2022年12月15日15時00分 / 提供:マイナビニュース
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コロナ禍でテレワークが浸透した後、オフィス勤務もみなさ折れたことで、ハイブリッドワーク(複合的な働き方)を進める企業が増えています。そうした中で、人、デジタルツール、働く環境をどう有機的にコラボレーションさせるかが重要になってきています。
企業がハイブリッドワークを導入する場合、異なる価値観やバックグラウンドを持った社員一人ひとりに、柔軟かつ生産性の高い働き方を提供することが成功につながる要因の一つです。
有意義な人と人とのつながりやコラボレーションの公平性を推進するグローバル コミュニケーション カンパニーであるPolyが、企業の直面する「ハイブリッドワークのジレンマ」についてひも解きます。
前編では、ウェルビーイングの観点から、ハイブリッドワークのジレンマについて説明しましたた。後編は「物理とデジタルの体験格差をどう解消するか」について、解説していきます。
○ハイブリッドワークの「体験格差」にどう対応する?{#ID1}
昨今、ハイブリッドワークが働き方のスタンダードになりつつあります。企業は、社員の多様な価値観やバックグラウンドに合わせた働き方を提供する必要性に迫られています。
その中で、オフィスに出社して物理的にコラボレーションしたい社員と、コロナ対策で在宅勤務を選択したい社員の間では「格差」が生まれがちです。オンラインとオフラインというハイブリッド開催のミーティングでは、出社したメンバーだけで議論が盛り上がったり、逆にリモート参加者の通信環境がよくないために存在感が薄れたりといった課題があることも明らかになってきました。
今後は、より働き方に対して異なる価値観を持つ同僚と、上手にコラボレーションする必要が出てくるでしょう。
オープンか、プライベート空間か
一般論として、ハイブリッドワークではオフィスがコラボレーションの拠点となり、カフェをはじめとするサードスペースや自宅は一人の仕事場と考えられがちです。しかしこれは、「社員がオフィスに求めるのはカルチャーや会社とのつながりや同僚との協働」という考えに基づいています。
もちろん、この考え方は間違ってはいませんが、ハイブリッドワークはもっと複雑なものです。ビジネスパーソンの多くは、オフィスに対し、一人で仕事に没頭できる個室と、同僚とコラボレーションできるオープンな空間の両方を望んでいます。
ザイマックス不動産総合研究所が日本の企業44,324社を対象に行った調査によると、オフィス内の座席(会議室を除く)のうち、固定席とフレキシブルなスペース(フリーアドレス席、リモート会議用ブースなど)にある座席の割合について、「全て固定席」は38.6%にとどまり、約6割の企業はフレキシブルに利用できる座席を用意していることが明らかになりました。
また、現在の状況にかかわらず、今後(1~2年程度先まで)オフィスにあるとよいと思うスペースについては、「リモート会議用ブース・個室」(46.5%)、「集中するためのスペース」(31.8%)、「オープンなミーティングスペース」(29.5%)などが挙がりました。
つまり、フレキシブルなスペースの需要が高まる中で、コラボレーションやコミュニケーションのためのオープンスペースと、集中したり熟考したりするための落ち着いたクローズドスペースの両方が求められているということです。ハイブリッドワーク対応型のオフィスを新しく設計する際は、従業員が集中し、かつ同僚とコラボレーションしながら生産性を高めるという矛盾を両立できるよう、細心の注意を払わなければなりません。
同期型と非同期型コラボレーションの両立
ハイブリッドワークは、オフィスワーカーとリモートワーカーのコラボレーションのルールも書き換えてしまいました。
これまで、オフィスで行われるミーティングやワークショップは、参加者が同じ時間・同じ場所にいなければならない「同期型」が中心でした。しかしハイブリッドワークでは、オフィスに出社している人とリモートワーカーが混在し、異なるタイムゾーンで異なる時間に行われる「非同期型」が当たり前になっています。
参加者が同じ場所にいないときに重要な点は、フォーマルすぎる場にせず、柔軟かつインフォーマルな方法を選択することです。また、協働で報告書を作成するといった事務的な作業を行う場合と、新しい事業や製品のアイデアを出すなど創造的な仕事を行う場合では、必要な環境も異なるはずです。
社員がTPOに合わせて多様なコラボレーションを選択できるようにするために、参加者がデジタル上で集まれるインフォーマルな「ソーシャルスペース」が必要になってきます。それには、ビデオやオーディオなどの機器、常時接続のオンライン環境など、いつでも・誰でも快適に利用できるテクノロジーと通信環境が不可欠です。
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物理とデジタルの「プレゼンス(存在感)格差」
こうした働き方の変化を背景に、ビジネスパーソンの「プレゼンス(存在感)」も変わりつつあります。どうしても、オフィスに出勤している人の物理的なプレゼンスの方が、リモートワークを選択した人のプレゼンスよりも高くなりがちです。そこには、「プレゼンス格差」が出てきています。
会議の場に「物理的に存在できない」デジタル社員やリモート社員がプレゼンスを発揮するには、リーダーや同僚と常に連絡の取れる状態でなければならず、そうでなければ。不在と認識されてしまうといったアンコンシャス・バイアスが生まれてしまっています。
そして、オンライン会議では音声や映像の「プレゼンス」がリモートワーカーの「プレゼンス」に直結するようになってしまいました。音声や映像が乱れている人、あるいはつながりにくくずっと画面をオフしている人の「プレゼンス」は下がりがちです。
Polyが2,500人以上のマネージャーを対象に行った調査では、60%が「社員がオフィスにいない場合、キャリアアップに必要な人間関係を築くことができない」と答えています。今こそ、企業はカルチャー醸成とテクノロジーに投資し、物理とデジタルの間に横たわる「プレゼンス格差」や「体験格差」を埋めるために動かなければなりません。
ハイブリッドコラボレーションをサポートするテクノロジー
当然ながら、ZoomやMicrosoft Teamsなどのデジタルコラボレーションツールはハイブリッドなコラボレーションを可能にする上で重要な役割を果たしています。それに加えて、スピーカー、ヘッドセット、Webカメラなどのハードウェア技術への投資も重要になるでしょう。
例えば、コラボレーションで有用なヘッドセットなどに搭載される技術にキャンセリングが挙げられます。
ノイズキャンセリングには、発言中であっても周囲の環境音(キーボード音やマウスクリック音)などのノイズを区別して低減する機能や、騒音の音波と真逆の形(逆位相)の音波を発生させ、騒音を打ち消す機能などがあります。これらによって「日ごろ意識していない音や、周りの騒音によって自分の発言が相手に聞こえない」といったトラブルを減らし、オンライン会議に参加している場所にかかわらず「プレゼンス」を維持することが可能です。
ビデオバーに搭載されている画角自動調整機能も「プレゼンス格差」や「体験格差」を埋める技術の一つです。画角自動調整機能には、複数の被写体から話者だけにズームするものや、AIが被写体を検知してズームやパンなどの画角調整を自動的に行う機能などがあります。
また、1台のカメラから複数の被写体を切り出し、オンライン会議ツール上で別々の参加者として投影させる技術も登場しています。
中~大規模の会議室で、多人数で一つのオンライン会議ツールにアクセスすると、会議室のモニターに参加者全員が映し出されます。しかし、同じオンライン会議にリモートで参加している人の画面では、会議室にいる参加者は小さく表示され、話し手一人にフォーカスされることがなく、発言内容や表情、発言の意図がわかりにくくなってしまうこともあるでしょう。
こうしたケースでも、画角自動調整機能があれば参加者一人ひとりの「プレゼンス」が向上し、快適な会議環境を実現できます。
今後、コラボレーションツールやテクノロジーは、多様な価値観をベースに働く多様な社員の働き方、考え方を守る重要な位置づけになってくるはずです。
著者プロフィール
○野村宜伸(Poly日本法人 代表執行役社長)
日本市場のビジネス成長と製品シェア拡大の責任者として、日本の顧客やパートナー企業 にワールドクラスのソリューションとサービスを提供するチームを牽引。2021 年 9月にPolyへ入社。
Poly 以前は、UC 業界で 20 年以上の実績を持つ。直近では、Logicool 社で法人事業本部長を務める。それ以前は、日本マイクロソフト社で UC 事業のコンサルティングやセールス、また NTT のグループ企業でクラウド コミュニケーション サービスを提供する NTT Cloud Communications社のバイス プレジデントなどを歴任。