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京大、ティコの超新星残骸において数年で急速に増光・加熱する構造を発見

2022年11月30日18時15分 / 提供:マイナビニュース


京都大学(京大)は11月29日、2022年で爆発から450年となる「ティコの超新星残骸」をチャンドラX線天文衛星で観測した結果、わずか数年で急速に増光・加熱する特異な構造を発見したことを発表した。

同成果は、京大 理学研究科の松田真宗大学院生、同・内田裕之助教、甲南大学 理工学部 物理学科の田中孝明准教授、宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所 宇宙物理学研究系の山口弘悦准教授、京都大学大学院 理学研究科 物理学第二教室の鶴剛教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、米天体物理学専門誌「The Astrophysical Journal」に掲載された。

2022年12月1日訂正:記事初出時、田中孝明氏の役職を助教と誤って記載しておりましたが、正しくは准教授となりますので、当該部分を訂正させていただきました。ご迷惑をお掛けした読者の皆様、ならびに関係各位に深くお詫び申し上げます。

太陽のおよそ8倍以上の質量を持った大質量星が一生の最期に引き起こす超新星爆発は、宇宙空間に莫大なエネルギーを解放し、太陽の1500倍という高温(およそ1000万度)で輝く超新星残骸を形成する。そこには生命や次世代の星の素となる元素が大量に存在し、また高エネルギー宇宙線の生成現場と考えられている。しかし、1回の超新星爆発により、絶対零度に近い星間ガスが数千万度まで加熱されるプロセスにはまだ不明な点が多い。

衝撃波とは、大気などのガス中を伝播する密度や圧力の不連続面のことをいう。超新星爆発により周囲の星間ガスが加熱される仕組みを解明するには、この衝撃波がカギを握っているという。超新星爆発で生じた衝撃波は、2022年1月のトンガの大規模火山噴火で発生した衝撃波の数万倍(秒速1万~数千km)もの初速で宇宙空間に広がっていく。この衝撃波の莫大なエネルギーが、星間ガスを高温に加熱すると考えられている。ところが、遠方の超新星残骸から微小な加熱の瞬間を捉えることは非常に難しく、これまで直接の観測例はなかったという。

そこで研究チームは今回、デンマークの天文学者ティコ・ブラーエが1572年に観測した超新星爆発の痕跡、ティコの超新星残骸に注目することにしたという。同天体は地球から8000光年の距離にあり、超新星残骸としては比較的近くに位置している。そしてNASAのチャンドラX線観測衛星による、同天体の2000年、2003年、2007年、2009年、2015年の観測データを解析することにしたとする。


画像を時系列に並べて「動画」にすると、衝撃波が宇宙空間を膨張する様子が手に取るようにわかるという。この動画から、北東部のある領域において、X線が急増光する構造が発見された。爆発から450年も経過した現在でもこのような年単位の変動が見つかることは珍しく、たいへん稀な現象だとする。

X線スペクトル解析やハッブル宇宙望遠鏡の可視光画像との比較から、この領域にはもともと濃い星間ガスが存在し、最近そこに超新星残骸の衝撃波が突入し、数年で加熱が一気に進んだことが確認されたとする。このような明らかな温度上昇は、銀河系内の超新星残骸では初めての発見だというほか、温度変化のタイムスケールから、ガス粒子同士が衝突して(熱)エネルギー交換が行われている最中を観測していることがわかったともしている。

また、詳しい数値計算との比較が行われたところ、衝撃波加熱の瞬間に「無衝突」加熱も示唆されたとする。真空に近い希薄な宇宙空間では、衝撃波とガスがぶつかる瞬間、電場や磁場のような遠隔作用を介した「無衝突」と呼ばれるプロセスでエネルギーのやりとりが行われる。今回の研究により、超新星残骸の衝撃波で「無衝突」加熱が起きている可能性が示され、さらにその加熱効率を観測的に制限することに成功したとする。

無衝突衝撃波は、近傍では太陽風、遠方ではガンマ線バースト、衝突銀河団など、宇宙のさまざまな場所で起きうる普遍的な現象だという。また無衝突過程は衝撃波の加熱メカニズムだけでなく、高エネルギー宇宙線の加速効率とも密接に関わると考えられている。今回の発見は、超新星爆発に限らず、広く一般に天体の高エネルギー活動が宇宙空間に及ぼす影響について、粒子がエネルギーを得る一番初期の段階という観点から解き明かすものだとした。

今回の研究により、衝撃波によって電子が熱化するプロセスが捉えられた。星間ガスに含まれる粒子のうち、残りの組成はイオンであり、イオンの温度変化を捉えるには、まったく異なる研究手法が必要になるという。それを実現するのが、2023年度に日本が打ち上げを予定し、研究チームも開発に携わるX線天文衛星「XRISM(クリズム)」だという。

同衛星はCCD検出器を遥かに凌ぐ分光性能を持っており、イオンの熱運動のドップラー遷移を検出することで、元素ごとの温度測定を可能にする。同衛星による観測を実現させ、今後は全粒子の熱化過程を明らかにし、無衝突衝撃波におけるエネルギー交換機構の全貌に迫っていきたいと考えているとしている。

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