旬のトピック、最新ニュースのマピオンニュース。地図の確認も。

中央線「昭和グルメ」を巡る 第167回 とん汁がおいしい町の定食屋さん「赤城屋」(高円寺)

2023年01月24日11時00分 / 提供:マイナビニュース

いまなお昭和の雰囲気を残す中央線沿線の穴場スポットを、ご自身も中央線人間である作家・書評家の印南敦史さんがご紹介。喫茶店から食堂まで、沿線ならではの個性的なお店が続々と登場します。

今回は、高円寺の食堂「赤城屋」をご紹介。

○家庭的な雰囲気がほっとする温かさ

「ニューバーグ」や「甘味処あづま」など、高円寺北口の中通り商店街にあるお店はこれまでに何度もご紹介してきました。今回の主役である「赤城屋」という定食屋さんも、この通りで長く営業を続けておられる老舗。商店街へ入ってすぐ右側、不動産屋さんの真向かいです。

でも、このお店ってちょっとばかり不思議なんですよね。駅からも近い絶好のロケーションなのに、なぜだか見落としてしまいがちなので。この通りを頻繁に通っている僕も、「あれ、きょうは赤城屋開いてたっけ?」と、通り過ぎたあとから思い出したことが何度となくあります。

それくらい、あまりにも無理なく周辺に溶け込んでいるということなのかもしれませんね。

たしかに、古い壁も色褪せた「赤城屋」の文字と電話番号も、なんの違和感もなく風景の一部になっています。だから、その電話番号の市内局番がいまだに「337」と3桁になっていても、あまり気にならないんですよね。

ただし、その下に掲げられた真っ赤な日除け看板は比較的新しく、それはそれでお店の存在感をいい感じに引き立ててもいます。右側と左脇にあるコカコーラの自動販売機と日除けが同じ色合いなので、ベージュの壁との間でちょうどいいバランスが保たれているところがおもしろい。

その日除け看板、店名の頭に「和風食事処」と書かれているのですが、そういうところにさりげないポリシーを感じさせもします(とは大袈裟かな?)。なお、こちらに書かれている電話番号は「3337」。

さて、なかに入ってみましょう。

古い木の引き戸を開けた向こう側の店内は、見かけよりも広い印象。4人がけのテーブル席が何卓も、ゆったりと空間をとって並べられています。厨房はいちばん奥の右側。

ここはね、メニューが非常に充実しているんですよ。なにしろ定食だけでも、「日替り」が「A定食」「B定食」「S定食」「和定食」と4種もあるのです。

しかも通常の定食も、「天ぷら定食」から「おでん定食」まで14種。もちろん、カツ丼や鉄火丼に代表される丼物から、ざるそば、冷やしそうめんなどの麺類までバリエーション豊かすぎ。

さらにホワイトボードには、手書きで書かれた「本日のサービス」と書かれた割引メニューも。「とん汁セット(あじフライ)」と「冷しゃぶセットぽん酢風味(さしみ、あじフライ)」の2種が赤い枠で囲まれていたので、今回は前者をチョイスしてみました。寒い季節には、とん汁が恋しくなりますからねえ。

ちょうどお昼どきだったので、お客さんがぽつりぽつりと入ってきます。といっても騒がしくなるほどではなく、お年寄りから大学生風の青年まで、幅広い年齢層の人たちが静かに共存しているというイメージ。ひとり客が多いし、居心地が抜群。

お店のお母さんの接客が温かくやさしいこともあって、"家庭の延長"という表現がとても似合う感じなんだよなー。

それにね、やがて運ばれてきた「とん汁セット」が、これまたいい意味で家庭っぽいのです。大きなお椀に入ったとん汁にたっぷりのご飯、キャベツの千切りが添えられたあじフライ、そしてお新香と、余計なものがない。

だから、「そうそう、これでいい、いや、これがいいんだ」と感じずにはいられない、そんな理想的な定食。

いまの時代は、インパクト重視の料理を出すお店も少なくありませんよね。もちろん、そういうものもそれなりに魅力的ではあるとは思います。けれど、最終的にはこういう"普通っぽさ"に戻ってくるものではないでしょうか。そう思いません? 僕は思うよ。

豚肉、大根、にんじん、こんにゃくがたっぷり入ったとん汁が、やけどしそうなくらいアツアツなのもうれしい限り。塩分控えめの上品な味つけなので、体にいいものをいただいているなあと感じます。それに量もたっぷりなので、満足感も文句なし。これはあったまるわー。

あじフライも、きわめてベーシックなスタイル。だからこそ、とん汁の引き立て役としていいアクセントになってくれます。ご飯の炊き方も理想的で食べやすく、引き立て役として地味な役柄を与えられたお新香とも相性抜群。

ってなわけで、ひとつひとつは地味ながらも、それらが共存することによって理想的なお昼ごはんとしての在り方を提示してくれているのでした。

高円寺もずいぶんチェーン店が増えちゃったけれど、本当に求められるべきはこういうお店。近所の人はもちろんのこと、他の街から遊びに来た方にも、ぜひ立ち寄ってみていただきたいと思います。

きっと安心できますよ。

●赤城屋
住所: 東京都杉並区高円寺北3-22-2
営業時間: 午前の部11:45~15:00、午後の部17:00~22:00(火曜、木曜は午前の部のみ)
定休日: 土曜、第二・第四日曜

印南敦史 作家、書評家。1962年東京生まれ。音楽ライター、音楽雑誌編集長を経て独立。現在は書評家として月間50本以上の書評を執筆。ベストセラー『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社、のちPHP研究所より文庫化)を筆頭に、『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)、『読書する家族のつくりかた 親子で本好きになる25のゲームメソッド』(星海社新書)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)、『読書に学んだライフハック――「仕事」「生活」「心」人生の質を高める25の習慣』(サンガ)、『それはきっと必要ない: 年間500本書評を書く人の「捨てる」技術』(誠文堂新光社)、『音楽の記憶 僕をつくったポップ・ミュージックの話』(自由国民社)、『「書くのが苦手」な人のための文章術』(PHP研究所)ほか著書多数。最新刊は『いま自分に必要なビジネススキルが1テーマ3冊で身につく本』(日本実業出版社)。 この著者の記事一覧はこちら

続きを読む ]

このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

ネタ・コラムカテゴリのその他の記事

地図を探す

今すぐ地図を見る

地図サービス

コンテンツ

電話帳

マピオンニュース ページ上部へ戻る