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東北大、電子スピン波を材料によらず観測できる汎用的な手法を構築

2023年01月24日20時10分 / 提供:マイナビニュース


東北大学は1月23日、従来は光学的手法でしか検出できず、光を吸収する限られた材料でのみ利用されてきた「電子スピン波」を電気的に観測できる新たな原理を確立し、半導体を含むさまざまな材料において同波を観測するための基盤技術を構築することに成功したと発表した。

同成果は、東北大大学院 工学研究科の齋藤隆仁大学院生(研究当時)、同・工学研究科の好田誠教授(量子科学技術研究開発機構 量子機能創製研究センター グループリーダー兼任)らに加え、独・ピーター・グリュンベルグ研究所、ニュージーランド・ヴィクトリア大学の研究者も参加した国際共同研究チームによるもの。詳細は、米国物理学会が刊行する物理とその関連分野を扱う学際的なオープンアクセスジャーナル「Physical Review Research」に掲載された。

インターネット上を行き交う情報量は増加し続けており、今後、第6世代移動通信やIoTなどが実現すれば、それらはさらに爆発的に増加することが予想されている。そのため、既存のデジタル回路の演算方式である逐次処理に比べて、膨大な情報の同時一括処理が可能となることから、並列処理が大きく期待されている。

現在検討されている並列演算を可能にする新たな情報担体の1つが、電子のスピンが回転しながら空間伝搬することで生まれる電子スピン波だ。同波は波の重ね合わせを利用できるため、デジタル信号処理が不得意な並列演算処理を省電力で実現できる可能性があるという。

電子スピン波は理論上、半導体・原子層材料・酸化物などのさまざまな材料に存在することは理解されていた。しかし、電子スピン波の検出にはこれまで光学的手法しか存在せず、光を吸収できる材料が限られてしまうことが課題となり、材料開発のボトルネックとなっていたのである。

電子スピン波を用いた並列情報処理を実現するためには、さまざまな材料の電子スピン波を把握することが可能な、汎用性の高い観測手法の確立が必要不可欠となる。そこで研究チームは今回、半導体における同波の電気的な検出を試みることにしたとする。


今回の研究で電子スピン波の電気的観測に用いられた原理は、半導体の電気伝導測定で観測される抵抗変化の「量子干渉効果」だ。同効果は、さまざまな材料において観測できる普遍的な現象で、半導体においては古くから、スピン情報が失われるまでの緩和時間を検出するために用いられてきた。今回は同効果を利用して、電子スピン波を電気的に検出できる新たな理論モデルを導いたという。そして、ガリウムヒ素(GaAs)半導体材料に同理論モデルを適用することで、電子スピン波の緩和時間を実験的に求めることに成功したとしている。

これにより、理論モデルによる曲線は、磁気伝導測定で観測される量子干渉効果の実験結果をよく再現できることがわかり、半導体における電子スピン波の電気的観測を可能にしたことが確かめられた。

加えて研究チームは、ガリウムヒ素半導体トランジスタにおいてゲート電圧を変化させながら、電子スピン波の緩和時間とゲート電圧の関係を調査した。その結果、電子スピン波の緩和時間はゲート電圧を減少させることで増大し、電子スピン波を安定に保持できる条件が突き止められたという。研究チームによるとこの成果は、さまざまな材料において電子スピン波が観測できる基盤技術を構築したことになり、電子スピン波を活用できる半導体材料の開発を一気に加速させることが期待されるとする。

また、電気的な観測を実現したことにより、将来的には爆発的に増大する情報を同時一括処理できる半導体ベースの超並列演算素子へと展開することができ、革新的な省電力技術に貢献できることが考えられるという。さらに、量子コンピューティングでは、特定問題に対し量子力学的な重ね合わせを利用することで超並列処理が可能となるが、電子スピン波では古典的な波の重ね合わせにより汎用並列演算が可能となるため、より汎用性の高い演算を並列処理できる将来展望が期待されるとした。

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