2022年12月26日18時21分 / 提供:マイナビニュース
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2022年8月に米連邦議会の可決を経てバイデン大統領が署名して成立した「CHIPS and Science Act(CHIPS法)」は、5年で527億ドルの半導体産業強化予算を具体的に充当した法律である。
このCHIPS(Creating Helpful Incentives to Produce Semiconductors for America)法の趣旨は、2020年春に連邦議会から発表されていたため、半導体および関連企業各社は、法律の成立を待たずに補助金目当てに米国内工場の新増設の計画を進めてきた。
米国半導体工業会は(SIA)は、CHIPS法の影響による米国内工場の新増設状況を調べるために2020年5月から2022年12月にかけて発表された今後10年間に及ぶ米国における半導体関連投資計画を集計。担当したSIA工業統計および経済政策担当ディレクタのRobert Casanova氏によると、以下のような結果となったという。
いままでに40以上の半導体および関連工場の新増設プロジェクトが発表(新ファブの建設、既存ファブの拡張、半導体製造装置・付帯設備・材料のための施設の新増設を含む)
米国内の半導体製造能力を高めるために、16州で合計約2000億ドルの民間投資が行われる
新しい計画の一環として約4万人の新規雇用が創出され、より広範な米国経済全体でさらに多くの雇用を生む可能性がある
米国本土の半導体製造工場建設計画
2020年5月から2022年12月までに計画された、今後10年間に米国内に新増設される半導体製造工場への投資額および新規雇用数を見ると、投資は13州22案件におよび、合計27ファブが新増設される。投資総額は、今後10年間で1866億ドルであるが、Micron Technologyはニューヨーク州で20年以上先までの投資を計画し、Intelもオハイオ州で10年以上の先までの投資を計画しており、これら10年を超す投資を含む総額は3466億ドルに上り、3万4708人の雇用創出が期待される。
1ファブあたりの最大投資は、TSMCのアリゾナ工場新設(400億ドル)だが、Intelによるアリゾナ州(200億ドル)、オハイオ州(200億ドル)、ニューメキシコ州(35億ドル)という3拠点の合計投資額は435億ドルとなり、企業単位では最大の投資となる。
10年あるいは20年を超える長期投資としては、Micronによるニューヨーク工場の新設およびIntelオハイオ工場の建設が各1000億ドル(10年以内に限れば各200億ドル)で最大である。
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米国への半導体製造装置・材料工場建設計画
半導体工場が多数建設されるのに伴い、必然的に工場で使用される製造装置、付帯設備(真空ポンプなど)、高純度薬品やガス、シリコンウェハ、金属ターゲット、パッケージ材料などといった周辺メーカーも投資を進めることになる。
その投資総額は900億ドルで、新規創出雇用は4971人となっている。これら半導体関連産業工場と半導体工場への投資を合計すると約2000億ドル(正確には1956億ドル)となり、日本勢としては、関東化学、富士フイルム、JX金属(ともにアリゾナ州)、三菱ガス化学(オレゴン州)といった企業の名前が見受けられる。米国政府は、国内完結の材料供給体制確立に向け、さらに誘致活動を進めており、今後、材料分野で強みを持つ日本企業の米国進出が増加しそうである。
補助金の分配はどうなるか?
CHIPS法の予算としては、390億ドル(5年間の総額、初年度は190億ドル)が米国で半導体関連投資を行う企業への援助に充てられ、管轄省庁の商務省は2023年2月までに申請の受け付けを開始する予定としている。TSMC、Samsung、Intelなど多くの企業が、資金援助が正式に公表される前から、支援を期待して工事を始めてきた。しかし、補助金を期待する企業が続々と参入してきており、1社あたりの補助金額は期待よりはるかに少ないか、補助金を支給されないケースも出そうな状況である。