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東海大、膝の軟骨欠損部に移植可能な「同種軟骨細胞シート」を開発

2023年01月18日10時28分 / 提供:マイナビニュース


東海大学は1月17日、変形性膝関節症の臨床研究において、多指症患者の除去手術時に廃棄される軟骨組織から作製した「同種軟骨細胞シート」を患者10名の膝関節の軟骨欠損部へ移植し、その全例で術後1年の安全性・有効性を確認したと発表した。

同成果は、東海大 医学部医学科整形外科学/同・大学大学院 医学研究科運動器先端医療研究センターの浜橋恒介准教授、同・佐藤正人教授を中心に、防衛医科大学校、国立医薬品食品衛生研究所、DNAチップ研究所、国立成育医療研究センター、東京女子医科大学、米・ユタ大学の研究者ら計22名の研究者が参加した国際共同研究チームによるもの。詳細は、英科学誌「Nature」系の損傷した組織や器官の修復・置換・再生に関する全般を扱うオープンアクセスジャーナル「npj Regenerative Medicine」に掲載された。

変形性膝関節症は、進行性かつ難治性で、それに加えて罹患率が高い関節の変性疾患だが、現時点では根治的な治療法は開発されていない。そうした中で研究チームが2011年から臨床研究を行っているのが、患者自身の細胞から作成した軟骨細胞シートを移植するという治療法だ。2019年には、変形性膝関節症の軟骨欠損に対する世界初の細胞シートを用いた関節軟骨の再生医療として、「先進医療B」に承認された。

しかし、自己細胞シートを作製する方法は、組織採取のための手術が必要なことが課題だという。また、作製できる細胞シートの枚数が限られているため、適応条件として軟骨欠損部の大きさに制限(臨床研究では4.2cm2未満、先進医療では8.4cm2未満)があったとする。

軟骨組織の主な特徴として、拒絶反応が起きず、自分のものでない組織や細胞が排除されない「免疫寛容」がある。そこで研究チームが着目したのが、1000人に1~3人ほどの割合で生じる疾患で、指が6本以上形成される「多指症」の除去手術において廃棄される軟骨組織だったという。

切除された指関節の軟骨から単離された軟骨細胞に対し、拡大培養を行って凍結保存する。そして各種の安全性検査を実施した上で、免疫不全動物の膝軟骨欠損部分への細胞シートの異種移植によって有効性が確認できた細胞を使用して、同種軟骨細胞シートが作製された。


そして、変形性膝関節症において高位脛骨骨切り術が施行された患者10名の軟骨欠損部へ、この細胞シートの移植が行われた。その結果、全例で術後1年の安全性・有効性が確認されたと同時に、組織学的にも硝子軟骨での再生軟骨の生成が確認された。また、移植された同種軟骨細胞シートの免疫組織学的な検討、細胞表面マーカー、遺伝子発現プロファイル、ならびに細胞シートが分泌する液性因子の分析などの詳細なデータをもとに、同種軟骨細胞シート移植の有効性に関与する遺伝子群も同定された。

2019年に発表された時点での自己細胞シートでは、患者本人からの軟骨細胞の採取手術が必要だったが、今回作製された同種軟骨細胞シートでは採取手術が不要だ。また、自己細胞シートでは作製できる細胞シートの枚数が限られており、適応条件として軟骨欠損部の大きさに制限があったが、同種軟骨細胞シートではあらかじめ十分な枚数を確保できるため、軟骨欠損部の数や大きさの制限なく移植することが可能となった。今回移植が実施された中にも、軟骨欠損が複数個所に認められる症例、あるいは合計で20cm2を超えるような大きな軟骨欠損部がある症例なども含まれていたという。

変形性膝関節症は国内で800万人以上の有症状者がいるとされており、高齢化に伴って今後も患者数の増加が予想される。同疾患は、緩やかに進行する変性疾患ではあるものの、軟骨欠損に対する有効な治療法はこれまでのところ開発されていなかったため、同種軟骨細胞シート移植による再生医療は、人工関節ではなく生物学的な根本治療といえる「関節温存」としての期待が大きいという。

研究チームは、より多くの患者にこの治療を提供できるよう、現在はセルシードと共同で医薬品、医療機器などの品質、有効性および安全性の確保などに関する法律(薬機法)の下での製品としての承認取得を目指して、企業治験を実施するため、医薬品医療機器総合機構(PMDA)との協議を重ねている段階とした。

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