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光から変換した熱を用いて触媒として高活性に機能する3次元ナノ材料、近大が開発

2023年01月23日17時26分 / 提供:マイナビニュース


近畿大学(近大)は1月20日、安価で環境負荷が小さい化合物を用いて簡便な手法で合成した3次元構造のナノ材料が、光を熱に効率的に変換し、またその熱を用いて触媒として高活性に機能することを明らかにしたと発表した。

同成果は、近大 理工学部 応用化学科の多田弘明教授、同・副島哲朗准教授らの研究チームによるもの。詳細は、英国王立化学会が刊行する化学全般を扱う学術誌「Chemical Communications」に掲載された。

ナノ材料の応用例の1つに、照射される光を熱に変換して触媒表面を局所的に加熱することで、触媒反応を促進させる「フォトサーマル触媒」と呼ばれるものがある。同触媒の実現手段として、近年登場したのが、ナノサイズの剣山のような構造である「ナノワイヤーアレイ」(NWA)を用いる手法で、3次元構造をしていることから、内部で光が効果的に吸収され、熱を閉じ込めることによって、効率的な光熱変換特性を示すことが期待されている。

しかし、NWAの合成には高価な機器が必要で、手順も複雑であるなどの理由から、触媒反応の分野において実現には至っていないという。また、現状でフォトサーマル触媒で利用できるのは可視光のみで、太陽光の半分を占める近赤外光を利用できないことも課題とされており、より効率良く光熱変換を実現するために、近赤外光への対応が求められていた。

そこで研究チームが着目したのが、「マンガン酸化物」だという。同物質は、天然に豊富に存在することから安価であり、なおかつ環境負荷が小さく、その上で多様な結晶構造や酸化状態に由来する特異な化学的・物理的特性を示すことを特徴とする。

しかし同酸化物を用いたとしても、結局のところNWAの合成には高価で特殊な器具や煩雑なプロセスが必要であるため、同酸化物を用いたNWAの研究はあまり進んでいなかったという。そこで研究チームは今回、マンガン酸化物の一種である水酸化酸化マンガン「γ-MnOOH」のNWA合成について、簡便かつ安価で消費エネルギーの少ない手法を検討することにしたとする。


具体的には、マンガンイオン、過酸化水素、ヘキサメチレンテトラミンなど、いずれも安価で入手できる物質を水に溶かし、この液体に基板を入れてフタをし、乾燥機(加熱機)の中に入れて85℃で数時間置くという簡便かつ低温で済む手法の開発に成功。これにより、極めて高密度で単結晶性の「MnOOHナノワイヤー」を基板から成長させることができたとする。

また、この材料を400℃程度で加熱処理をすることによって、単結晶性NWA構造を保ったままで、マンガン酸化物の中で高い触媒活性を有することで知られる「β-MnO2 NWA」へと変換することにも成功。分光学的な測定の結果、β-MnO2 NWAは、可視域から近赤外域の広範囲にわたる光を吸収することが判明した。

さらに、合成されたNWAの触媒活性の評価として、生体中に含まれるさまざまな金属イオンや生体分子の検出にも利用されている、「o-フェニレンジアミン」(OPD)から「2,3-ジアミノフェナジン」(DAP)への酸化反応を用いて、β-MnO2 NWAのフォトサーマル触媒活性の評価として、OPD溶液中にβ-MnO2ナノ粒子を分散させ、光照射下・暗所下の両方で触媒活性が評価されたところ、光照射でも活性が1.1倍とほとんど増加せず、β-MnO2ナノ粒子はフォトサーマル触媒としてほとんど機能しないことが判明した。

一方、同様の実験がβ-MnO2 NWAに対して行われたところ、光照射下における活性が向上し、2.5倍となったことを確認。これは、ナノ粒子の分散液と薄膜で、光照射されて触媒反応が進行する体積に大きな差があることを考慮しても、従来の発想では得られない活性向上が達成できていると研究チームでは説明しており、その理由として以下の2点が考えられるとしている。

1つ目は、NWAの特異な3次元構造により、入射光が多重散乱され、極めて高効率にβ-MnO2に吸収されたためというもの。2つ目は、ナノワイヤーが高密度で成長したβ-MnO2 NWAでは、近傍に密集して存在するナノワイヤー同士による熱エネルギーの集中が起きたためというもので、これはナノ粒子の分散液とまったく異なる光熱変換プロセスが達成できていることが示されているとしている。

なお、今回の研究から、可視光のみならず近赤外光も吸収でき、かつ高効率なフォトサーマル触媒の開発にも成功したことから、研究チームでは、今後の触媒開発にさまざまな示唆をもたらすことが期待できるとしているほか、マンガン酸化物は触媒のみならず、リチウムイオン電池の電極など、多くの機能を示す材料であり、手軽に合成できるマンガン酸化物NWAは、今後、電池やセンサー、熱電変換など、さまざまな分野での利用が期待されるとしている。

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