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テレビの音の進化に注目! ソニー「BRAVIA XR」上位機のサウンドに迫る

2022年11月30日11時51分 / 提供:マイナビニュース

近頃、「テレビ」の定義が揺らいでいるような気がします。そもそもは「テレビ放送の受像機」、チューナーとディスプレイの融合体がテレビ(Tele-Vision)という家電の本質ですが、ビデオレコーダーやVOD/ストリーミングサービスの普及もあり、最近ではチューナーを省いたインターネット対応の「テレビ」が話題になりました。

地上波をリアルタイムで鑑賞するしかなかった頃とは時代が違う、といわれればそれまでかもしれませんが、テレビにはもうひとつ忘れてはならない役割が……そう、「音」です。

ドラマにせよ報道番組にせよ「映像+音」が絶対条件、それはストリーミングサービスでも変わりません。テレビの評価基準に「画音質」という言葉がありますが、制作者が意図した映像と音を届けてこそテレビ、再生機としての本質は昔も今も大差ありません。

ソニーの「BRAVIA」は、その画音質にこだわる薄型テレビシリーズ。最新のフラッグシップモデルは4K有機ELパネル搭載機が「A95K」、液晶/Mini LED搭載機が「X95K」と、シリーズごとに異なるアプローチで音響設計が施されています。今回は、その両モデルの音質面に迫ります。

BRAVIA XR 2022年モデルの音響設計のコンセプト

取材に訪れたのは、ソニーオーディオ/ビジュアル製品の開発拠点がある東京・大崎。BRAVIA開発チームのオーディオ班に、A95K/X95Kシリーズにおける音響設計のコンセプトや新機能について話を伺いました。

量子ドット技術を採用したQD-OLEDパネルを積むA95Kシリーズは、65V型と55V型の2機種をラインナップ。2017年に登場した「A1E」以降、BRAVIAの有機ELモデルには画面下の振動装置(アクチュエーター)で直接パネルを震わせ音を出す「アコースティックサーフェス」と呼ばれる機構が採用されており、今回のA95Kには最新版が用意されました。それが「アコースティックサーフェスオーディオプラス」、映像と音の一体感が従来より増したといいます。

Mini LED液晶パネルを搭載するX95Kシリーズは、画面下部のミッドレンジスピーカーにくわえ、背面上部の左右にサウンドポジショニングツイーターを各1基配置し、さらにサブウーファーをステレオ化した「アコースティックマルチオーディオ」を用意しました。10Wのミッドレンジとツイーター、サブウーファーが各2基の計60W、しかもそれぞれ独立したアンプで駆動するという力の入れようです。

A95K/X95Kシリーズ共通の新機能としては、「自動画音質調整」が挙げられます。テレビ上部に専用のカメラデバイス「BRAVIA CAM」を置くと、視聴位置に合わせ最適な画質・音質に自動調整してくれるのです。画音質というよりは定位の自然さ、音が出る位置の違和感軽減を意図した機能ですが、テレビとして目新しいことは確かでしょう。

ところで、A95K/X95KはBRAVIAのフラッグシップ「MASTER Series」に位置付けられます。その画質は、映像制作スタジオのマスターモニターに近づける方針を掲げていますから、音質面でも妥協はできません。

BRAVIA XRの「音」にじっくり耳を傾ける

A95K/X95Kシリーズについてひと通りレクチャーを受けたあと、試聴を開始。途中気付いた点を都度質問する形式で、Ultra HD Blu-ray(UHD BD)のディスク再生やNetflixのストリーミング再生を試してみました。

まずはDolby Atmosのトレーラー「Amaze」。降りしきる雨、轟く雷鳴、回転しながら落下する葉の音などが立体的に聞こえるよう収録された宣伝/デモ用コンテンツで、これひとつでDolby Atmosが要求する再生環境をどれだけ満たしているかがわかるというもの。

X95Kは横方向の音場の広さが印象的。画面下部に取り付けられた10W×2基/ツインサブウーファーの効果か、低域の量感もしっかりあり、雷鳴にもそれらしい“圧”を感じます。回転する葉は頭の後ろを通過するというより、眼前で回転する様子を眺めるような印象ですが、立体的に聴こえることは確かです。

A95Kはパネル自体を震わせる「アコースティックサーフェスオーディオプラス」の効果により、定位感はさすがのひと言。スピーカー配置の都合上、大半のテレビは音が画面下部から聴こえがちですが、映像そのものが音を放つかのような“画音一体感”はアコースティックサーフェスならでは。

アクチュエーターとサブウーファーを左右に配した2.2ch構成は先代A90Jと同様ですが、サブウーファーをアクチュエーターの斜め上方に置いた効果か、音像の中心がちょうど画面センターに位置するようで違和感がありません。

続いての「スパイダーマン:ホームカミング」は、Netflixで配信されているDolby Digital 5.1ch版。宇宙人の遺物を巡り数人が会話するオープニングシーンでは、ガランとした空間や登場人物の位置関係の再現性が求められますが、A95K/X95Kともそれぞれの特性が出ていました。

X95Kでは、左右側面に取り付けられたサウンドポジショニングツイーターが威力を発揮します。遺物が散らばる廃墟ビルの地表付近はちょうど体育館くらいのスペース、若干の反響音がその空間をやや広めに、奥行きをもって描写します。一方のA95Kは、空間の広さは画面サイズ相応ではあるものの、声のする方向がよりリアル。登場人物の位置関係に大きな違和感はありません。

ソースが5.1chなのに体育館のような空間を感じさせる理由は、各種音源を5.1.2chの立体音響に変換する「3Dサラウンドアップスケーリング」の効果と考えられます。音源はモノラルでなければOK、Dolby Digitalの圧縮された5.1chでも、DTS:X/7.1chやPCM 2chでも垂直方向に音場を拡げてくれるこの機能、XRプロセッサーの器用さに驚きます。アップスケール後のチャンネル数は非公表とのことですが、2ch音源でも3Dサラウンドを実感させてくれるテレビはなかなかありません。

器用さといえば、ワイヤレスネックスピーカー「SRS-NS7」との組み合わせ——A95K/X95Kに限らずXRプロセッサー搭載機であれば利用できます——は、器用というレベルを超えています。

「Amaze」にしても「スパイダーマン:ホームカミング」にしても、音像が左右に、上下に移動する感覚はまさに立体音響。搭載されている「X-Balancedスピーカーユニット」は、振動板面積を確保することで音圧アップを図るなど緻密な音響設計がなされているにせよ、基本構造は左右1基づつのステレオ再生、それがリアやトップスピーカーがあるかのような3Dサラウンドを聴かせてくれるのですから……深夜に心ゆくまで映画やライブ映像を楽しみたいBRAVIAユーザにとって、SRS-NS7は必携のオプションとなるはずです。
A95K/X95Kの「音」がイイ理由

歴代BRAVIAの「音」をチェックしてきた経験からいうと、今回のA95K/X95Kを語るキーワードは「音圧アップ」と「音像定位の改善」といえます。

前者は薄型テレビが苦手とするエンクロージャー容積と、後者はスピーカーの取り付け位置と密接に関係する部分で、薄型化/大画面化に伴い質の確保が難しくなるものですが、巧みに改良されているように感じました。

音圧アップに関しては、X95Kはサブウーファーの2ch化とツイーターの大型化、A95Kはパネル周りの設計変更(パネル外周から音を出して広げる構造を採用)が理由として挙げられます。特にX95Kは(先代X95Jで)10W×1基だったサブウーファーが10W×2基に倍増しており、低域の量感は確実に増しています。

音像定位の改善については、X95Kはサブウーファーの設置場所をパネル下部へ移動させたことが、A95Kはアクチュエーターの改良(コイルの大型化による高域情報増大)が奏功しているようです。A95Kの場合、音場の拡がり感とBRAVIAをセンタースピーカーとして使う「アコースティックセンターシンク」の効果向上にもつながっているため、見逃せません。

「テレビの音」をブラッシュアップするときには、サウンドバーやAVアンプなどホームシアター環境の導入もひとつの手ですが、テレビ単体でもなかなかどうして良いものです。薄型化や壁掛け対応など物理的な制約が多いなか、プロセッサの活用や設計の見直しでここまでできる、という部分を実感させてくれました。個人的には、ワイヤレスネックスピーカー「SRS-NS7」とセットで導入し、昼でも夜でも大音量で楽しむことをオススメしますよ。

海上忍 うなかみしのぶ IT/AVコラムニスト。UNIX系OSやスマートフォンに関する連載・著作多数。テクニカルな記事を手がける一方、エントリ層向けの柔らかいコラムも好み執筆する。マイナビニュースでは、「いまさら聞けないiPhoneのなぜ」のほか、前世紀から続く「(新)OS Xハッキング!」などを連載中。執筆以外では、オーディオ特化型Raspberry Pi向けLinuxディストリビューションの開発に情熱を注いでいる。2012年よりAV機器アワード「VGP」審査員。 この著者の記事一覧はこちら

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