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魚類がマイクロプラスチックや添加剤を体内に蓄積することを実証 北大など

2022年12月08日12時42分 / 提供:マイナビニュース


北海道大学(北大)と東京農工大学(農工大)は12月7日、魚類がマイクロプラスチックの摂取を通じて、プラスチック製品に含まれる添加剤を筋肉や肝臓などの体組織に取り込み蓄積することを実証したと共同で発表した。

同成果は、北大大学院 環境科学院の長谷川貴章大学院生(研究当時)、北大 北方生物圏フィールド科学センターの仲岡雅裕教授、農工大の高田秀重教授、同・水川薫子助教、同・ヨー・ビーギョク研究員らの共同研究チームによるもの。詳細は、海洋資源や海洋汚染など海洋に関する全般を扱う学術誌「Marine Pollution Bulletin」に掲載された。

近年、海洋におけるプラスチックごみの増加が深刻な環境問題となっており、中でも細分化されて粒径が5mm以下となったマイクロプラスチックは、海洋動物に取り込まれることで物理的・生理学的な悪影響を与えることが明らかになっている。

また、プラスチック製品にはさまざまな化学物質(添加剤)が高濃度で含まれており、それらがマイクロプラスチックから溶出し生物の体内に移行・蓄積することも懸念されている。添加剤の中には生物に有害な物質を含むものもあり、その蓄積や濃縮は、食物連鎖を通じて、最終的にはヒトを含む大型動物にも悪影響を与える可能性があるという。また魚類は、マイクロプラスチックを水中から直接取り込むだけでなく、マイクロプラスチックを含む餌生物の摂食を通じて大量に摂取しており、添加剤の組織への移行にもこの2つの経路があることから、その解明の相対的重要性が高いとする。

そこで研究チームは今回、肉食性魚類「シモフリカジカ」(以下、カジカ)とその餌生物である小型甲殻類「イサザアミ類」(以下、アミ)を用いて、マイクロプラスチック由来の添加剤の体組織への移行およびその蓄積を調べるとともに、その蓄積における、マイクロプラスチックの水中からの摂取と、餌生物を通じた摂取の相対的重要性について、水槽実験を通じて検証することにしたという。

今回は、北海道東部の厚岸湖(あっけしこ)で採取されたカジカとアミを用いて、北大 北方生物圏フィールド科学センター 厚岸臨海実験所にて水槽実験が行われた。添加剤として、2種類の臭素系難燃剤(BDE209、DBDPE)と、3種類の紫外線吸収剤(UV-234、UV-327、BP-12)を含むポリエチレンペレットを粉砕し、平均粒径30μmにしたマイクロプラスチックが実験に用いられた。


実験では、以下の3種類の条件のカジカの個体について、筋組織と肝臓における添加剤の濃度の測定が行われ、比較が実施された。

野外から採取された直後の個体
添加剤入りマイクロプラスチックを水中に入れ、マイクロプラスチックを摂取していないアミを餌として与えられた個体
添加剤入りマイクロプラスチックを摂取したアミを餌として与えられた個体

その結果、マイクロプラスチックに含まれる添加剤が水中および餌の2つの経路によりカジカの組織に蓄積することが実証された。マイクロプラスチックを含むアミを摂食させた個体の筋組織からは、海水中にマイクロプラスチックを曝露させた個体や野外から採集直後の個体に比べ、非常に高い濃度の臭素系難燃剤が検出された。

一方、紫外線吸収剤の濃度は、マイクロプラスチックを含むアミを摂食した個体と、水中でマイクロプラスチックに曝露させた個体の間で、有意な差はなかったという。この違いには、添加剤の疎水性などの化学特性の違いが関与していることが考えられるとしている。

これまで添加剤は、プラスチックから溶け出して生物に蓄積するリスクは少ないとされていた。しかし研究チームは、今回の研究により、添加剤を含むマイクロプラスチックを摂取することで、添加剤が魚類の体組織に大量に移行することが世界で初めて示されたとする。一方、添加剤の種類によって、水中由来と餌由来の経路の相対的重要性が異なることも解明された。この違いが起こった原因の解明には、添加剤の生物体内への移行や蓄積に関するより詳しいメカニズムを研究することが必要だとしている。

マイクロプラスチックが海洋生態系に与える影響をより詳しく理解し、かつヒトが食料とする水産資源の安全性を確保するためにも、今後、より多種の海洋生物を対象に、今回明らかにされた現象の普遍性を検証することが求められているとした。

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