旬のトピック、最新ニュースのマピオンニュース。地図の確認も。

久保建英、第二の母国・スペインと対戦へ「本来の自分を出し切れるように」 4年間の軌跡と大人の思考回路に迫る

2022年12月01日11時00分 / 提供:マイナビニュース

●「この4年間は正解だったのかな」 難しい選択を下してきたことに誇り
カタールW杯のグループステージ初戦で強豪ドイツ代表を撃破しながら、第2戦でコスタリカ代表に敗れた日本代表が1日22時(日本時間2日4時)、ドーハ郊外のハリーファ国際スタジアムでスペイン代表との最終戦に臨む。日本が勝てば無条件で決勝トーナメント進出が決まり、引き分ければ同時間帯に行われるドイツ対コスタリカの結果に委ねられ、負けた瞬間に日本の敗退が自動的に決まる強敵との大一番へ。10代前半をスペインで過ごし、プロとしてスペインへ戻って4シーズン目を迎えているチーム最年少の21歳、MF久保建英(レアル・ソシエダ)は紆余曲折を経てたどり着いたW杯の舞台で、第二の母国との真剣勝負を心待ちにしている。

いまではほとんど忘れられてしまっているが、日本代表が2大会ぶり3度目の決勝トーナメント進出を果たした4年前のロシア大会に、実は久保建英も“参戦”していた。

といっても、当時の西野朗監督に率いられた代表チームの一員としてではない。代表のトレーニングパートナーとしてU-19日本代表チームが指名され、17歳になったばかりの久保も名を連ねた。西野ジャパンの選手たちと同じホテルに泊まり、紅白戦も含めて、練習もともに行った。

当時の久保は所属していたFC東京とプロ契約こそ結んでいたものの、主戦場はFC東京がU-23チームを参加させていたJ3リーグ戦だった。しかし、久保のなかで何かが変わったのだろう。帰国後に参加したミーティング。土産話を求められた久保は、こんな言葉を残している。

「武藤(嘉紀)選手と岡崎(慎司)選手の攻守の切り替えの速さが半端なかったです」

FC東京U-23を率いていた安間貴義監督(現FC東京ヘッドコーチ)は、いい意味で久保の言葉に驚くとともに、成長の跡を感じずにはいられなかったと語っている。

「あの選手が上手いとかすごいとかではなく、攻守の切り替えの速さといった点に着目するのは、これまでの彼にはなかった部分でした」

成長していくスピードを加速させるために、久保は自らの意思で歩んでいく道を変えた。2018年8月に横浜F・マリノスへ期限付き移籍。J1初ゴールこそマークしたものの、決して成功とはいえない日々で、自分のプレーうんぬんの前にチームのために成すべき仕事があると理解した。

翌2019シーズン。復帰したFC東京で大ブレークを果たし、一気に存在感を高めた久保は森保ジャパンでもデビュー。しかも、海外移籍が可能になる18歳になってまもない6月13日に世界的なビッグクラブ、スペインのレアル・マドリードへ電撃移籍して日本サッカー界を驚かせた。

しかし、EU圏外選手枠の問題もあって、レアル・マドリードでは簡単に居場所は築けない。1シーズン目はマジョルカ、2シーズン目はビジャレアルとヘタフェ、3シーズン目は再びマジョルカと期限付き移籍を繰り返して迎えた今シーズン。久保は大きな決断を下した。

レアル・ソシエダへの完全移籍。ビッグクラブと袂を分かち、レアル・マドリードやバルセロナを追う立ち位置にあるクラブのひとつで、戻る場所があるレンタルではなく、もう後がない立場で主力を勝ち取る。最初の目標を叶えた先に、カタールW杯に臨む日本代表入りという吉報が届いた。

ロシア大会時はJ3リーグの舞台でプレーしていた事実を考えれば、階段を駆け上がってきたスピードが尋常ではないと映ってしまう。それでも久保は「周囲が言うほど、それほど順調ではなかったと個人的には思っている」と努めて冷静に自身のキャリアを振り返る。

「そもそも結果だけを言っちゃうと、このW杯という場所に立ってることがすべてであり、その意味でこの4年間は正解だったのかなと思っている。ただ、細かく見ていくとやはり難しい時期もあったし、今回のW杯もぎりぎりで何とか滑り込めた、という感覚が自分のなかにはある。カタールW杯が開催される時期を含めて、その意味では逆に自分のことを『持っている』と思うし、数々の難しい選択を自分が下してきたことに誇りも持ちたい、とは思いますね」

●レアル・ソシエダでの成長に手応え「アベレージが上がったのかな」

W杯が本来の時期、ヨーロッパのシーズンが終わった後の6月から7月にかけて開催されていたら久保の代表入りは微妙だった。実際、日本を率いる森保一監督が6月を前にして久保に厳しく言及していた。曰く「タケが成長するために、ひと皮むけないといけない時期だ」と。

プロサッカー選手の多くは、自身のキャリアを短期、中期、長期に分けて設定する。久保も例外ではないが、それでもカタールW杯との距離だけは思うように縮められなかった。

「漫画の締め切りではないけど、ここではこうしておく、という目標みたいなものをサッカー人生である程度決めてきた。基本的には思い描いていた通りというか、何個かは遅れたりはしたけど、それでも予想の範疇でやってきた。ただ、いまごろは代表のスタメンで出ていなきゃいけないと考えていたなかで、今回だけは計算と合わない、と思ってしまう自分がどこかにいる」

6月の段階で弱音にも近い言葉を残していた久保が、4度のW杯優勝を誇る強豪ドイツ代表と対峙した、11月23日のグループステージ初戦で左サイドハーフとして先発した。W杯による中断前で3位につけるレアル・ソシエダで、レギュラーを射止めた軌跡がW杯をも一気に手繰り寄せた。

「中断前で3位のチームで、レギュラーで試合に出ている選手がW杯代表に選ばれないことはまずないだろうと、ある意味で楽観視していた。環境を変えたことが、今回はいい方向に転んだ。これに関しては、レアル・ソシエダというクラブが僕をいい選手にしてくれた。いろいろなポジションでプレーできるようになったし、平均値というかアベレージが上がったのかなとは自分のなかでは思っている。いい監督、いいチームメイトに恵まれたことに感謝したいですね」

10月下旬の試合中には左肩を脱臼して周囲を心配させた。それでも「でも肩だったので、別に痛くてもプレーすればいいかなと」とどこ吹く風だった久保だが、ドイツ戦ではチーム全体が攻守両面で圧倒される展開が続いたなかで、ハーフタイムに交代を告げられた。DF冨安健洋(アーセナル)が代わってピッチに立ち、システムを[4-2-3-1]から[3-4-2-1]に変わった後半。前へのプレッシャーを一気に強めた日本は猛攻を仕掛け、MF堂安律(フライブルク)、FW浅野拓磨(ボーフム)の連続ゴールで逆転に成功した。

「個人でどうこうは正直、ドイツ戦は難しかったと思う。あれはしょうがないけど、チームとして言えばどんな相手に対しても、あそこまで引いたら難しくなってしまう。この大会も前から行くチームが勝ち点を取っているし、結果論ですけど、戦ってみてのひとつ収穫なのかなと」

●海外で培われた加点方式の思考回路でポジティブな姿勢をキープ

不完全燃焼に終わったドイツ戦を淡々と振り返った久保は、連勝が期待されながら0-1で返り討ちにあったコスタリカ代表との第2戦を出番がないまま終えている。それでもポジティブな姿勢を失わないのは、独特の思考回路を常にフル稼働させているからだ。

「サッカーはミスをして当たり前なので、いちいち落ち込まない方がいいと僕は思っている。ミスをしちゃったと試合中に何度思い出しても、自分にとって得なことは何もないので」

日本特有の減点方式ではなく、外国人によく見られる加点方式でものごとを考える姿勢は、強豪バルセロナの下部組織で心技体を磨いた十代前半に導かれたものといっていい。たくましさを感じさせる視線は、久保にとっての第二の母国となるスペインとの最終戦へすでに向けられている。

「いまの日本の顔ぶれなら、チャンスがない試合はないと思うので。決定力と言うとちょっとありきたりの表現になっちゃうけど、そのチャンスをしっかり決め切るところを大事にしていきたい。多少ボールを握られても奪える力が日本にはあるし、たとえボールを奪えなくても、相手も全部を繋ぐのは無理なので。そのなかで本来の自分というのを出し切れるようにしたい」

カタール入り後はしばらく、久保としては珍しく無精髭姿で練習へ臨んでいた。

「チームのみんなにもよく言われるんですけど、最近、生えてくるようになって、剃るのが面倒くさいというだけですね。あまり似合っていないと個人的には思うし、大会前になったらちゃんと剃ります。このまま伸ばしていこうとか、特には考えていないですけどね」

ちょっぴり照れくさそうに無精髭の理由を説明した久保は、メディアから「似合っていますよ」と言われると「じゃあ伸ばしますか」と無邪気に笑った。対照的にゴールを決めれば日本のW杯史上における最年少得点記録を更新する、と向けられたときにはとこんな言葉を返している。

「世界的に見れば全然若くないので。そんなことを気にしても、どうしようもないと思っている」

これまでの最年少得点者は、2002年日韓共催大会で2ゴールを決めたMF稲本潤一(当時アーセナル、現南葛SC)の22歳だった。実力と可能性をスペインリーグで常に見ているだけに、日本の誰を警戒するのか、とスペイン代表の選手たちへ聞けば、決まって「クボ」と返ってくる。

チーム最年少の21歳は純粋無垢な少年の面影と、ちょっぴり大人びた大人の思考回路を同居させながら、スペインとのキックオフを待っている。

続きを読む ]

このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

ネタ・コラムカテゴリのその他の記事

地図を探す

今すぐ地図を見る

地図サービス

コンテンツ

電話帳

マピオンニュース ページ上部へ戻る