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名大など、独自開発したプラズマ技術で金属炭化物のドライエッチングに成功

2022年12月19日19時36分 / 提供:マイナビニュース


名古屋大学(名大)は12月16日、独自開発した「フローティングワイヤープラズマ」にアンモニア水蒸気を導入することにより、チタンとアルミの3元金属炭化物「TiAlC」の表面変質層を形成し、この材料を揮発除去するドライエッチングに成功したことを発表した。

同成果は、名大 低温プラズマ科学研究センターのティ・トゥイ・ガーグエン特任助教、同・堀勝教授、同・石川健治教授らと、日立製作所・日立ハイテクの研究者も参加した共同研究チームによるもの。詳細は、英オンライン総合学術誌「Scientific Reports」に掲載された。

現在の電子部品の製造技術では、1つの回路に10億個以上もの電界効果トランジスタを集積することが可能だ。その電界トランジスタの構造に関する技術トレンドとしては、シリコン半導体部分に背びれ状の構造を持つfin型から、シリコン半導体部分を複数の板に連ねた構造にしてゲートがその板を取り囲む構造のGate all around(GAA)型への移行が検討されている。そのため、ゲート部分の複雑な構造を作製するために、シリコン(Si)以外の材料にチタン(Ti)やアルミニウム(Al)の窒化物が使用されるようになってきているところだ。

一方、電界効果トランジスタの高集積化と低消費電力化には、トランジスタ構造のGAA型への変更に加え、ゲート材料にTiやAlの炭化物を利用することが候補に挙げられている。さらに、TiとAlの多元金属炭化物(TiAlC)の必要性と、その実用化のための微細加工技術の研究も進められている。

原子レベルでの加工を実現するためには、薬液による溶解除去方法は使用できず、揮発除去を実現する化学的なドライエッチング方法が必要となる。しかし、複数の物質を精密に混合して得られる薬液では、複雑な組成比の被加工物でも高選択的に溶解除去ができるが、ドライエッチング方法では、元素ごとに揮発性が異なることが多いため、その化学組成に依らず高選択的に被加工物を除去することが困難だったとする。

そこで研究チームは今回、プロセス圧力を通常のドライエッチングよりも上げ、圧力が高い状態でも高密度プラズマ(1015cm3)の生成が可能な、独自開発のフローティングワイヤープラズマ技術を活用することで、アンモニア水蒸気のプラズマ生成を高効率に実現することにしたという。


なおフローティングワイヤープラズマとは、ガラス容器の中に、電気的に浮遊している導電性の細線(フローティングワイヤー)を設置して、その細線に高周波を誘導結合で電力を印加して、容器内に広範囲にプラズマを生成する技術だ。プラズマ生成する圧力範囲が大気圧(10万Pa)から低圧(数Pa)までと幅広く、特にこれまで困難とされている数百Paから数万Paの圧力範囲で、高密度(~1015cm-3)プラズマの生成や、蒸気を原料とするプラズマの生成も可能である。

そして、フローティングワイヤープラズマを用いて、アンモニア水蒸気から生成する主要なラジカル成分(OH(ヒドロキシルラジカル)とNH(イミノラジカル))を、高密度に反応表面に供給することに成功したという。さらに、この高密度なラジカル供給により、TiAlC表面に薬液処理と類似の反応を生じさせ、変性層を形成することにより、炭素除去に応じてTiとAlの酸窒化物の構成比を調節することで、揮発性を制御できることが解明された。

この成果は、半導体集積回路の最先端電界効果、トランジスタのゲート電極の微細加工形成における基盤技術創生において、世界に先駆けて実現し、その実用化しうるポテンシャルを持つことを十分に示唆する結果だという。

また今回の研究では、Si半導体材料の原子層エッチング(ALE)技術の実用化が実現され、これにより多元物質のALEも可能となった。研究チームは、これまで困難だった金属炭化物のALEの実用化を実現することで、ALE技術の発展において重要なマイルストーンを達成したものであり、微細加工技術の飛躍的な技術の進歩を示すものとした。

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