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形成途中の太陽型原始星を取り巻く微小な氷の化学的特徴、JWSTを用いた観測で判明

2022年12月15日20時20分 / 提供:マイナビニュース


理化学研究所(理研)は12月14日、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)を用いた赤外線観測により、分子雲中で形成途中の太陽型原始星を取り巻く微小な氷の化学的特徴を明らかにしたことを発表した。

同成果は、理研 開拓研究本部 坂井星・惑星形成研究室のヤン・ヤオルン研究員、同 坂井南美主任研究員のほか、海外の研究者も参加した全16名による国際共同研究チームによるもの。詳細は、米天体物理学専門誌「The Astrophysical Journal Letters」に掲載された。

この20年間にわたる星間化学分野の進展により、太陽系で最も古い物質を含むと考えられている彗星や、誕生したばかりの原始星などから、地球の生命の誕生に必要な有機分子と同様の物質が検出されるようになってきた。それらの有機分子は、星の誕生の場である分子雲に含まれる塵の表面で水分子(氷)とともに作られたと推測されている。

このような塵の周囲で凍りついた有機分子を特定するには、赤外線分光法が有効とされており、理論計算や実験などで得られているデータと、実際の観測データを比較することで、その赤外光の吸収原因となる氷を特定し、そこに含まれる分子の組成を調べることが可能だという。

しかし従来の赤外線天文衛星では、原始星の周囲から有機分子を検出するには感度が不足していた。それに対し、JWSTは感度がこれまでの100倍に向上しており、氷に含まれるさまざまな有機分子も捉えることが可能となったほか、塵表面の氷だけでなく、一部のガス状の分子も十分な空間分解能で観測できる性能を有しているという。

そこで研究チームは今回、JWSTを用いておおかみ座の方向、地球から約500光年の距離にある暗黒星雲「B228」において形成途中の太陽型原始星「IRAS15398-3359」の周りに存在するさまざまな分子を含む氷を、中間赤外線分光観測により調べることにしたという。


具体的には、中間赤外線観測装置の中分解能分光モードを用いて、波長5μm~28μmの赤外線吸収スペクトルが取得された。そのスペクトルには、水、二酸化炭素、メタン(CH4)などの単純な分子のほかに、これまでの観測では確定できていなかったホルムアルデヒド(H2CO、波長6.7μm)、メタノール(CH3OH、波長9.74μm)、ギ酸(HCOOH、波長7.24μm)などの有機分子による吸収も明確に認められたという。

また、ほかの分子による吸収線と混合しているものの、エタノール(C2H5OH)やアセトアルデヒド(CH3CHO)など、より複雑な有機分子による吸収の影響を受けていると思われるスペクトルも得られたとする。これらの有機分子は、最終的には原始惑星系円盤に取り込まれる可能性があるという。

さらに、水素(H2)、一酸化炭素(CO)、電離したネオン(Ne)や鉄(Fe)などについては、吸収ではなく発光のスペクトルも検出されたとする。これは、原始星周辺の温度や衝撃波領域の有無、原始星から放出された物質と周囲のガスとの相互作用なども調べられることを意味すると研究チームでは説明する。

実際、今回の観測では偶然ながら原始星から噴き出したジェットによって作られた殻状の痕跡を発見することにも成功したという。これまではぼやけて形がほとんど確認できなかったが、JWSTの高感度により初めて殻状になっている様子が明確に捉えられ、原始星から放出されたガスによる衝撃の様子が解明されたとする。

今後について研究チームでは、詳細なモデルやガス中に含まれる類似分子との比較研究などが進めば、「はやぶさ2」が検出した太陽系始原物質に含まれる複雑な有機分子の起源との関連についても解明が進むことが期待できるとしている。

また、今回の観測から、氷の存在量を導き出すことが非常に複雑であることも示されたとしており、今後、実験室での測定と数値モデルを用いて、検出されたスペクトルの特徴をモデル化することで、氷の存在量を推定することを検討中としているほか、今回得られたデータは、4つの原始星にある氷の特徴をJWSTで総計25時間にわたって観測した上で比較するという、ヤン研究員らの計画の一部であり、残りの3つの原始星の観測を2023年春に行うことを予定しているとする。

なお、IRAS15398-3359を取り巻くガスには、塵に付着した氷から蒸発したメタンにより生成されたと考えられる不飽和有機分子が、ほかに比べて多く存在しているとのことで、4つの原始星の観測結果がそろえば、ガスと塵表面の氷の両方の化学組成の関係を詳細に比較できるようになり、原始星ごとの化学組成の違いの原因も解明できる可能性があるという。

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