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すばる望遠鏡、55億光年先の宇宙で最大級サイズの巨大超銀河団を発見

2023年01月23日14時51分 / 提供:マイナビニュース


国立天文台(NAOJ)は1月20日、すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ「Hyper Suprime-Cam」(HSC)を用いた大規模観測「すばる戦略枠プログラム」により、約55億光年先の宇宙において、50億光年以遠の宇宙で確認された中では最大となる超銀河団を発見。この超銀河団が、およそ満月15個分の天域にまたがって銀河とダークマターが強く密集している上、少なくとも19個の銀河団が付随していると発表した。

同成果は、NAOJ ハワイ観測所の嶋川里澄特任助教、広島大学大学院 先進理工系科学研究科の岡部信広准教授らの研究チームによるもの。詳細は、英国王立天文学会が刊行する天文学術誌「Monthly Notices of the Royal Astronomical Society」に掲載された。

天の川銀河は、アンドロメダ銀河とともに少なくとも50個~60個といわれる矮小銀河を重力で従えて「局所(局部)銀河群」を形成している。こうした銀河群よりも規模が大きく、より多くの銀河が重力で結びつき合った集団が銀河団だ。地球から約5900万光年と最も近くに位置するのが「おとめ座銀河団」で、史上初のブラックホールシャドウの撮影で知られる巨大楕円銀河「M87」が最も明るく、矮小銀河を含めるとおよそ3000もの銀河が属する。

そして、局所銀河群などおとめ座銀河団周辺の複数の銀河群は、すべておとめ座銀河団に重力で引き寄せられており(ただし、実際には宇宙膨張の影響の方が強いため、おとめ座銀河団と局所銀河群の間は離れていっている)、おとめ座銀河団を中心とした「局所超銀河団」または「おとめ座超銀河団」などと呼ばれている。また2010年代半ばには、おとめ座超銀河団が、さらに100倍もの大きさを持つ「ラニアケア超銀河団」の一部であることも確認されている(超銀河団よりも大きい構造・銀河集団を表す言葉がないため、超銀河団を内包する構造も、超銀河団と呼ばれる)。


このように超銀河団は宇宙最大の自己重力系構造であり、巨大なものは100メガパーセク(約3億2600万光年)の単位で広がっており、宇宙大規模構造のフィラメントの一部を成す。ただし、超銀河団については定義そのものがまだ曖昧だ。なおかつ、その正体や内部で何が起こっているかなど、多くの謎が内包されているが、我々の近傍宇宙の成り立ちを明らかにする上で非常に重要な研究対象だという。

このように宇宙は広大だが、非常に広い視野を持つHSCを用いたすばる戦略枠プログラムでは、満月の見かけの大きさの約4400倍に相当する広範囲を100億光年以遠の彼方まで観測することに成功している。同プログラムから得られる高品質な画像データは、未知の超銀河団を探すために、現時点で最も適したリソースの1つとされる。

そこで研究チームは今回、過去に同チームによって発見された100天体近くの超銀河団候補の中から、密度超過を示す範囲が最も広い天体に対し、星の総質量とダークマターの分布を調べたという。その結果、3つのダークマター密集領域を中心に、少なくとも19の銀河団で構成されたおよそ満月15個分の天域にまたがる超銀河団構造が、約55億光年先の宇宙に検出されたとした。

宇宙論的シミュレーションとの比較から、この超銀河団は太陽質量の1016(1京)倍のダークマター質量を持っていることが示唆された。なお、これはおとめ座超銀河団のおよそ10倍に匹敵するという。さらに、そのすぐ外側にも超銀河団相当の巨大構造が2つ確認されており、近傍宇宙最大のラニアケア超銀河団のような超巨大構造の前身である可能性があるとしている。

今回の論文の主著者である嶋川氏は今後、間もなく稼働する予定のすばる望遠鏡の超広視野多天体分光器「PFS」や、欧州宇宙機関が2023年に打上げ予定(2022年予定から延期)の近赤外線宇宙望遠鏡「ユークリッド」(すばる望遠鏡が同宇宙望遠鏡のサーベイに協力の予定)を使って、この超銀河団の3次元構造や内部の銀河形態などに迫っていくとしている。

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