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理研など、IXPE衛星によりブラックホール近傍のコロナの位置と形状を解明

2022年11月28日14時50分 / 提供:マイナビニュース


理化学研究所(理研)と広島大学は11月25日、天の川銀河内にあるブラックホールと恒星の連星系「はくちょう座X-1」の観測から、ブラックホール近傍から放射されるX線がわずかに偏光していることを発見し、ブラックホール近傍にあるコロナ(高温プラズマ)の位置と形状を明らかにしたと発表した。

同成果は、理研 開拓研究本部 玉川高エネルギー宇宙物理研究室の北口貴雄研究員、玉川徹主任研究員、広島大大学院 先進理工系科学研究科のジャン・シシュアン大学院生、同・大学 宇宙科学センターの水野恒史准教授ら100名以上の研究者が参加する国際共同研究チームによるもの。詳細は、米科学雑誌「Science」に掲載された。

ブラックホール連星系とは、ブラックホールと恒星が共通重心を回る連星系であり、ブラックホールが恒星の物質を強い重力で奪って激しく引き寄せる結果、ブラックホールの周囲には100万℃程度の高温プラズマからなる薄い「円盤」が形成され、その円盤が強力な高エネルギーX線を放射することが知られている。

また高エネルギーX線観測から、ブラックホールの周囲には約10億℃にも達する高温プラズマであるコロナの存在も示唆されている。しかし、コロナがどのような形状で、ブラックホール近傍のどこに位置しているのかは、これまでのX線望遠鏡では解像度が不足しており、分離して観測することができていなかったという。

多数のX線の電場が特定の同じ方向を向いている場合、「直線的に偏光している」と表現される。このような偏光はX線が物質を通過し、ある確率で反射するときに生じることから、偏光の強さを測定すると、観測者から見たX線の放射源と反射物質の位置関係がわかる。

このX線偏光の観測に特化した宇宙望遠鏡が、2021年12月8日に打ち上げられた、NASAとイタリア宇宙機関が共同開発した「IXPE衛星」で、理研を含む日本の研究機関も主要観測装置の一部を提供しているのと同時にX線偏光観測とデータ解析に参加している。

そして研究チームは今回、このIXPE衛星を用いて、全天においてX線で最も明るく輝く天体の1つとして知られ、また史上初めてブラックホールを含む連星系として確認された、はくちょう座X-1の観測を行うことにしたという。はくちょう座X-1は、その名称の通りにはくちょう座の方向、地球から約7000光年の位置にあり、太陽質量の21倍のブラックホールと太陽質量の41倍の青色超巨星の組み合わせからなる。観測は、2022年5月15日から21日まで実施された。


ブラックホール連星系は、その状態が観測時期によって変化し、X線の放射がコロナからの場合と円盤からの場合とがある。今回の場合は、測定されたX線スペクトルから、コロナから放射されたX線で明るく輝いている状態にあることが判明したという。つまり、この明るく輝いている状態のX線偏光を測定すれば、X線の放射源であるコロナと、それを反射する円盤との位置関係を導き出せるということである。

データ解析の結果、X線はわずかに偏光しており、その方向はブラックホールの双極からのプラズマ噴出流である「ジェット」の方向(円盤の垂直方向)とそろっていることが判明。このX線偏光の強さから、コロナはジェット方向には存在せず、円盤の両面を覆っているか、もしくは円盤の内縁とブラックホールとの間に位置していることが考えられるという。

今回の研究において、X線偏光を測定するという新しい天体観測手法を用いることで、ブラックホール近傍のコロナの形状および場所が示されたことから、同様の手法は、中性子星と恒星などのブラックホール以外の連星系にも応用でき、さらなる発見が期待できると研究チームでは説明している。

また、今回のはくちょう座X-1の観測はコロナからのX線が明るい時期に行われたが、コロナがほとんど見られず、円盤からのX線が非常に明るくなる時期もある。この場合、X線を放射する円盤はブラックホールのより近傍まで引き込まれるため、その強力な重力場により生じた時空のひずみにより、X線偏光が変化すると予想されるとのことで、この変化をIXPE衛星で観測することで、近い将来、ブラックホール近傍における強重力場下の物理の検証や、ブラックホールの自転速度の測定が可能になることが期待できるともしている。

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