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京都府立医科大など、新型コロナの新たな重篤化機序を解明

2022年12月09日20時04分 / 提供:マイナビニュース


京都府立医科大学は12月9日、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が感染細胞において異常なウイルスRNAを蓄積することで、免疫応答を過剰に惹起することを発見したと発表した。

同成果は同大 大学院医学研究科感染病態学の渡邊洋平 講師、同 荒井泰葉 博士研究員、同 磯邉綾菜 学部生(2022年3月に卒業)、大阪大学(阪大) 微生物病研究所遺伝情報実験センターの山中到 技術補佐員、阪大 高等共創研究院の岡本徹 教授(感染症総合教育拠点兼任)らの研究グループによるもの。詳細は、米国科学雑誌「iScience」に掲載された。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)では、急性呼吸促迫症候群(ARDS)やサイトカインストームが感染後期の急速な病態悪化の引き金となると考えられており、これまでの研究から、重症感染者では自然免疫の中枢を担うインターフェロン産生が感染初期には抑制されているものの、感染後期になってから感染に遅延して亢進されることが報告されているという。

こうしたインターフェロン産生の遅延は新型コロナに特徴的な現象であり、病態と関連する可能性が考えられており、研究グループも新型コロナに対する宿主の感受性がレセプター分子であるACE2の糖鎖付加パターンによって変化して病態と関連する可能性を報告しているが、いまだに全容については良く分かっていない状況が続いている。

そこで今回の研究では、新型コロナ重篤化に関わる新しい病態機序の解明を目指した解析が進められたという。


具体的には、培養細胞を用いた実験により、風邪コロナウイルス(OC43株および229E株)と異なり、SARS-CoV-2はヒト細胞において感染極期に遅れて強くインターフェロン産生を誘導することを確認したとするほか、短鎖ウイルスRNAを効率よく解読する独自に確立したRNAシーケンス法を用いた研究から、風邪コロナウイルスと異なり、SARS-CoV-2はウイルスゲノムRNAの5'末端領域の断片を大量に産生することが判明したとする。

また、各種RNAを細胞導入する実験から、SARS-CoV-2が産生するこれらの短鎖ウイルスRNAが生体分子であるRIG-I(Retinoic acid-inducible gene-I)を刺激することでインターフェロン誘導を規定することも発見したとするほか、ヒト気道再構築モデルやハムスター感染モデルを用いた感染実験から、短鎖ウイルスRNAの蓄積とインターフェロン産生が同期していることが判明したとする。

加えてハムスター感染モデルにおいては、SARS-CoV-2の初期株とデルタ株が短鎖ウイルスRNAを同程度に肺で産生するのに対し、オミクロン株(BA2系統)では産生量が低下しており、この傾向は生体内の免疫応答の程度と一致していることも確認したとする。

研究グループは今回の研究結果について、コロナウイルス科に属するウイルス間や新型コロナウイルス変異株間で短鎖ウイルスRNA産生量が異なり、それがCOVID-19の重症度の程度と関連する可能性があることを示唆していると説明しており、季節流行性の風邪コロナウイルスが一般的な「かぜ」を引き起こすことに対し、SARS-CoV-2がサイトカインストームを特徴とする重篤化を引き起こす理由の一部を解き明かすものであると考えられると説明している。

なお、今回の研究は、実験的な感染モデル(in vitro, ex vivo, in vivo)を用いた実験によるもので、ウイルスによるゲノムRNA断片の蓄積量と臨床症状の情報は紐づけられていないため、患者ごとのウイルスRNAの蓄積量とCOVID-19の重症度の関連は不明なままであるとしており、研究グループでは今後、患者を対象に生体におけるウイルスRNA量と重症度との関連性を検証する方針だとしている。

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