旬のトピック、最新ニュースのマピオンニュース。地図の確認も。

国立天文台、木星の気温が一定間隔で変動することを40年間の観測で発見

2022年12月21日11時43分 / 提供:マイナビニュース


国立天文台ハワイ観測所は12月20日、米国航空宇宙局(NASA)の宇宙探査機とすばる望遠鏡などの地上望遠鏡の観測データを組み合わせて、木星の対流圏上層部の温度を過去最長の期間にわたって追跡調査した結果、木星の気温が四季とは関係なく一定の間隔で変動することを発見したと発表した。

同成果は、NASA ジェット推進研究所(JPL)のグレン・オートン上級研究員、英・レスター大学のリー・フレッチャー博士、国立天文台ハワイ観測所の藤吉拓哉博士らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、英科学誌「Nature」系の天文学術誌「Nature Astronomy」に掲載された。

木星の対流圏は大気の低層部に位置し、同惑星のトレードマークともいえる、色とりどりの縞模様の雲を形成するなど、地球の対流圏と同様にさまざまな気象活動が起こっている。それらを理解するためには、風・気圧・湿度・温度など、さまざまな特性を調べる必要があるとする。

木星の気温については、1970年代前半にNASAが送り込んだパイオニア10号・11号のフライバイ観測以降、明るくて白い帯(ゾーン)は一般的に温度が低く、茶色や赤色の帯(ベルト)は比較的温暖であることが判明している。しかし、それらの帯の温度が長期的にどう変化するかを理解するには、今まで十分なデータがそろっていなかったという。

そこで研究チームは今回、大気の暖かい領域(対流圏上層部)からの赤外線の輝きをとらえた画像を分析し、木星の色とりどりな雲の上の温度を直接測定することで、この状況を打開することにしたという。これらの画像は、12年かけて木星が太陽を周回する様子を3周分一定間隔で撮影したものだ。

なお、今回の研究をオートン上級研究員がスタートさせたのは、ボイジャー1号と2号が木星を訪れる前年の1978年のことだという。近年は、NASAの赤外線専用望遠鏡「IRTF」(1979年稼動)、ヨーロッパ南天天文台がチリに建設した超大型望遠鏡「VLT」(1998年稼動)、そしてすばる望遠鏡(1999年稼動)という3つの地上大型望遠鏡で年数回の観測が行われてきた。

ちなみに、すばる望遠鏡の観測データは、2020年に引退した中間赤外観測装置「COMICS」によるもの。2005年5月から2019年5月までの14年間に行われた20回以上もの観測で取得したデータが利用された。


40年に及ぶ観測とデータ分析の結果、木星の気温は季節やそのほかの周期とは関係なく、一定の間隔で暖かくなったり寒くなったりしていることが判明。地球の自転軸が太陽に対し23.5度も傾いているのに対し、木星は3度しか傾いておらず、四季による変化に乏しいため、気温がこれほど規則正しく変動するとは予想外だったという。

また今回の研究では、何千kmも離れた地点同士の気温変化に不思議な関係性があることも明らかにされた。それは、北半球側の複数の地点で気温が上昇すると、南半球側の同じ緯度の地点で気温が低下し、それが規則的なパターンで反転しながら繰り返される、というもの。地球でも、ある地域の天気や気候のパターンがほかの場所の天気に大きな影響を与えることがあり、変動パターンが大気中のはるかな距離を越えてテレコネクトしている(遠隔相関がある)ように見える現象だという。

研究チームは次の課題として、この周期的で一見同期したような変化の原因を探ることを挙げる。しかし、木星大気中おいて発生するこのパターンは、何によって生み出されているのか、またなぜ特定の時間スケールで発生するのかは不明で、それらを理解するためには雲の層の上下両方を探索する必要があるとした。

木星大気の研究者らは、今回の結果が木星の天気の詳細な理解に貢献し、さらにはその予測にまで発展することを期待しているという。また今回の研究は、木星だけではなく、土星などの太陽系のほかの巨大惑星に加え、太陽系外にも存在するすべての巨大惑星の気候モデルへの重要な制限となり得るとしている。

研究チームは、温度変化とその周期を長期にわたって測定し、木星大気内でそれらの原因と結果を結びつけることができれば、完全な木星天気予報を実現するための一歩となるとする。より大きな観点からの課題は、いつか今回のような研究を他の巨大惑星にも拡張し、同様のパターンが見られるかどうかを検証するとのことだ。

続きを読む ]

このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

ネタ・コラムカテゴリのその他の記事

地図を探す

今すぐ地図を見る

地図サービス

コンテンツ

電話帳

マピオンニュース ページ上部へ戻る