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幼児の長時間デジタル視聴による神経発達への影響を外遊びが弱める可能性、阪大などが解析

2023年01月26日06時30分 / 提供:マイナビニュース


大阪大学(阪大)と浜松医科大学は1月24日、幼児期のスクリーンタイム(ST)とその後の子どもの神経発達の関連を解析し、コミュニケーション機能の発達に弱いながらも影響があることを示した一方、子どもの頻繁な外遊びがスクリーンタイムの望ましくない影響を緩和することを明らかにしたと発表した。

同成果は、阪大大学院 連合小児発達学研究科の杉山美加大学院生、浜松医科大 子どものこころの発達研究センターの土屋賢治特任教授(阪大大学院 連合小児発達学研究科兼任)、同・西村倫子特任講師らを中心に、海外の研究者も参加した国際共同研究チームによるもの。詳細は、米国医学会が刊行する小児医学を扱う学術誌「JAMA Pediatrics」に掲載された。

スクリーンタイムは、テレビやDVDなどの視聴に加え、スマートフォンやタブレットなどを見る1日あたりの平均デジタル視聴時間のことで、WHO(世界保健機関)は2歳児におけるSTは1時間を超えないよう指針を出しているが、コロナ禍によって在宅時間が伸びる中、米国では指針を遵守している家庭は3割程度と報告されているとする。

幼児のSTが長いことによる懸念の1つとして、神経発達学的予後(神経発達)がある。STが長いと、その後の言語機能、社会機能・対人機能(社会性)、運動機能の発達に望ましくない影響が生じたり、学業成績が低下したりする可能性があるのではないかというが指摘されている。ただし、STの影響を否定する研究結果もあるという。

加えて、ST問題の理解と対応においては、(1)幼児期の長いSTが、子どものどのような機能にどの程度影響するのかが確かでない、(2)幼児期のSTを減らす保健指導・介入がこれまでも行われてきたが成功していない、という2点の未解決の課題も残されていた。

幼児のSTを減らすべきかどうか、もし減らすべきなのであればその理由はどのようなものか、そして、どのように望ましくない影響を減らすとよいのか、それを考えるための科学的根拠が十分に集まっていない状況だという。

そこで研究チームは今回、浜松医科大が2007年からスタートさせ、現在も継続している大規模疫学研究「浜松母と子の出生コホート研究(HBC Study)」のデータを用いた調査を行うことにしたという。


HBC Studyは、妊婦と、2007年12月から2012年3月までの間に生まれた1258名の子どもたちの成長(身体発達、神経発達)を縦断的に追いかけた大規模疫学研究で、外遊びが神経発達によい影響を与えることが知られていることから、以下の仮説を立てたという。

2歳でSTが1時間超の子どもは、4歳の神経発達学的予後スコアが低い。
2歳でST1時間超の子どもが、2~4歳で十分に外遊びをすると、4歳の神経発達学的予後スコアが通常範囲に収まる。

STが神経発達に望ましくない影響を与えるのか、あるいは、STが増えると外遊びが減ることを通じて神経発達に影響するのか。もし仮説2が正しければ、仮にSTが神経発達に望ましくない影響を与えるとしても、外遊びを増やせば望ましくない影響を減らせるのではないかと、考察したという。

この仮説の検証のため、今回、HBC Studyに参加した子どものうち885名を対象に、4歳の神経発達学的予後としての「コミュニケーション機能」「日常生活機能」「社会機能」の得点、2歳での「1日あたりのST」、2歳8か月での「1週あたりの外遊び日数」のデータを利用して、3つの変数の関連を媒介分析という手法を用いて解析することにしたとする。今回は、STと神経発達学的予後との関連を説明するかもしれない第三の変数(交絡因子)として、「母親の教育歴」「父親の教育歴」「1歳6か月における発達障がいの傾向」の有無が考慮されたという。

調査の結果、以下の3点が判明したとする。

2歳のSTが長い(1日1時間超)と、4歳のコミュニケーション機能が少し下がる。この低下は、2歳8か月の外遊びを増やしても(1週6日以上)、減らない。
2歳のSTが長い(1日1時間超)と、4歳の日常生活機能が少し下がる。この低下は、2歳8か月の外遊びを増やすと(1週6日以上)、大幅に減る。
2歳のSTが長くても、4歳の社会機能は低下しない。

これらの結果から、2歳のSTは、4歳の「コミュニケーション機能」「日常生活機能」を低下させるが、その影響の程度は限定的であり、特に「日常生活機能」への影響は2~3歳に十分な外遊びをすることで緩和される可能性があること、また2歳のSTは4歳の「社会機能」に明確な影響を与えていないことが示されることとなったという。

なお、研究チームによると、子どものSTをどのようにコントロールすべきか、社会全体で考えていく必要に迫られているとしているほか、その影響を減らす外遊びなどの介入方法の深化も求められるとしている。

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