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皮膚の傷修復には細胞へのクロライドイオンの流入が重要 生理研などが解明

2023年02月01日19時15分 / 提供:マイナビニュース


生理学研究所(生理研)、生命創成探究センター(ExCELLS)、池田模範堂、昭和大学、京都薬科大学(京薬大)、立命館大学の6者は1月31日、皮膚にできた傷が治癒する際に、温度感受性TRPチャネルの1つである「TRPV3」が、同じ細胞にあるクロライドイオンチャネル「ANO1」の活性化を介して表皮細胞の増殖・移動を促進し、傷口を埋めることを明らかにしたと発表した。

同成果は、生理研の富永真琴教授(ExCELLS兼任)、池田模範堂の山野井遊博士、昭和大 医学部の髙山靖規講師、京薬大の細木誠之准教授、立命館大の丸中良典客員教授(京都工場保健会総合医学研究所 所長兼任)らの共同研究チームによるもの。詳細は、英科学誌「Nature」系の生物学を扱うオープンアクセスジャーナル「Communications Biology」に掲載された。

擦り傷や切り傷などで皮膚が傷つくと、皮膚の表面を覆う表皮細胞が削り取られてしまい、その下にある真皮と呼ばれる敏感な組織が露出することで痛みを感じる。また、真皮には無数の血管があるため、傷の度合いによってはそれらが破けて出血も伴う。このような傷が治癒していく過程においては、その周囲に残った表皮細胞が増殖して傷口を覆うように移動することが理解されている。

これまでの研究で、この表皮細胞の増殖・移動にTRPV3が関わることはわかっていたが、どのように細胞の機能を制御するのかは不明だったという。そうした中研究チームは、ほかのTRPチャネル(TRPA1やTPRV1)が同じ細胞内にあるANO1を活性化することを見出した。しかし、TPRV3とANO1の関係や、ANO1やクロライドイオンと傷の治癒の関係は解明されていなかったとする。しかし、表皮細胞にはTRPV3もANO1もあることから、研究チームは今回、TRPV3の活性化がANO1の活性化を誘導する可能性について検討することにしたという。


ヒト表皮細胞を用いた実験の結果、TRPV3を活性化する成分であるカンフル(樟脳)を表皮細胞に作用させると、クロライドイオンに由来する電流が流れることがわかった。そして、ANO1チャネルの働きを阻害する薬剤を加えた時にだけ、電流が小さくなることも確認された。このことは、TRPV3の活性化がANO1の活性化を誘導し、クロライドイオンチャネル由来の電流が流れていることが示されたとする。

さらに、人工的に傷の治癒を模した実験により、表皮細胞の動きの観察が行われた。すると、ANO1の働きを阻害する薬剤の存在下では、表皮細胞の動きが遅くなり増殖が抑制されることも明らかにされた。また同様の実験を、クロライドイオンを減らした培養液の中で行うと、ANO1の働きを阻害した場合と同じように表皮細胞の動きが遅くなり、増殖も抑制されることがわかった。さらに、表皮細胞内のクロライドイオン濃度が測定されたところ、細胞外のクロライドイオン濃度よりも低く保たれていることが確かめられた。

研究チームはこれらの結果から、TRPV3により活性化されたANO1を介してクロライドイオンが細胞内へ流入することが、表皮細胞による傷の修復に重要であることが考えられるとする。

ANO1やクロライドイオンと傷の治癒の関係は、これまであまり注目されていなかったという。今回の結果が、さらなる傷の治癒のメカニズム解明に役立ち、新たな傷の治療法の開発につながる可能性が期待されるとした。

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