない面白いカットが入ることが結構あるんです。

――1回あたりの撮影素材の量は人によって違うと思いますが、北山さんの場合はどれくらいですか?

僕の場合は自分の手元のカメラと、別に1個置いてるくらいなんで、そんなに何カメも回さないんですけど、それでも128GBのSDカード十何枚は行きます。そうすると、200時間分くらいですかね。みんなの素材は全部ハードディスクに入れて残してるんですけど、その棚はもうとんでもないことになってます(笑)

――それは全部見返すのですか?

そうですね。画だけじゃなくて、お店にいたときには気づかなかった音も入ってたりするんですよ。「裏でこんな面白いこと言ってたんだ」って気づくことがあるんです。同じ瞬間でカメラが違うと拾ってる音もあるので、全部聞きますね。

――そんな作業をして、名古屋で編集して、東京のスタジオ収録に出すんですね。

だいたい木曜日が収録なんですけど、日曜日にインサートを撮って、月曜日に素材チェックして編集に入って、火曜くらいに1回長い形になって、水曜に削って直して、木曜の朝に名古屋を出るという感じです。ギリギリまでやってるんで、だいたい8時半の新幹線に乗らないと間に合わないんですけど、8時19分くらいまで編集してダッシュで行くのが毎回で、新幹線でちょっと休んで。

――あのVTRができるまでに、そんな大変な作業をされていたとは…。それを続けられる原動力は何ですか?

テレビの影響力ってこんなにあるんだというのを実感できるので、やってて楽しいですね。それと、向き合ってるお店の人たちが楽しみにしてくれているのが大きいです。「面白いもん作ってやるぞ!」というより、「店主さんが喜んでくれるかな」とか「ちょっとここイジるけど許してくれるかな」とか思いながら作って、放送が終わった後に電話する瞬間が一番楽しいんですよ。「良かったよ」と言ってくれるだけで、全部報われます。

――OA後に大勢のお客さんが集まる光景に、ヒロミさんも「やっぱテレビってすげえなあ」とよくおっしゃいますが、改めて影響力を感じますよね。

それで忙しくなってしまうのは申し訳ないと思うときもあるんですけど、今まではグルメ番組を見て食べ物目当てに行くというのはあったと思うんですが、人に会いに行くってなかったじゃないですか。それと、取材中にいろんな街でカメラを回していると「オモウマい店ですか?」と声をかけられることもあって。足を使う番組だからこそ影響力を肌で実感できるのは、すごく楽しいですね。

――番組がスタートして4月で2年になりますが、番組の知名度が高まったことで、取材を受けてくれる感じに変化はありますか?

テレビに出たことがあるお店さんだったら、普通の番組ならレポーターが来て半日で全部の取材が終わるのが当たり前の中で、『オモウマ』は1週間通い続けるので、怒られたことも結構ありました(笑)。でも、最近は番組を理解してくださっている方が多いので、長くいても何も言われないようになりましたね。認知度が広がってきた中で、「うちは『オモウマ』に出るような店じゃないよ」と言う方も結構いらっしゃるんですけど、ご本人たちは気づかないんだなあと思います。

――あれ、本当に不思議ですよね。

だから、わざとものすごいサービスをやってないことの裏付けでもあるんです。お客さんが、「あ、やっと来た」とか「ここ出ると思ってたんだよ」というお店もよくあります。それと、ありがたいことに、取材NGでも「番組が嫌いだから」という理由は聞かないですね。

●「珉珉」最後の日「ちゃんと向き合って良かった」

――冒頭でも話題に出た「珉珉」さんが昨年末で閉店されたということで、2月14日にその密着の模様が放送されますね。

パパさんの腰が悪くてお休みされていたのですが、55年という節目で閉める決断をされて、2022年の大みそかをもってお店を引き渡すことにされたんですけど、それを決めて娘さんに言う前に、僕に電話をかけてくれたんです。「一番先に電話しなきゃいけないと思って」と言ってくれて。

――それは寂しい知らせでもありながら、うれしいですよね。

それですぐに会いに行って、今回は珉珉さんの閉店の物語というのを1時間やらせてもらいます。悲しいですけど、いつか絶対あることですし、そこにいかに向き合うかというのがこの番組の大事なところだと思うので、閉店の時間を一緒に過ごしました。

――『オモウマ』で紹介したお店が閉店するというのは、初めてですよね。

そうですね。でも、明るい2人なんで前向きに閉店されて。鈴子さんに「番組で放送したことで忙しくなってしまってすいません」という話をしたら、「そんなの関係ねえよ」「花が咲いて辞めるっていうのが、いいことだから」と言ってくださって、ちゃんと向き合って良かったなと思いました。

それと年が明けて、パパさんに「今年はどんな1年にしたいですか?」と聞いたら、「もう1回、鍋持って挑戦したいな」というのと、「『オモウマ』が長く続きますように」って言ってくれたんです。自分たちは引退されるけど、そんな日に『オモウマ』のことを思ってくださってるんだということがうれしくて、取材中めっちゃ泣きそうになりました。

――心に残る言葉をかけてくれるご夫婦ですよね。

本当にすごい2人なんですよ。年越しがお店を引き渡す瞬間なんですけど、何の計算もしてないのに24時の30秒前くらいにお互いを褒め合って、「鈴子ちゃんのおかげだね」「パパがナンバーワンだよ」と言った瞬間に年が明けたんです。改めて、このご夫婦のお店だったんだなという感じがして、すごいなと思いました。

――ドラマにも書けないような展開です。

実は僕らの日常生活の中にも、ドラマみたいなことは起きてるだろうなと思うんですけど、その瞬間を最後に見届けられたのが良かったですし、街の人にはやっぱりドラマがあるんだなと改めて思いました。

――この放送は、一緒にご覧になる予定ですか?

閉店についての内容なので、鈴子さんとパパの宏さんが「来てもいいよ」と言ってくれたら行こうと思っています。これからも引き続き顔を出して、元気をもらいたいです。いつかレシピを教えてくれるそうなので、それも楽しみにしています。
○■突如かかってきた電話の相手は――

――北山さんのお人なりも伺っていきたいのですが、テレビ業界を目指したきっかけは何だったのですか?

一人っ子で、子どもの頃はテレビを見ないと友達ができない時代だったんですよ。そこで、『めちゃイケ(めちゃ×2イケてるッ!)』(フジテレビ)とかの話題で友達ができて、救われていたんです。そこから、テレビの話題で友達ができるって、すごい力があるなと思って………あっ、鈴子さんから電話かかってきました!

――えっ!? 出て出て!

鈴子さん:るーちゃん元気?

北山D:今、取材を受けさせてもらってて、ちょうど鈴子さんの話をしてたんですよ。

鈴子さん:はっ!? どこに取材行ってんの?

北山D:僕が取材を受けてるんですよ。それで鈴子さんの話をしてたら電話かかってきて、すごいなと思いました。お元気ですか?

鈴子さん:どこの人がいるの?

――マイナビニュースと申します。いつもテレビで拝見しております。

鈴子さん:はじめましてー! ナイストゥーミーチュー~

――めちゃくちゃ元気ですね!

鈴子さん:センキューベリーマッチ! アイムベリーハッピー!

――「珉珉」さんの最後の日がとても素敵だったというお話を伺いましたので、放送を楽しみにしています。

鈴子さん:うちのるーちゃんをよろしくお願いしますねー。サンキューベリーマッチ! 今からパーマ屋さん行くから、お元気で。グッドラック!

――ありがとうございました!

――いやいやいや、『オモウマ』みたいな神展開が起きましたよ!

北山D:すごかったですね! 奇跡的なタイミングで(笑)

●世の中の感情を一気に動かせるのはやっぱりテレビ
――では、仕切り直しまして。『めちゃイケ』などバラエティをよくご覧になっていたのですか?

お笑いが大好きで、ずっとテレビを見ていたんで、仲間内で企画みたいなのを考えたり、誰かを笑わせたりするのが好きだったんです。でも、自分が表に出るような人間ではないと思っていたので、何かを考えて人を笑わせるとか、話題を作りたいと思ってテレビ局を受けたら、たまたま地元の中京テレビに拾っていただいて。

――とは言いながら、2016年の『M-1グランプリ』にアマチュアで出場されていますよね。

はい(笑)。高校生のときに「ハイスクールマンザイ」という大会があって、イオンで漫才するんですよ。

――営業みたいですね(笑)

それで「イオン賞」とか頂いたんですけど、僕は裏方になってテレビを作るんだという気持ちになって、当時の相方は今もピン芸人をやってます。いやあ、恥ずかしいっすね(笑)

――北山さんくらいの若い世代だと、学生時代は「テレビ離れ」というのを実感しませんでしたか?

大学生くらいになると、みんな見なくなりましたね。でも僕は、『ざっくりハイタッチ』(テレビ東京)とかよく見てて、学生寮に住んでたんですけど、そこにテレビ局を目指してる子がいて、やっぱりテレビが面白いんだなって気づかせてもらいました。その子は今、広島テレビにいるんですけど、切磋琢磨してやってましたね。

――YouTubeやサブスクが勢いを増す中で、地上波の魅力はどんなところでしょうか?

フジテレビの原田(和実、『ここにタイトルを入力』など)さんとか、若い年次が企画して撮ったものが「テレビ番組」という看板をもらって、こんなに多くの人目に触れることって、他にないと思うんです。しかも、リアルタイムで全員が同じ時間に見られるということにも僕は助けられたので、そこはやっぱり強みですよね。世の中の感情を一気に動かせるソフトはやっぱりテレビだし、これからもテレビであってほしいなと思います。

それにYouTubeだと、何かを深く追えなかったり、予算もなかったり、テレビじゃないと入り込めない場所もまだ全然あるし、そもそも日が当たらない可能性がある。だから、僕みたいな若輩者にも寛容に企画をやらせてくれて、評価が返ってくるというところでいうと、まだまだ新しいものが出てくるメディアなんじゃないかと思うんです。

○■「中京テレビ」という名前で一枚岩に

――最近はキー局で若手制作者の育成枠を設ける動きが出ていますが、中京テレビさんでも若いスタッフをどんどん登用していく感じがありますか?

そうですね、「土曜バラエティ」という単発枠があって、若手のチャンスはすごくあると思います。カメラを持たせてもらうのが早くて、「失礼がないように」とだけ教えてもらって、いきなり現場に出されて回してきますから。『オモウマ』のADたちもそんな感じです。

最近は上出さんとか、佐久間宣行さんとか、芦田太郎さんとか、制作者の名前でコンテンツを見ていただく時代に入ってきたと思うんですけど、うちは1人のクリエイターじゃなくて、「中京テレビ」という名前で見てもらえるようになればいいなと思うんです。1人1人のパワーは強くないかもしれないけど、一枚岩になっている感じがすごくあります。

――中京さんの『タマげた実家グランプリ』というお正月特番の収録に行ったとき、『オモウマ』にもよく出られる梅沢富美男さんが「中京テレビはこういうの作らせたらピカイチだから」とおっしゃっていましたし、徐々にブランドが浸透しているなと思います。『オモウマ』以外に、どんな番組を担当されているのですか?

ローカルの単発で『オレの一行』や『オカンからの荷物です。』という番組をやらせてもらいました。『オカンからの荷物です。』は、『オモウマ』で取材した力が付いたなと思った番組なんですが、「上京してるお子さんに荷物を届けませんか?」とお母さんに聞いて、スタッフがその荷物を届けに行くというバラエティです。母親の仕送りって、訳わかんないのが入ってたりして面白いなと思って、そこにドラマがあるんじゃないかということで企画しました。届いたものを見るという番組は結構あったと思うんですけど、届けるところも見ていくというのがちょっと新しいと思ったので、あれはまたやりたいなと思います。

――ほかにも、今後こういう番組を作っていきたいというものはありますか?

今回指名していただいた上出さんとも企画会議をさせてもらっているんですけど、やりたいことだらけなので、テレビという環境を最大限使わせてもらって、いろいろ表現できたらなと思っています。僕は人見知りなんですけど、人が好きだということに気づいたので、自分だからこそできる新しいドキュメントというものを、どんどんやっていきたいですね。

――やはり『オモウマ』に携わって、ドキュメンタリーの面白さに気づいたという感じでしょうか。

そうですね。自分の作ったVTRを憧れていた人たちや視聴者の方が見てくれるというところに一番やりがいを感じますし、『100カメ』(NHK)や『オモウマ』のように、ドキュメントってまだ新しい切り口が絶対あると思うんです。そういう何かを発明して、将来は「ドキュメントと言えばこの人」と言われるような作り手になりたいなと、勝手に思っています。

――先ほど挙がったCXの原田さんとか、テレビ東京の大森時生さんとか、テレビ朝日の小山テリハさんとか、最近、若手の制作者の名前が出るようになってきましたが、やはり刺激になりますか?

僕はローカルの局で全く面識がないので、どういうふうに作ってるかとか、将来テレビをどうしていきたいかとか、会ってお話ししてみたいですね。それと、せっかく局と局の垣根がなくなってきているので、何か一緒にできたらいいなと思います。

――ご自身が影響を受けた番組を1本挙げるとすると、何でしょうか?

『100カメ』は本当にすごいなと思いました。『オモウマい店』は客観がありながら、僕らがいることによって起こることも面白がって、視聴者の方も追体験できるような主観と第三者が共存するドキュメントだと思っているんですけど、『100カメ』は客観だけで何が起こるのかをひたすら待つという形なので、ものすごい大変だと思うし、ドキュメントのある意味での最前線だなと思ったんです。「救急病院」の回を見たときに、「これやってみたいな」と思って、それから『オモウマ』でも定点カメラをちょっと増やしました。そこで、意図していなくて、自分の声が入っていない現象がどれだけ物語を作るのに重要かというのを改めて知りました。

――いろいろお話を聞かせていただき、ありがとうございました。最後に、気になっている“テレビ屋”を伺いたいのですが…

放送作家の桝本壮志さんです。駆け出しの頃からお世話になっていて、2週間に1回くらい新しい企画を考える会をやっています。Spotifyで音だけの企画をやってたり、ABEMAのワールドカップで本田圭佑さんを呼んだり、ネットとテレビということにおいて、すごく新しいことをやってらっしゃるなと改めて思っています。

次回の“テレビ屋”は…

放送作家・桝本壮志氏

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