2023年01月12日18時48分 / 提供:マイナビニュース
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国立天文台は1月11日、「うみへび座TW星」を取り巻く原始惑星系円盤を観測したアルマ望遠鏡のアーカイブデータを用いて、感度がこれまでより10倍以上高い画像を作成してそれを解析した結果、円盤の中心近くにあるガスが出す電波からこれまでの感度でははっきりとはわからなかった特徴を捉えることに成功したことを発表した。
また、その特徴は惑星の大気のような、ガスの密度が非常に高い場所から放射される電波とよく似ていたことから、円盤の中心付近にあるガスの密度は惑星の大気と同じくらい高く、予想外に多く存在していることを確認したことも併せて発表された。
同成果は、総合研究大学院大学の吉田有宏大学院生らの研究チームによるもの。詳細は、米天体物理学専門誌「The Astrophysical Journal」に掲載された。
惑星は、若い恒星を取り巻く原始惑星系円盤の中で形成されることが知られている。中でも木星のような巨大ガス惑星は、円盤中のガスを材料として誕生する。惑星の形成後は、残ったガスは円盤から外へと流れ出して、現在の太陽系のようにガスが存在しない惑星系になる。このことから、惑星系の形成過程を理解するためには、多種多様な原始惑星系円盤でのガスの量を測定することが必要だという。しかし、これまではさまざまな制約のために測定が進んでいなかったとする。
そこで研究チームは今回、うみへび座TW星を取り巻く原始惑星系円盤を観測したアルマ望遠鏡のアーカイブデータを用いて、感度がこれまでより10倍以上高い画像を作成し、解析を行うことにしたという。
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作成された画像を解析したところ、円盤の中心付近に存在するガスが出す電波から、これまでの感度でははっきりとは確認できなかった特徴を捉えることに成功したとする。その特徴は、惑星の大気のような、ガスの密度が非常に高い場所から放射される電波とよく似ていたという。これは、円盤の中心近くにあるガスの密度は、惑星の大気と同じくらい高くなっていたことを示すとする。
さらに解析が進められた結果、太陽系における木星軌道にあたる中心からおよそ5天文単位より内側の領域に、木星の質量の7倍にも相当する大量のガスが存在することが判明したともする。今回の対象となったうみへび座TW星は、原始惑星系円盤を持つほかの若い星よりも年齢が高く、そのためこれほど大量のガスが存在するとは予想されていなかったと研究チームでは説明している。
また、うみへび座TW星の過去の観測データと比較すると、木星軌道より内側に存在するガスの量が急激に多くなっていることも確認されたという。ガスは、時間の経過とともに円盤の内側へとゆっくり移動していると考えられているが、その移動速度が急に変化すると、ある特定の場所にガスが溜まる。このことは、惑星形成の材料となるガスが木星軌道付近に集積し、惑星系の形成を促進していることを示しているとした。
なお、研究チームでは今後、今回と同様の手法をほかの原始惑星系円盤にも適用し、さまざまな特徴、さまざまな年齢の円盤に存在するガスの量を調べて、ガスが失われる過程や惑星系が形成される過程を明らかにしていきたいとしている。