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京大、30ps未満の短パルスと高ピーク出力を両立したレーザー発振を実現

2023年01月30日20時08分 / 提供:マイナビニュース


京都大学(京大)は1月27日、数十ピコ秒(ps)以下という超短時間の間に、面内の共振波長分布が高速に自己変化可能なフォトニック結晶を考案し、それを利用することで短パルス(<30ps)かつ高ピーク出力(>80W)のレーザー発振を実現することに成功したと発表した。

同成果は、京大大学院 工学研究科の野田進教授、同・井上卓也助教、同・森田遼平特定研究員らの研究チームによるもの。詳細は、英オンライン科学誌「Nature Communications」に掲載された。

自動運転などのスマートモビリティ分野における高精度リモートセンシングや、製造分野での熱の影響を受けない超精密レーザー加工などを実現するため、パルス幅が数十ps以下と短く、数十~100W以上の高いピーク出力を持つレーザー光源が、極めて重要とされている。このように、短パルス・高ピーク出力動作が可能で、小型・安価・高速電気制御可能といった特徴も併せ持つ高ピーク出力光源に対するニーズが高まっていた。しかし、従来の半導体レーザーは、高出力化のため光出射面積を増大すると、発振モードが多モード化してビーム品質が劣化するため、ピーク出力の向上に限界があった。

これまで同研究チームでは、出力動作と高ビーム品質動作の両立が可能なフォトニック結晶レーザーにおいて、内部に可飽和吸収体を導入することで短パルス発振を実現する「Qスイッチング」動作を実現し、パルス幅数十ps未満、ピーク出力20W級の発振を得ることに成功していた。そこで今回の研究では、さらに高いピーク出力の短パルス発振を目指すことにしたという。

新たな工夫としては、共振波長(共振周波数)の面内分布が高速に自己変化可能なフォトニック結晶の概念の提案と実証が行われた。今回の構造は、レーザー内部に含まれるフォトニック結晶層において、その周期aが面内一方向に徐々に増加していることを特徴とする。このことから周期が大きな領域では、そこで共振する光の波長が長くなる(=共振周波数が低くなる)ため、同フォトニック結晶は、場所によって共振周波数が異なるとした。

このようなフォトニック結晶の周期を面内で変化させる工夫により、損失の大きい状態から小さい状態へと瞬時に自ら変化させることによって、Qスイッチング動作を生じさせることが可能だ。それによって、短パルスかつ高ピーク出力なレーザー発振を生じさせることが可能となるという。今回の手法は、従来の可飽和吸収体を利用したQスイッチングの手法とは異なり、新しい手法として「自己変化フォトニック結晶レーザー」とされた。


次に、上述の動作原理を確認するため、フォトニック結晶レーザーの過渡応答解析が行われた。自己変化フォトニック結晶レーザーに、直流電流20Aを注入した際の光出力の時間変化が計算された。すると、パルス幅30ps未満、ピーク出力100Wを超える短パルス発振が断続的に得られていることがわかったという。

さらに、生成された光パルスの各瞬間におけるデバイス内部の光子分布密度が計算された。その結果、時間の経過とともに光が一方向に移動することが確認され、上述の発振原理に従って短パルスが生成されることが数値計算により確かめられたという。

以上の設計に基づき、実際にデバイスの作製が行われた。そして、そこから出射された光の強度が空間的および時間的に変化する様子が、ストリークカメラを用いて測定された。その結果、時間方向に断続的に光が検出されていることから、作製されたフォトニック結晶レーザーから断続的な短パルス光が出射されていることが確認された。

また、各パルスに注目すると、光がu軸方向に移動している様子が観測され、光の移動を実験的に観測することにも成功したという。取得したストリークカメラの画像が空間的に積分され、光出力の時間変化が示された。その結果、パルス幅30ps未満で、ピーク出力80W以上(従来の4倍以上のピーク出力)の短パルス・高ピーク出力発振の実現に成功したとする。

今回開発された短パルスフォトニック結晶レーザーは、さまざまな分野への波及効果が期待されるとする。たとえば、スマートモビリティ分野において不可欠なレーザー測距センサであるLiDARに適用することにより 、人間の目への安全性(アイセーフ条件)を確保しつつ、可能な限り遠くの物体の測距(>200m)が可能となることが期待されるとした。

さらに、今回の自己変化フォトニック結晶レーザーに、可飽和吸収体の導入を組み合わせることで、ピーク出力がkW級の短パルス・高ピーク出力も実現可能になることが期待されるとする。またこれらの開発により、従来は不可能だった半導体レーザー単体でのレーザー微細加工への適用をはじめとして、さまざまな分野の発展に大きく寄与するものと期待されるとした。

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