2022年12月02日13時07分 / 提供:マイナビニュース
「普段なにげなく使ってる缶詰にも、想像を超えた真実が詰まってるんです」
唐突に語り始めたのは缶詰博士の黒川氏。その手には小振りの缶詰が握られています。
「例えばこのミックスビーンズ缶は、驚くほどの手間が掛かっている。マメな人じゃないと、とても造れないシロモノです」
さりげなくダジャレを挟んでますが、そこはスルーしておいて。一体どんな手間が掛かっているのでしょう?
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○ドライパック製法とは?
ミックスビーンズの缶詰といえば、青エンドウと赤インゲン、ひよこ豆がミックスされた豆缶であります。3色混ざって彩り鮮やか、食感や味が違うから食べていて楽しい。愛用している人もきっと多いと思う。
ミックスビーンズ缶は複数のブランドから出ていて、いなば食品の「毎日サラダ ミックスビーンズ食塩無添加」もそのひとつ。しかし、それらの缶詰の製造を請け負っているのはトーアスという愛知県のメーカーであることが多いのだ(相手先ブランド製造)。
トーアスが強いのは「ドライパック」という製法であります。さて、ドライパックとは何なのか?
○香りや食感がみずみずしい
ちなみに、かつての豆缶の製造方法は以下の通り。
1、缶に豆と水を入れる
2、中の空気を抜いて密封。缶ごと加熱して煮る(水煮)
しかしトーアスが開発したドライパック製法は違う。要点を説明すると
1、豆だけを缶に入れる
2、中の空気を強力に抜いてから密封。缶ごと加熱する。
缶の中が通常の缶詰より真空に近いので、水分の沸点が下がり、素早く水蒸気が発生する。なので、豆に含まれる水分だけで煮えるという仕組みなのだ。
そのメリットは、豆の香りや食感がみずみずしいまま保たれるということ。豆が水に浸かっていないからであります。
○3種類の豆を最適に仕上げる
トーアスは、豆に掛ける手間もすごい。例えばこの画像は、缶に詰める前のひよこ豆を半分に切ったところだ。中心に芯が残ったアルデンテ状態になっているのが分かるだろうか。
原料の豆は乾物なので、いったん水で戻し、適度に煮てから缶に詰める。あまり火を通すと、缶に詰めた後の加熱で柔らかくなりすぎるため、こうしてアルデンテ状態で止めておくワケ。
豆は3種類あるから、それぞれが最適に仕上がるように、水に浸す時間と煮る時間を、個別に調整している。本当にマメな人じゃないとできない作業なのだ!
○それぞれの風味が分かる
さて、そんな手間と愛情を掛けたミックスビーンズ缶でサラダを作ってみた。玄米とピーマンを合わせ、ヨーグルトソース(ヨーグルト+にんにく+オリーブ油+塩)で和えたのであります。
赤インゲンは皮がさくりと破れ、中はしっとりした肉質。ひよこ豆はカリリと歯触りが心地良く、青エンドウは特有の香ばしさが味わえる。
3種類の豆それぞれの風味がちゃんと分かるのも、ドライパック製法のおかげであります。
缶詰情報
いなば食品 / 毎日サラダ ミックスビーンズ食塩無添加 110g 140円前後(参考価格)
スーパーやコンビニ、ネット通販で入手可
缶詰博士 かんづめはかせ 昭和41年福島県生まれ。公益社団法人・日本缶詰協会認定の「缶詰博士」。世界50カ国以上・数千缶を食している世界一の缶詰通。ひとりでも多くの人に缶詰の魅力を伝えたいと精力的に取材・執筆を行っている。テレビやラジオなどメディア出演多数。著書に「旬缶クッキング」(ビーナイス/春風亭昇太氏共著)、「缶詰博士が選ぶ!『レジェンド缶詰』究極の逸品36」(講談社+α新書)、「安い!早い!だけどとてつもなく旨い!缶たん料理100」(講談社)など多数。公式ブログ「缶詰blog」とFacebookファンページも公開中。 この著者の記事一覧はこちら