2023年01月17日16時50分 / 提供:マイナビニュース
●物流拠点の業務効率化×自動搬送ロボット
急務となった業務効率化に「RaaS」活用で取り組む山善
日々の生活に不可欠な物流の現場では、「人手不足」が喫緊の課題となっている。特に、働き方改革によるドライバーの時間外労働時間の制限に起因する「2024年問題」は、物流を生業にする企業に対して抜本的な業務効率化を迫っている。
その流れを受けて注目を集めているのが、ロボットを活用した物流の自動化・省人化だ。人の手では難しい重量物の運搬や、広い倉庫におけるピッキングの自動化などの作業などをロボットが肩代わりすることで、作業者の負担を軽減することなどが期待されている。
そんな中、ロボットを導入することで大規模物流拠点における「仕分け作業」の大幅な効率化を行った企業の1つに、山善がある。幅広いジャンルの商社としてさまざまな商品を取り扱う同社は、プラスオートメーションが提供する「RaaS(Robotics as a Service)」を活用し、作業の効率化に成功したとのことだ。今回は、その導入の背景や効果について、山善の担当者に話を伺った。
自動化の契機は得意先からの大型受注
山善は、工作機械や機械工具などものづくりの現場で活躍する"生産財"と、住宅設備機器や家庭機器などの「くらし」に関わる"消費財"を販売する専門商社だ。
同社は2021年11月、消費財販売における物流拠点「ロジス関東」(群馬県伊勢崎市)の省人化に向け、プラスオートメーションが提供する搬送ロボット「t-Sort」を活用した物流ソリューションを導入した。
山善の担当者によると、以前から物流業務の効率化に対する要求が高まっていた中で、t-Sortの導入に至るきっかけとして、得意先からの大型受注があったという。
「得意先に新たな商品群を販売することになったのですが、その販売アイテム数は800種類ほどありました。また、配送先となる店舗数も数百店舗と多く、商品配送における仕分け業務が非常に煩雑になることが予想されたため、そのタイミングで自動化に関する具体的な検討を開始しました」とのこと。従来は12名での作業を行っていた仕分け作業について、省人化を一気に進めるための検討を開始したという。
●ロボット導入による大幅な作業方式の転換に着手
打ち合わせ開始から導入までの期間は?
そういった経緯で、物流現場向けロボットのt-Sortによる自動化ソリューションを提供するプラスオートメーションとの打ち合わせを開始した山善。両社の打ち合わせの中では、ロボットが担う業務に加えて、ロボットが稼働可能なスペースの確認などが行われたという。t-Sortによるソリューションの特徴として、可動範囲がカスタマイズしやすいことがあり、「スペースや形の組み合わせが自由で、我々が提示した範囲の中でプラスオートメーションから最適な提案をしてくれて、スムーズな稼働開始に至りました」と話す。
また、山善の担当者が語るように「稼働開始までのスムーズさ」という点もt-Sortによる自動化の強みだといい、実際、ロジス関東での自動化に向けた工事の開始から本稼働までは1週間程度だったそう。これについては担当者も「想定以上の早さでした」と語った。
その要因の1つには、t-Sortの稼働がシステムに干渉しない点を挙げる。ロボットを制御するPCに作業用データであるCSVファイルを取り込むことで稼働するため、社内システムとの連携や新たなシステム構築が不要で、導入工数の削減を実現できたとする。
「トータルピッキング方式」への転換
山善は打ち合わせを経て、50個の仕分け箱が設置された長方形の仕分け場をロジス関東に構築し、24台のt-Sortを稼働させるに至った。
仕分け場は路面が塩ビシートに覆われており、その中にはタグが埋め込まれている。t-Sortはその上を自走して、長方形両端にある商品投入口と各仕分け箱を行き来するという。また、仕分け場内には充電用ステーションも設置されており、ロボット自体が自動充電を行うため、24時間稼働できる。
今回の導入では、仕分け方式が従来の「シングルピッキング方式」から「トータルピッキング方式」へと変更された。ちなみに前者は、配送先の店舗それぞれに必要な数の商品を個別にピッキングする方式であるのに対し、後者は配送先全体で必要な量の商品を倉庫からピッキングした後に、各配送先へと必要量を振り分けるものだ。
ロジス関東の場合では、ロボットへの商品積載を行う投入口を仕分け場の両端に設置。スキャナで商品のJANコードを読み込んでからt-Sortの荷台に置くことで、自動で適切な配送先の仕分け箱に振り分けるという。そして、各配送先への仕分け状況はデータで管理されており、必要な商品の運搬が終わった仕分け箱から梱包に移ることができるのだ。
●物流現場におけるRaaS活用の可能性
自動搬送ロボットがもたらした2つの効果
では、自動化ロボットの導入の効果はどれほどだったのだろうか。
わかりやすい指標は、元来の自動化の目的でもある「省人化」だ。これについて山善の担当者は、「それまで12人で行っていたピッキングと仕分けの業務が、5人で行えるようになった」と話す。3倍に迫る業務効率の向上によって、当然人件費も削減される。そのコストパフォーマンスについても効果が見られたといい、「t-Sortは月額制でのレンタルで、月あたりの費用と削減された人件費で比べると、前者の方がはるかに小さい」とする。
また、t-Sortの導入で得られたもう1つのメリットに「作業ミスの減少」を挙げた。従来のシングルピッキング方式では、各配送先での必要数を都度確認する必要があり、また人手での作業だったために、ミスが発生することがあったという。しかし、t-Sortの導入により仕分け作業をロボットが行うようになったため、「配送数量のミスは限りなくゼロに近くなった」とのことだ。
さらなる自動化へ積極的にチャレンジ
前出の担当者は今後もさらなる自動化を目指すといい、「協働ロボットを活用してJANコードの読み取りやロボットへの積載ができれば、さらなる省人化も実現できる」と語る。
また、幅広い商品群を取り扱う同社は、今回の事例を幅広く活用する可能性があるとのこと。2023年の本格稼働開始を予定する新拠点の「ロジス新東京」(埼玉県北本市)でも、積極的に自動化ソリューションの活用を検討する見込みだとし、「今回のロジス関東の事例をさまざまに広げていきたい」と担当者は語る。
大型受注を契機として、自動搬送ロボットによる大規模な仕分け自動化に取り組んだ山善。日に日に重要性を増す物流現場の業務効率化に向けて、チャレンジを続ける。