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KEKなど、K中間子と陽子から直接「Λ(1405)」を合成し複素質量の直接測定に成功

2023年01月27日18時35分 / 提供:マイナビニュース


高エネルギー加速器研究機構(KEK)、東北大学、日本原子力研究開発機構(原子力機構、JAEA)、J-PARCセンター、理化学研究所(理研)、大阪大学(阪大)の6者は1月26日、ストレンジ(S)クォークを含む中間子(メソン)のうちで最も軽い粒子である「K中間子」と陽子から、「Λ(ラムダ)ハイペロン」のうちで第一励起状態にある「Λ(1405)」を直接合成し、その「複素質量」の直接測定に成功したことを発表した。

同成果は、阪大 核物理研究センターの井上謙太郎特任研究員、同・川崎新吾特任研究員、理研 仁科加速器科学研究センターの佐久間史典専任研究員(理研 開拓研究本部 専任研究員兼任)、原子力機構 先端基礎研究センターの橋本直研究副主幹、東北大 電子光理学研究センターの大西宏明教授らが参加し、阪大 核物理研究センターの野海博之教授(KEK 素粒子原子核研究所 特別教授兼任)が実験代表者を務める国際共同利用実験「E31」(9か国20機関30部局76名が参加)によるもの。詳細は、素粒子物理や原子核物理などを扱う学術誌「Physics Letters B」に掲載された。

誕生直後の宇宙は想像を絶する高温状態にあり、クォークですらバラバラになって飛び回っていたと考えられている。現在は宇宙膨張によって十分に冷えたため、自然界に存在する4つの力のうちの1つである「強い相互作用」によって、クォークは複数個が強く結びつけられ、陽子や中性子などの核子や、中間子といった複合粒子に閉じ込められている(通常、クォークは単独で存在できないとされる)。

クォークで構成される複合粒子はハドロンと総称され、さらに、核子などのように3個からなるものは「バリオン」、中間子のようにクォークと反クォーク1個ずつからなるものは「メソン」と大別される。クォークからどのようにハドロンが形成されたのかは、宇宙における物質の形成と進化に関する研究において重要な問題となっている。

Sクォークを含むバリオンであるハイペロンのうちで最も軽いものがΛハイペロンであり、その第一励起状態にあるのがΛ(1405)である。同粒子は、すぐにπ中間子と、Λハイペロンの次に軽い「Σ(シグマ)ハイペロン」へと崩壊してしまう、不安定な共鳴状態にある。

Λ(1405)については、3個のクォークからなるバリオンの単純な内部運動による励起とする説がある一方で、K中間子と核子が結合した状態とする説も強かった。後者が真実なら、Λ(1405)は、これまでのハドロンの分類には当てはまらない5個のクォーク(4個のクォークと1個の反クォーク)で構成されていることになる。

そこで、K中間子と核子を融合させ、直接Λ(1405)を合成することが検討されてきたが、Λ(1405)は、K中間子と核子の質量和よりも軽いため、K中間子と核子をどれほどゆっくりと衝突させても、Λ(1405)を合成する反応は起こせないとされてきたという。


そうした状況を踏まえ、研究チームは今回、新たな方法でΛ(1405)を合成する手法を考案することにしたという。

具体的には、陽子と中性子がゆるやかに結合した「重水素原子核(重陽子)」に、負電荷を持つK中間子を照射すると、中性子が蹴り出され、その反動でエネルギーを失ったK中間子が残った陽子と融合することで、Λ(1405)が合成されるというものだという。そして研究チームでは、その一連の反応過程を測定することにも成功したという。

Λ(1405)の合成では、反応に関わるごく短い時間内で許される量子力学的不確定性関係を利用して、反跳K中間子と陽子の取りうる衝突エネルギーの下限を下げ、Λ(1405)の質量領域に到達させることが鍵となると研究チームでは説明している。この反応過程が散乱理論にしたがって分析され、Λ(1405)の複素質量(共鳴粒子の質量は、虚数を含む複素数で表される)が求められた結果、Λ(1405)という名前の由来となっている1405MeV/c2よりも約13MeV/c2ほど重いことが判明したという(そのため、将来的には名称変更の可能性もあるとする)。このことは、Λ(1405)がK中間子と陽子の散乱における共鳴状態であることを直接示しているという。

さらに、Λ(1405)がK中間子と陽子に結合する割合が、π中間子とΣハイペロンに結合する割合よりも優勢であることも示されたとする。この結果は、最新理論による解析とも矛盾なく、Λ(1405)がK中間子と陽子の結合状態であることを支持するものだとしている。

なお、今回の成果について研究チームでは、直接的にはK中間子と核子間の相互作用を与え、最近発見された新奇なK中間子原子核の性質を理解するための基礎情報となるとしているほか、中性子星の中心部でK中間子が凝縮した状態が実現しているかどうかなど、超高密度核物質に関する理論の進展も期待されるとしている。

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