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東大など、光触媒を用いた常温常圧下でのグリーンなアンモニア合成法を開発

2022年12月05日19時01分 / 提供:マイナビニュース


東京大学(東大)、九州大学(九大)、大同大学(大同大)は12月2日、「PCP(リン-炭素-リン)型ピンサー配位子」を有するモリブデン錯体に、可視光を化学変換に利用できる光触媒の「イリジウム光酸化還元触媒」を組み合わせることで、通常では進行しないはずの、窒素分子と水素供与体である「ジヒドロアクリジン」からのアンモニア合成反応を、常温常圧の極めて温和な反応条件下において進行させることに成功したと共同で発表した。

同成果は、東大大学院 工学系研究科システム創成学専攻の芦田裕也大学院生(研究当時)、東大 工学部応用化学科の小野塚悠斗学部生(研究当時)、東大大学院 工学系研究科 応用化学専攻の荒芝和也特任研究員、九大 先導物質化学研究所の許斐明日香テクニカルスタッフ、大同大 教養部の田中宏昌教授、東大大学院 工学系研究科 応用化学専攻の栗山翔吾助教、同・山崎康臣助教、九大 先導物質化学研究所の吉澤一成教授、東大大学院 工学系研究科応用化学専攻の西林仁昭教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、英オンライン科学誌「Nature Communications」に掲載された。

アンモニアは、タンパク質や核酸などの生体分子に含まれ、生命にとって必須の元素の1つである窒素源として不可欠な物質だ。また近年では、その取り扱いやすさや高いエネルギー密度、燃焼してもCO2を排出しないなどの特徴から、ゼロエミッション燃料および水素エネルギーキャリアとして有望視されている。

現在主流のアンモニア合成法は、工業的な手法であるハーバー・ボッシュ法だ。同手法は、窒素ガスと水素ガスを高温高圧(400~600℃・100~200気圧)の極めて厳しい条件において、鉄系触媒を利用して反応させることで合成を行う。だがこの手法は、人類が地球上で消費する全エネルギーの数%をも消費する上に、水素ガスの原料としてCO2排出を伴う化石燃料に依存しており、環境負荷の高いプロセスである点が大きな課題となっている。

つまり、アンモニアをカーボンニュートラルな燃料およびエネルギーキャリアとして利用するには、化石燃料に依存しない、再生可能エネルギーを利用したアンモニア合成法の実現が必須なのだ。


こうした背景のもと、2019年にPCP型ピンサー配位子を持つモリブデン錯体を用い、「ヨウ化サマリウム」を一電子還元剤として利用した常温常圧の温和な反応条件下において、窒素ガスと水からのアンモニア合成法の開発に成功したのが東大の西林教授らの研究チームである。

この反応系では、水を水素源として利用することは可能だが、反応を進行させるためにはヨウ化サマリウムが持つ化学エネルギーが必要であることが課題だった。そこで研究チームは今回、同反応の進行に必要な化学エネルギーの代わりに、光触媒を用いて可視光エネルギーを利用できれば、化学エネルギーに依存しないアンモニア合成を行える可能性があると考え、詳細に検討することにしたという。

その結果、ジヒドロアクリジンを水素供与体、イリジウム錯体を光触媒として用いた場合に、窒素ガスからアンモニアが触媒的に生成されることが見出されたとする。

窒素ガスとジヒドロアクリジンからアンモニアが生成される反応は、原料の持つ化学エネルギーの方が低く熱力学的に不利なため、外部からエネルギーを与えない通常の熱反応では進行しない。しかし今回の方法では、光触媒が可視光エネルギーを吸収し、そのエネルギーを用いて水素供与体であるジヒドロアクリジンを活性化することで、モリブデン触媒上でアンモニア生成反応が進行する。つまり、今回のアンモニア合成反応では、再生可能エネルギーである可視光エネルギーを化学エネルギーの形でアンモニア中に蓄えることが可能ということになる。

なお研究チームは、今回の研究成果について、再生可能エネルギーを用いてCO2を排出しない方法でアンモニアを合成する「グリーンアンモニア合成反応」の開発につながるものとして期待されるとした。

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