旬のトピック、最新ニュースのマピオンニュース。地図の確認も。

名大、中枢神経系原発悪性リンパ腫の診断を90分で可能とするシステムを開発

2023年01月12日18時20分 / 提供:マイナビニュース


名古屋大学(名大)は1月11日、85症例の「中枢神経系原発悪性リンパ腫」(PCNSL)の遺伝子異常と予後の統合解析を行い、「CD79BY196変異」は、PCNSLに対する抗がん剤などを併用した「R-MPV」療法の良好な反応性の予測因子になることを同定したと発表した。

また、PCNSLで特異的かつ高頻度に見られる「MYD88L265P変異」を診断マーカーとして、同変異とCD79BY196変異を同時かつ迅速に解析するシステムを開発し、PCNSLの分子診断と治療反応性の予測を、従来は生検術後1週間ほどを要していたところ、90分以内で判定することが可能となったことも併せて発表された。

同成果は、名大大学院 医学系研究科 脳神経外科学の山口純矢医員、同・大岡史治講師、同・齋藤竜太教授らの研究チームによるもの。詳細は、がん医学に関する全般を扱うオープンアクセスジャーナル「Cancer Medicine」に掲載された。

PCNSLは希な脳腫瘍ではあるが、高齢者に好発するため、近年の高齢化に伴いその発症数が増加しているという。多くの悪性脳腫瘍と異なり、化学療法や放射線療法に感受性が高く、手術は診断を目的とした生検術に留め、放射線化学療法を行うことが基本治療方針となっている。化学療法の発達に伴い予後は改善してきているが、長期生存者では認知機能の低下などをきたす放射線治療後の晩期障害が問題となるため、化学療法の強度を上げ、放射線治療の強度を下げる、または省略するという方針で治療戦略の開発が進められている。

現在は、減量放射線療法を併用したR-MPV療法が国内外で広く行われているが、その疾患の希少性から、R-MPV療法の長期予後、感受性因子については、まとまった症例数を用いての調査が行われていなかったという。また、近年の網羅的遺伝子解析により、PCNSLではMYD88遺伝子、CD79B遺伝子の点突然変異が高頻度に見つかることが報告されているが、これらの遺伝子変異と予後の関係についても十分に調べられていなかったとする。

そこで研究チームは今回、これまでの標準的な治療だった、抗がん剤「メソトレキセート」を高容量で使用する「HD-MTX療法」と比較したR-MPV療法の長期予後、MYD88L265P変異、CD79BY196の変異と予後の関係性についての検討を行うことにしたとする。


今回の研究では85症例の初発のPCNSL患者が対象とされ、その遺伝子異常と予後の関係性が調査された。85症例中の治療法の内訳は、21例がHD-MTX療法、64症例がR-MPV療法だ。調査の結果、R-MPV療法は、HDMTX療法と比較して有意に予後良好であることが判明した。長期生存者ではR-MPV療法治療群で、良好な全身状態が保たれている傾向が示されたという。

そして遺伝子解析の結果に関しては、MYD88L265P変異は70.2%、CD79BY196変異は40.4%の症例で同定されたとする。MYD88L265P変異の有無と無増悪生存期間、全生存期間の間に関係性は認められなかったが、CD79BY196変異が陽性だった症例では、R-MPV療法で治療が行われた場合、無増悪生存期間、全生存期間が有意に延長していることが確かめられた。この結果は、HD-MTX療法で治療を受けた症例群では認められず、CD79BY196変異はR-MPV療法の良好な反応性を予測する因子であることが明らかにされた。

MYD88L265P変異は、悪性脳腫瘍の中ではPCNSLに特異性が高く診断マーカーとして応用が可能だという。そこでCD79BY196変異と同時に判定することで、PCNSLの分子診断とR-MPV療法の反応性を同時に判定するシステムの開発が行われた。PCNSLの診断目的に生検術を予定された連続4症例に対して、採取された腫瘍組織から遺伝子が抽出され、同システムでの解析が行われた結果、90分以内に正確な判定を得ることができたとする。

続きを読む ]

このエントリーをはてなブックマークに追加

ネタ・コラムカテゴリのその他の記事

地図を探す

今すぐ地図を見る

地図サービス

コンテンツ

電話帳

マピオンニュース ページ上部へ戻る