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岩手医科大など、100歳以上の長寿者共通のエピゲノム状態の特徴を発見

2023年02月03日18時23分 / 提供:マイナビニュース


岩手医科大学いわて東北メディカル・メガバンク機構(IMM)、慶應義塾大学(慶大)、KDDI総合研究所の3者は2月2日、20~70代までの健常者421名から次世代シーケンサを用いた年齢推定手法を開発し、それを用いて100歳以上の長寿者(百寿者)94名のエピゲノムの状態を解析した結果、百寿者の推定年齢が暦年齢よりも若く、特に「CD44」を中心としたがん関連遺伝子と「CNTNAP2」などの認知機能に関わる遺伝子群のエピゲノム状態が、若い人と同程度に維持されていることがわかったことを共同で発表した。

またその一方で、「SMAD7」などの抗炎症に関与する遺伝子周辺のエピゲノム状態は、より老化が進んだような状態にあることが明らかになったことも併せて発表された。

同成果は、IMM 生体情報解析部門の小巻翔平特命講師、同・部門長の清水厚志教授、慶大 医学部 病理学教室の新井恵吏准教授、同・金井弥栄教授、同・医学部 生理学教室の岡野栄之教授、同・医学部 百寿総合研究センターの新井康通センター長、同・広瀬信義共同研究員、KDDI総合研究所の永田雅俊コアリサーチャー、同・米山暁夫エキスパートらの共同研究チームによるもの。詳細は、長寿と健康的な老化に関する全般を扱う学術誌「The Lancet Healthy Longevity」に掲載された。

エピゲノムとは、DNAの塩基配列の変化を伴わずに遺伝子の働きを変化させる機構のことで、近年、その視点から健康長寿や老化についての研究が進む。その代表的な現象に、シトシン(C)とグアニン(G)の2種類が連続して並ぶDNA領域「CpGサイト」のメチル化・脱メチル化がある。ヒトゲノム上で同サイトは約3200万か所存在しており、環境要因により可逆的にエピゲノム状態が変化するもの、加齢に伴ってメチル化・脱メチル化が一方向に進んでいくものなどがある。

加齢に沿って一定の変化を示す数百か所の同サイトのエピゲノム状態から本人の年齢を推定する「エピゲノム時計」という手法がある。しかしこの手法ではDNAマイクロアレイが用いられており、近年飛躍的に発展している次世代シーケンサが活用されていなかった。

また海外では、健康長寿者のエピゲノム年齢が暦年齢よりも若いことが報告されていたが、どのような機能に関わる遺伝子のエピゲノム状態が若く維持されているのか、さらに若い状態を維持することだけが重要なのかどうかなど、詳細なことはわかっていなかったという。


そこで研究チームは今回、次世代シーケンサを利用した日本人に適したエピゲノム年齢推定法を開発すると同時に、東京百寿者研究と全国超百寿者研究に参加した101~115歳の94名と、東北メディカル・メガバンク(TMM)計画の地域住民コホート調査に参加した20~79歳の健常な421名のエピゲノム状態を比較解析し、健康長寿に関わるCpGサイトの探索を行うことにしたという。

まず、TMM計画参加者のエピゲノム情報を用いて、暦年齢を推定できる日本人用のエピゲノム時計が開発された。それを用いて百寿者のエピゲノム年齢と暦年齢の比較を行った結果、男性1名を除き、暦年齢よりも若いエピゲノム年齢が示されたとする。また、エピゲノム状態に影響する血中の細胞種組成の違いを考慮した指標「エピゲノム年齢加速」においても、百寿者のエピゲノム年齢は若い状態が維持されていた。

続いて、エピゲノムワイド関連解析により、TMM計画参加者のCpGサイトにおいて、年齢に沿って高メチル化が進む408のCpGサイトと、低メチル化が進む1701のCpGサイトが検出された。これらの多くは、百寿者においても加齢に沿った高メチル化または低メチル化が示されたという。

一方で百寿者のCpGサイトでは、DNAメチル化が若い状態に維持されているもの、逆にDNAメチル化が加速しているものも発見された。百寿者の若い状態に維持されているものの多くは、がん遺伝子や、がん抑制遺伝子の近傍に集まっており、逆にエピゲノム状態変化が加速しているものの多くは、免疫関連遺伝子の近傍に集まっていたとする。

さらに、タンパク質機能に着目したネットワーク解析の結果、百寿者で若く維持されていた同サイトは、がんのほか、認知機能に関わる領域に存在することも示された。この結果は、がん罹患や認知機能の低下を示さない百寿者の典型的な特徴を説明できるという。

また、老化方向にエピゲノム変化が加速していたCpGサイトは、抗炎症作用を有する「TGF-β」のシグナル伝達の活性化に関与する領域に存在していた。これは、エピゲノム状態を若く保つだけではなく、加齢に伴って、より老化が進むエピゲノム変化が重要である可能性も示唆しているとした。なお、百寿者で老化方向に進んでいたこれらのCpGサイトは、一般的なエピゲノム時計では考慮されにくく、若い状態を保つことが過大評価されている可能性も示されたとする。

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