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『タモリステーション』決戦直前に“静かなるモチベーター”だったタモリ

2022年11月30日11時00分 / 提供:マイナビニュース

●冒頭から矢継ぎ早にコメント
テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第252回は、27日に放送されたテレビ朝日系特番『タモリステーション~ドイツに歴史的勝利!!日本サッカー運命の決戦直前SP~』(17:00~)をピックアップする。

「さまざまなジャンルに幅広い興味を持つタモリが各回のテーマを徹底的に掘り下げる」というコンセプトの特番で、これまで「大谷翔平」「ウクライナ戦争」「カーリング」の3テーマが放送されてきた。

今回のテーマは、サッカー日本代表とワールドカップカタール大会。同局で同日18時40分からの日本代表VSコスタリカ代表を試合直前で盛り上げる形で放送された。タモリが「番宣番組におもねる」とは思えないが、ドイツ戦の勝利で日本中が盛り上がる中、どんなスタンスで臨んでいたのか。

○■タモリのリアクションににじむ重み

タモリの発言シーンを中心に番組を振り返っていこう。

オープニングで斎藤ちはるアナから話を振られたタモリは「(ドイツ戦は)見ましたよ。いや~、前半ちょっとハラハラ……押されまくってましたからね。後半あれだけ変わるとは思いませんでした」と矢継ぎ早にコメント。その声は思いのほか弾んでいて、いきなり「あのタモリも前のめりだったのか」と驚かされた。

続いて、タモリはスタジオゲストの川淵三郎を紹介。川淵はJリーグ初代チェアマンの重鎮で現在85歳だけに、77歳のタモリとの並びはレジェンドらしい重厚感が漂っていた。裏では『笑点』(日本テレビ系)、『大相撲九州場所』(NHK)が放送されていたが、特に中高年層にとってはどれを見るか迷う時間帯だったのではないか。

画面左上に「キックオフまで1時間58分10秒」というカウントダウンが表示されていた。民放では見慣れた演出だが、“ワールドカップの日本代表戦+生放送”はこれ以上ないほどフィットしていたし、「あと〇分か」と何度も見た人は多かっただろう。

続いてバスに乗ってスタジアムに向かう日本代表の姿が映し出されると、タモリは「この時間に行くんですね」と関心を示し、さらに「それではドイツとの一戦を振り返りましょう」と番組を進めた。当番組でのタモリは「ウクライナ戦争」がテーマのときに1時間を超える沈黙が話題になるなど動きが少ないのだが、今回は世間のムードに合わせてややアクティブなスタンスにしたのかもしれない。

ただ、ドイツ戦の映像が流れると、たびたびワイプにタモリの姿が映し出されたが、無表情で微動だにせず。「あれ? いつものモードに戻ったのかな」と思ったらVTRが終了すると、「これ今、結果が分かってるから冷静に見れるんですけども、こうやって見ると日本すごいですね」と再びテンションを上げた。

さらに、「私も(うつむき加減で)こうやって見てて、(同点ゴールの瞬間)アア~って顔上げましたけど、日本中が一瞬元気になったんじゃないですかね」と満面の笑みを見せると、これを見た川淵も「さすがのタモリさんもアア~ってやりましたか」と笑顔に。日ごろリアクションの大きいタレントばかり見ている視聴者ほど、タモリのリアクションに重みを感じたのではないか。
○■“にわか”にベーシックを伝える

続いて、日本が属するグループの順位表が紹介され、タモリは今後の展望を川淵に振る。「コスタリカ戦は絶対に勝たないと、最終戦まで持ち込まれるとほとんど難しい。そこまで相手は弱くありませんから」という川淵のコメントに、タモリは「(2014年のブラジル大会で)ベスト8、一度残ってますからね」とデータを交えて返した。

スタッフサイドからの資料はあっただろうが、タモリは興味を持ってきっちり目を通していたことは間違いない。「タモリとスポーツは結び付かない」というイメージの視聴者が多いかもしれないが、当番組で4回中3回スポーツを扱い、関係者たちに質問する姿を見れば、興味関心の高さが分かるだろう。実際、タモリは野球、サッカー、ラグビーなどのほか、五輪種目などさまざまな競技をひと通り熟知しているという業界評価を聞いたことがある。

スタジアムの内田篤人との中継がつながると、すかさず「日本代表が会場に向かうときのバスの中の雰囲気はどういうものなんでしょうか?」と質問。台本通りかもしれないが、あくまでファン目線での質問であり、試合直前のタイミングにもフィットしていた。

次に、スタジアム外に集まる日本人サポーターと、バスから降りてスタジアム入りする選手たちが映されたあと、カメラがスタジオに切り替わると、歴代の日本代表ユニフォームがズラリ。それを見たタモリが「赤(のユニフォームだった時代)もあったんですね」とつぶやき、川淵がその歴史を解説した。

サッカーファンの間ではそれなりに知られたエピソードだが、“にわか”を含めて盛り上がる今、これを伝えるベーシックさこそ『タモリステーション』らしさなのかもしれない。なかでも特筆すべきは、日本代表の歴史を1964年の東京オリンピックから振り返ったこと。他の番組はせいぜい1993年の「ドーハの悲劇」からだけに、「さすが『タモリステーション』」と言うべきか、それとも単に日曜夕方のメイン視聴者である中高年対策か。

タモリはここでも、「僕らの世代は(東京)オリンピック前はもっともっとサッカーはマイナーでしたからね」と川淵に振ってJリーグ創設の話を引き出したほか、「“Jリーグ”という響きも新鮮でしたよね」「“アウェー”とか“サポーター”とかって初めて聞きましたから」「ドーハの悲劇はやっぱり驚きましたね。自宅で見てました」など前向きなコメントを連発。結果的にサッカーファンにとっても見応えのあるものになっていた。

●試合が近づくと見守りモードに突入
ほどなく、コスタリカ戦のスタメンが発表された。これぞ生放送の醍醐味だが、こんなときに出しゃばらないのがタモリ。冠番組のおいしい場面であっても、専門家たちにコメントを任せてほとんどリアクションすら取らなかった。

その後、「カタール ワールドカップ熱盛 世界中が熱く盛り上がったシーン」をはさんで試合まで1時間を切ったころ、ドイツ戦の映像を再度放送。視聴者によっては「またこれ?」と食傷気味の映像だが、タモリは「何度見ても気持ちがいいですね」とあくまで前向きで、番組のテンションを決して下げない。

コスタリカ戦の話題になり、スタジアムと中継をつないで松木安太郎、川淵、中山雅史らのコメントが飛び交うと、さらにタモリはコメントをはさまず見守りモードに突入。試合が近づいてきたことを意識して、戦いのムードを邪魔しないようにしているのか。

ここで、タモリとともに「お笑いBIG3」と言われる明石家さんまの顔が思い浮かんでしまった。さんまならガンガンしゃべり、ボケも交えて盛り上げようとしたのではないか。ただサッカーワールドカップのようなビッグイベントだからこそ、現在の視聴者には笑わせようとするさんまより、流れに身を任せるタモリのほうが受け入れやすいのかもしれない。

最後のCM明けに、タモリは「試合まであと20分ほどになりましたけども、川淵さんいよいよですね」とコメントを振り、中山が「僕もウォーミングアップしようかな」と体操し始めて笑わせるのを見届けて、「どうも川淵さん、中山さん、ありがとうございました」の一言で淡々と番組を締めくくった。

結局、一度も「頑張れニッポン代表!」と力まず、ガッツポーズもしなかったタモリ。しかし、そのテンションはいつもよりわずかに上がっていて、それを感じ取っていた視聴者が多かったのではないか。

実際、タモリは生放送であるにもかかわらずコーナー振りの大半を担い、「うんうん」「そうだよね」「なるほど」のあいづちがいつも以上に多く、コスタリカの生中継やサウジアラビアの絶叫アナウンサーにも反応していた。そんなタモリなりの小さなハイテンションを感じ取り、視聴者はコスタリカ戦への思いを高めたのだろう。

その意味で、タモリは国民を動かすモチベーターとしても日本代表クラスの存在感があり、この番組がそんな強みを持ち合わせていることが分かった。
○■次の“贔屓”は……「芸能人が芸能人を撮る」ドキュメント『芸能人監督グランプリ』

今週後半放送の番組からピックアップする次回の“贔屓”は、12月2日に放送される日テレ系バラエティ特番『芸能人監督グランプリ』(19:00~)。

コンセプトは、「芸能人が監督となって本気で気になる芸能人に密着したらどんなドキュメンタリーができあがるのか」。スタッフではなく同じ芸能人だからこそ引き出せる素顔や、めったに語られない本音とは…。

その組み合わせは、フワ監督が撮る上沼恵美子、滝沢カレン監督が撮る黒柳徹子、東野幸治監督が撮る草なぎ剛、羽鳥慎一監督が撮る斎藤佑樹と興味深いものばかり。「多忙な人気者が人気者にカメラを回し続けるほか、編集やナレーションを担う」というハードルの高い企画だけに期待していいだろう。

木村隆志 きむらたかし コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月30本のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組にも出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』など。 この著者の記事一覧はこちら

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