2023年01月17日08時03分 / 提供:マイナビニュース
2022年12月19日、イェール大学などの研究グループは、薬物や食べ物に対する"渇望"の強さを予測するための脳活動パターンを特定したと発表した。では、この脳活動パターンを特定できることで、どのようなメリットが生まれるのだろうか。今回は、こんな話題について紹介したいと思う。
薬物や食べ物の"渇望"の強さを予測できるバイオマーカーとは?
イェール大学・ダートマス大学・フランス国立科学研究センター(CNRS)らの研究グループは、薬物や食べ物に対する"渇望"の強さを予測するための脳活動パターンを特定したと発表した。
実は、薬物の使用やその再発においては、この"渇望"というものが重要な要因になっていることがわかっている。しかしながら、脳や神経基盤がどのようにこの渇望を引き起こすのかはわかっていない。そこで研究チームは、糖尿病のバイオマーカーであるHbA1cという血液マーカーのように、この渇望を示す脳パターンとなるバイオマーカーを発見することを試みたのだ。
そこでダートマス大学とフランス国立科学研究センターは、AIアルゴリズムを開発。磁気共鳴機能画像法(fMRI)で得られる画像をAIによって分析することにより、"渇望"に関する脳パターンを特定することを目指したのだ。
今回の研究には99人の被験者が参加し、薬物やとても美味しそうに感じる食べ物の画像を見ている際に、fMRIで画像を収集。被験者がどれだけ渇望しているのかを評価した。そして研究チームは、薬物や食べ物への渇望の強さを予測できる脳活動パターンの特定に成功したという。ちなみにこの脳活動パターンは、Neurobiological Craving Signature(NCS)と呼ばれている。
例えば将来的にこのNCSに関する研究が進むことで、ストレスや否定的な感情が、薬物の使用や暴飲暴食への衝動をどのように増加させるかを測定することができるようになるという。そして、メンタルコントロールや薬物への抑止力、ダイエットの効率化にまで幅広く役立つ治療となるのだろう。
研究成果は、2022年12月19日に『Nature Neuroscience』に掲載されている。
いかがだっただろうか。NCSを活用することによって、誰が薬物依存や暴食などの傾向を持っているのかを特定でき、人生を助け、別の方向へと向かせる良い治療手段になると期待できる。興味深い研究成果だ。
齊田興哉 さいだともや 2004年東北大学大学院工学研究科を修了、工学博士。同年、宇宙航空研究開発機構(JAXA)に入社し、2機の人工衛星プロジェクトチームに配属。2012年日本総合研究所に入社。官公庁、企業向けの宇宙ビジネスのコンサルティングに従事。 現在は、コンサルティングと情報発信に注力。書籍に「宇宙ビジネス第三の波」、「図解入門業界研究 最新宇宙ビジネスの動向とカラクリがよ~くわかる本」など。テレビ、新聞、Webサイト、セミナー・講演も多数。 この著者の記事一覧はこちら