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広島大など、非鉛系圧電セラミックスの圧電特性発現メカニズムを解明

2023年02月09日18時06分 / 提供:マイナビニュース


広島大学、九州大学(九大)、山梨大学、高輝度光科学研究センター(JASRI)の4者は2月7日、優れた強誘電性と圧電性を持つ非鉛系圧電セラミックス材料の合成に成功し、同時に鉛を含まずに優れた圧電特性を得られるメカニズムを解明したことを共同で発表した。

同成果は、広島大大学院 先進理工系科学研究科のキム・サンウク助教、同・黒岩芳弘教授、九大大学院 工学研究院の宮内隆輝大学院生(研究当時)、同・佐藤幸生准教授、山梨大大学院 総合研究部研究員のナム・ヒョンウク博士、同・藤井一郎准教授、同・上野慎太郎准教授、同・和田智志教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、機能性材料に関する化学と物理学を扱う学際的な学術誌「Advanced Materials」に掲載された。

圧電素子は現代社会で重要な電子部品の1つだが、有害な鉛が含まれている点が課題となっていた。そのため、環境に優しい高性能非鉛系圧電材料を用いた圧電素子が望まれている。そうした中、ビスマス(Bi)イオンを含む「ビスマスフェライト(BiFeO3)」(BF)と「チタン酸バリウム(BaTiO3)」(BT)による「BF-BTセラミックス」が、高性能な次世代非鉛系圧電材料候補になりうることを報告したのが研究チームだ。

しかし同物質は、圧電性の発現メカニズムに関する物理的な理解が不足していることが課題だった。研究チームは、そのメカニズムを解明することができれば、新たな非鉛系圧電材料を開発するための材料設計指針を提案できると考え、今回研究に着手することにしたという。

BF-BTセラミックスは、BFとBTの粉末状原材料を混合し成形した後、高温で焼成することで作製される。その強誘電特性と圧電特性を調べたところ、強誘電体に特徴的な分極とひずみ曲線を得ることができたとする。同物質の自発分極の大きさは、積層コンデンサ材料としてよく利用されている典型的な強誘電体材料であるBTを凌駕しており、鉛系圧電材料である「チタン酸ジルコン酸鉛」(Pb(Zr,Ti)O3)に迫る圧電性を有していることが判明した。

BFとBTは、どちらもマイクロメートルサイズのドメインを持つ強誘電体として知られている。しかし、高分解能透過型電子顕微鏡を用いた観察の結果、BF-BTセラミックスにはナノメートルサイズのドメイン(ナノドメイン)が存在することが発見された。


その起源を解明するため、続いて放射光X線回折(SR-XRD)実験が行われた。その結果、ペロブスカイト型構造の単位格子のコーナー位置であるAサイトを占めるBaイオンとBiイオンのうち、Biイオンだけが理想的な原子位置から結晶軸方向にずれて配置することから、Aサイトに局部的な分極構造が形成され、これがナノドメインの起源となることが明らかにされた。

強誘電性を示す圧電材料の圧電特性は、結晶の単位構造由来の本質的寄与と強誘電分域(ドメイン)などを由来とする非本質寄与で説明され、一般に、本質的な寄与分を除いたすべての寄与分が一括りに非本質的な寄与によるものと考えられてきたという。非本質的な効果をさらに明確に分類することは、圧電応答の起源を理解する上で重要だ。そこで、電場下でのSR-XRD実験が行われ、圧電効果におけるそれぞれの寄与が見積もられた。

その結果、BTの濃度が0.3や0.4のセラミックスである「0.70BF-0.30BT」や「0.60BF-0.40BT」では、非本質的な効果にはナノドメイン内でBiイオンが電場下で再配列する効果しかなく、通常の強誘電ドメイン由来の効果は存在しないことが確かめられた。

この実験では、0.70BF-0.30BTセラミックスが最も高い圧電性能を示すが、結晶の単位構造に由来する本質的な圧電効果の寄与を大きくすること自体は困難だ。そのことから、Biイオンのオフセンタリングによって形成されたナノドメインによる圧電性への寄与を大きくすることで、この材料の圧電性が格段に向上することが考えられるとした。

このように、構造乱れを有するナノドメインを結晶に導入し、電場下でその乱れを整え、分極方向を電場方向にそろえるということをすれば、鉛を含まなくても優れた高性能圧電材料を開発できることが解明されたのである。

これまで、環境に優しい圧電材料として、Biイオンを含む圧電材料がこれまで数多く研究されてきたが、誘電物性の発現機構を明確に理解する物理的解釈が不十分だった。しかし研究チームは、今回の研究で判明した、ナノドメインを形成し電場下で制御するという新しい概念を用いれば、より高性能な強誘電体・圧電体材料を開発できることが期待されるとしている。

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