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花王、独自開発の界面活性剤が界面活性と水溶性を両立している仕組みを解明

2022年11月29日18時01分 / 提供:マイナビニュース


花王は11月28日、独自開発した界面活性剤「バイオIOS」が、トレードオフの関係にある界面活性と水溶性が高レベルで両立しているメカニズムを解明したことを発表した。

同成果は、花王 マテリアルサイエンス研究所によるもの。詳細は、英国王立化学会が刊行する化学全般を扱う学術誌「RSC Advances」に掲載された。

洗剤は衣類や食器など、さまざまなものの汚れを落として清潔にするために、なくてはならない生活必需品であり、また工業用途などでも重要ながら、その主成分である界面活性剤は、将来的な供給が課題となっている。

界面活性剤は、油になじみやすい親油基(アルキル鎖)と、水になじみやすい親水基を併せ持つ分子種であり、現在、主に使用されている界面活性剤は、アルキル鎖の炭素鎖長が12~14(C12~C14)で、総植物油脂原料のうちのわずか5%の原料から作られており、そのため将来的な供給が懸念されているのだという。

そうした中で同社は2019年、長いアルキル鎖(C16~C18)を持ち、その中間部に親水基を有する界面活性剤「バイオIOS」を開発。同界面活性剤は、パーム油の中でも食用と競合しにくい、用途が限られている固体性油脂を原料として活用できる点においてサステナブルといえるという。

一方で、界面活性剤は、基本特性である界面活性(水にも油にもなじみやすい)と水溶性(水に溶けやすい)がいずれも高いことが重要である。界面活性が高ければ、少量で汚れを落とせるので、使用量を少なくすることができ、また低温や硬度の高い水中でも溶けやすければ、世界中で使うことができるようになるとする。

同社は、そうした課題を満たすようなサステナブルな界面活性剤が今後ますます求められるようになると考えており、将来的にバイオIOSがより広く、有効活用されていくことを目指すため、同界面活性剤が性能を発揮する本質を解明するための研究に取り組むことにしたとする。

一般的に、界面活性剤のアルキル鎖長を長くすると界面活性は高まるが、水溶性は低下してしまう。逆にアルキル鎖長を短くすると水溶性は向上するものの、界面活性は低下するという、トレードオフの関係にあることが知られている。そのため、界面活性と水溶性を高レベルで両立させることはこれまで困難とされてきたという。しかしバイオIOSは、長いアルキル鎖の持つ高い界面活性を維持しながらも、高い水溶性を併せ持つことが特徴とする。

同社ではその理由として、実際の使用環境である水中での分子の立体構造が従来の界面活性剤とは異なるのではないかと考察。水中でのコンホメーション(立体配座)の解析を行うことにしたとする。


解析にはまず、分子構造やコンホメーションの情報を得られる、水素原子(陽子)の持つ核スピンを利用した核磁気共鳴分光法(1H-NMR)が用いられた。そして、バイオIOSの長さの異なる2本のアルキル鎖が水中で同じ方向を向き、またその根元部分は固定された状態であることが確認されたという。

また、官能基の情報を得られるフーリエ変換赤外分光法(FT-IR)を用いた解析も行われた。その結果、バイオIOSの「スルホ基(-SO3-)」と水酸基(-OH)との間で、分子内水素結合が生じていることが明らかにされ、大きな環状の親水部を形成していることが示唆されたという。

長いアルキル鎖を持った一般的な界面活性剤は、アルキル鎖が凝集してしまうために水に溶けにくくなる。一方でバイオIOSは、大きな環状の親水部と、長さの異なるアルキル鎖が同じ方向を向いて固定されることにより、アルキル鎖は親油基として働きつつも、その凝集性が妨げられ、界面活性と水溶性を高いレベルで両立することに成功したものと推察されたという。

なお、同社ではバイオIOSを配合した衣料用濃縮液体洗剤(製品名:アタックZERO)をすでに販売中であるが、今後も、物事の本質を追究する基盤技術研究を通じて、人や地球に真に優しいものづくりを進め、将来にわたって人々に清潔な生活を提供していくとしている。

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