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半導体材料を事業の軸に据え世界と戦う、レゾナックが今後の経営方針を発表

2023年01月18日07時00分 / 提供:マイナビニュース


昭和電工と昭和電工マテリアルズが2023年1月1日付で統合し誕生した「レゾナック」は1月17日、発足説明会を開催し、同社の今後の方向性などの説明を行った。

レゾナックの目指す姿は、「(従来の)石油化学を中心とした総合化学メーカーから、世界トップクラスの機能性化学メーカーへ」というもの。その実現のために、「経営力強化」と「変革と挑戦」の2つが必要だと、同社代表取締役社長 社長執行役員 最高経営責任者(CEO)の髙橋秀仁氏は語る。

髙橋氏は、これまでの仕事人生において、さまざまな企業を見てきた中で、「日本の技術は一流だが、経営には課題が山積みであるという認識になり、世界で通用する会社を作りたいという思いができた」と語る。2015年に昭和電工(現レゾナック)に入社して、同社内に優秀な技術者が多数いること、ならびに若者が希望を持って仕事に従事していることを感じて、世界で戦える企業へと変革させたいと思ってきたという。

そうした思いもあり、2021年に同社ならびに昭和電工マテリアルズの社長に就任して以降、「組織文化情勢」と「人材育成」を掲げ、価値観の共有やリーダーシップトレーニング、タレントマネジメント、キャリアプランニングなどの施策をHRの中心に据え、その思いを伝えるために、2022年は国内外の70拠点を行脚。社員との意識の共有を目指すタウンホールを61回、ラウンドテーブルを110回ほど実施し、1100名を超す社員と直接会話をしてきたという。

「化学メーカーの戦略は今やコモデティ化している。大手化学メーカーの誰が作っても戦略は同じところに落ち着く。差別化の要因は変革をやりきる経営陣がいるか、そしてそれをやりきれる人材がいるかどうか」という視点から、社員が1人でも多く、変革に同意してくれる同士となるべく、車座で予備原稿もなしに20代や30代の若者含め、意見交換をし、思いをぶつけあってきたという。「2023年は社員の方から、(社長のところに)回ってくることを期待している。会社の文化は確実に変化してきたと思っている。2023年は双方向のコミュニケーションに注力していく」と、レゾナックとなった2023年を、新たな一歩と位置付ける。

半導体・電子材料分野に経営資源を集中

レゾナックとして、昭和電工と昭和電工マテリアルズが合併したことで、化学メーカーとしての事業規模は国内7位となり、「世界で戦えるエントリーチケットを得た」と髙橋氏は表現する。また、2020年の日立化成を買収し、昭和電工マテリアルズとして以降、ポートフォリオの入れ替えを断行。これまでにアルミ缶事業やセラミック事業、蓄電デバイス・システム事業、プリント配線板事業など、8つの事業を売却してきた。

「レゾナックとしてのポートフォリオの見直しは、“採算性と資本効率”、“戦略適合性”、“ベストオーナー”の3つのクライテリアで進め、選択と集中を進めていく」とする。その選択と集中として、事業のコアに据えられるのが「半導体・電子材料事業」であり、同社では同事業の比率を2021年の31%(全事業の売上高合計は1兆4196億円)から、2030年には45%へと引き上げることを目指す(目標全社売上高は1.8~1.9兆円)。

「経営資源を半導体・電子材料に集中投資していく。事業部の意思決定を本社が追認する傾向が日本の企業にはあるが、その方法は必ずしも会社全体の最適ではない。部分最適の積み重ねは全体最適にならない」とし、成長性の乏しい事業で得たキャッシュも半導体・電子材料に投資を行うといった考え方を示す。

ここまで高橋氏が半導体・電子材料事業に期待をかける背景として、半導体が継続して成長を続けてきた産業である点が挙げられる。シリコンサイクルに代表されるように好不況が繰り返されてきた半導体業界ではあるが、前の不況を越えた後の好況は、前の好況よりもより市場が拡大するといったことを繰り返してきた。また、コロナ禍で進んだデジタルトランスフォーメーション(DX)に代表されるデジタル化は、より多くの電子機器の活用を人類に促すこととなる。そうした意味では、2023年初頭の現在も半導体市場は軟化傾向にあるが、その中でも好調なデバイスセグメントがあったり、アプリケーション分野があったりと、これまでのPCやスマートフォン(スマホ)の動向だけで市場が支えられてきた状況とは異なっており、半導体デバイスの出荷個数そのものは今後も右肩上がりで伸びていくことが期待される。

また、先端プロセスとしてTSMCが3nmでの量産開始をアナウンスしたが、これまでの半導体の性能向上をけん引してきたプロセスの微細化は物理的な限界が見えてきており、代わって高性能化の鍵を握る技術としてチップレットに代表される3D IC化をはじめとするパッケージング工程、いわゆる後工程(トランジスタ素子形成が前工程)に注目が集まるようになってきた。

レゾナックはそうした後工程材料分野の事業規模では世界トップクラスで、それも1つの製品でそれを実現しているわけではなく、「後工程として主要な材料は10~15種類ほどあるが、そのうち7~8種類ほどでレゾナックは高いシェアを有している。大手化学メーカーでもここまで幅広い種類の材料をSamsung ElectronicsやIntel、TSMC、Micron Technologyといった先端半導体を手掛ける半導体メーカーたちと直接やり取りし、スペックの決定を行い、材料の開発、製造を行っているのはレゾナックだけだと自負している」と髙橋氏は自社の強みを強調する。


材料開発のオープン化を促進

また、レゾナックとして統合されたことで、材料開発にもシナジーのメリットが出ているとする。昭和電工は素材を構築するための分子設計に長け、昭和電工マテリアルズ(旧日立化成)はそうして作られた素材を混ぜ合わせ機能設計することに長けているためで、「市場から求められる機能を昭和電工マテリアルズ側から昭和電工側にフィードバック、それを受ける形で新技術を昭和電工から昭和電工マテリアルズに提案するといった市場に最適なものを提供しやすくなった」といった動きがすでに目に見える形ででてきたとする。

こうした共創活動については社内だけで終わらせることなく、社外のパートナーとの連携も強化していくことをレゾナックでは掲げている。

「化学はたくさんの良いものを提供してきたが、地球環境に負荷をかけてきた。化学メーカーとして、この課題に真摯に向き合う意思表示として、パーパスを『化学の力で社会を変える』とした。しかし、この課題はあまりにも大きいため1社では解決できない。エコシステム全体で連携する必要がある。レゾナックはそうしたエコシステムが“つながる”起点となる共創型化学会社へと変化していく」と、オープンイノベーションを活用していくことを掲げる。

その実現のために会見では3つのオープンイノベーション戦略が披露された。1つ目はレゾナックの研究開発の中核となるオープンイノベーション施設で、2024年の全面オープンに向けて、2023年より開発メンバーの入居を開始。その対応分野も計算科学、材料解析、量産化技術・設備管理、化学品安全管理・評価などに加え、70名のAIスペシャリストなどと多岐にわたり、中長期の新技術探索を社内の技術者のみならず、社外の地域や企業との連携も開かれた形で推進していくとする。

例えば、長期研究開発のテーマとしては6Gの実現に向けた次世代高速通信材料の開発であったり、プラスチックtoプラスチックを実現するための技術開発などがあるという。6Gの実用化は2029年~2030年ころと見られており、2025年には大まかな技術の方針が打ち出される見通し。3~5年ほどのタイムスパンであり、長期というほどではないように思われるが、AI技術、特に材料分野においてはマテリアルインフォマティクス(MI)の発展が著しく、これまで10年かかっていた研究が、圧倒的に短い期間でできるようになってきたといった背景があり、数年というスパンでも長期として位置づけられるようになってきたという。同社でもすでに、「従来、1つの素材の組み合わせを計算するのに3か月かかっていたが、計算科学の発展により、3か月で90種類の検証が可能になった」と説明する。

2つ目は電気自動車(EV)をはじめとする自動車の電動化を推進することを目指した「パワーモジュールインテグレーションセンター」。文字通り、自動車で用いられるパワーモジュール関連材料の評価、実証のための拠点という位置づけ。電動車(xEV)の燃費(電費)や航続距離を向上させるためには、パワーモジュールから生じる熱をコントロールすることが1つの鍵となる。それを実現するためには素材の持つ能力を活用することが必要であり、こちらも2023年より顧客との共創を進めるとしている。

同社は車載向けパワー半導体として期待されているSiCのエピウェハでも高いシェアを有しており、先般発表されたInfineon Technologiesとの長期供給契約をはじめ、多くのSiCパワー半導体メーカーに対してSiCエピウェハを供給している。ただし「あくまでレゾナックが手掛けるのはSiCエピウェハまで」(髙橋氏)とのことで、その先まで手掛けることは現在は想定していないとする。
このパワーモジュールインテグレーションセンターでは、「機能改善に必要な材料面の進化を踏まえたパワーモジュールを試作し、評価を行い、シミュレーションも活用し、各社のパワーモジュールの特性に合わせた補正まで行う計画。ゴールは顧客の開発期間短縮であり、2025年までに採用期間までのスケジュールの短縮を実現することを目指す」としている。

そして3つ目は「パッケージングソリューションセンター」。後工程ラインを設置し、オープンイノベーションとして広く公開している。そのため、半導体メーカーは他社の材料も組み合わせた実験なども行うことが可能となっている。

このパッケージングソリューションセンターはもともと日立化成が所有していたもので、すでに次世代半導体パッケージ実装技術開発のためのコンソーシアム「JOINT2(ジョイント2)」が、装置や材料を組み合わせ半導体チップを重ねる接合技術、チップを横につなぐ配線技術、基板の大型化技術といった3つのテーマの開発を進めている。

なお、同社では今後の方針として、市場や顧客を意識した材料開発が重要であるとの認識を示しており、その実現のために共創の仕組みを多く作り出していくことを目指すとするほか、そうした取り組みを通じて、市場にアクセスできる技術力を次々と育てあげていくことで、市場のけん引役となることを目指すとしている。

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